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2 これが悪虐王子サマの本性!?

いい文章が書ける人に憧れる。

2024/2/21より、本文を変更しました。主な内容は変わっていませんが、表現の変更や情景描写の追加しているので、もう一度読んでもらえると嬉しいです。

 先刻、お友達(だんなさま)ができました。

 数刻後に馬車で迎えに来るみたいなので、それまで実家を満喫しようと思います。

 ドレスやアクセサリ類をまとめ終えると、次は勲章類を整理します。

 あまりたくさん持っていっても、邪魔になるので、レイザスラルクから頂いた月桂樹の葉がデザインされたもののみを梱包してバッグに入れ、その他のものはこちらに置いていこうと思います。


 荷造り(と言っても持っていく物はほとんどありませんでした)がひと段落ついたとき、


——コンコン


 小さくドアがノックされました。


「どーぞ。お入りください」


 入ってきたのは寂しそうな目をした、弟のライオネルと妹のルドレアでした。

 ライオネルは11歳、ルドレアは7歳です。

 ちなみに私は16歳です☆まだ若いですよ。


「お姉様、本当に行っちゃうの…?」


 しょぼんとして、うつむいてしまった2人。

 ああ、可愛い〜!保存用に画家さん呼んできて!!

 とりあえずぎゅっ、と抱きしめました。

 指先で2人の頬にそって触れると、人間の温もりを感じます。

 ふっと顔を上げた二人を、暖色のライトが照らし出していて、輪郭をくっきりと浮かび上がらせているためか、余計に切ない表情に見えます。


「大丈夫、たまに帰ってくるから」

「そうじゃなくて…」


 ライオネルが私を心配そうな目で見つめてきます。


ヴァレンス殿下(悪虐王子)と結婚するんでしょ?」


 なるほど。懸念点はそこだったか。

 会えなくなることを悲しんでいるのかと思っていたのですが、そうではなかったようです。ちょっと寂しいなぁ。

 でも、心配してくれるのは嬉しいよ!


「そうだよ。だけど、あれはただの噂。実際に会ってみたら、凄く誠実な人だったよ」


 安心してね。なんかあったら全力で逃げてくるから!

 半ば冗談でいったつもりなんですが、あ、あれ?ジト目で見られてる気がする…



********************



 太陽が沈み切った頃、屋敷の前に、お迎えの馬車が来ました。

 馬車には、アイリスの花がモチーフになっているレイザスラルクの紋章が刻まれています。

 赤と金色を基調とした馬車は、何処か畏ろしく、厳格な雰囲気をまとっています。 


「ミルドレッド、お待たせ」


 爽やかな笑顔と共に、悪虐王子ことヴァレンス殿下馬車から降りてきます。

 やっぱり、悪い人には見えないなぁ。

 後ろにはふわっとくせ毛の茶髪近衛騎士様がいらっしゃいます。普通の騎士様に見えますが振る舞いに、何か違和感...

 騎士様と目が合うと、笑顔を作りますが、ぎこちなく不自然です。


「荷物をお積みしましょう。ミルドレッドさま」

「はい、お願いします」


 慣れた手付きでまとめた荷物を積み上げていくのですが、右肩の動きが鈍いです。

 うーん、怪我してるのでしょうか?


「それでは、レイザスラルクに向かおう」


 荷物を積み終えたのを見届けた殿下は、騎士様を下がらせると、馭者に目配せをします。

 先に馬車に乗り込んだ殿下は、それに続こうとする私に、その綺麗な手を差し出し、


「暗くて足元がよく見えないだろう。僕がエスコートするよ」

「ありがとうございます」


 私を馬車に引き上げてくれました。私は旦那様の向かいの席に座ります。(馴れ馴れしいのも嫌だろうしね)

 ランプの灯りに照らされた殿下と、馬車の窓越しの暗がりに灯る街明かりは、本当に絵になります。

 たまに格好いいんですよね。未来の旦那様。

 約束(けいやく)もちゃんと守ってくれてますし。

 あと、


「あのー、もし。できればでいいんだけど…」


 少し顔を赤らめた殿下はじっと自分の隣の席に視線を送ります。

 そして、その柔らかそうな前髪を払うと、控えめな声で言います。


「隣に座ってくれないかな」


 なんと、向かい合わせでは満足しませんでしたか。

 小動物を見ているようで、ちょっと可愛い…

 そう、可愛いんです!年上なのに年下。新しい何かに目覚めそうです。

 立ち上がると、程よい距離感を保って座り直します。

 すると殿下は、ぱぁっと顔を輝かせました。

 この美形(イケメン)がぁ!サファイア色の瞳は、ランプに照らされ、本物の宝石のように輝いています。ああ眼福。


「そういえば、向こう(レイザスラルク)だと、君は僕と同室なんだ。君はまだ「婚約者」だけど、関係的には夫婦と等しくなっているからね。でも、僕は基本的に公務室に籠もる形になるから、好きに使っていいよ」

「そうなんですか...あの、できるだけ、公務が落ち着いているときだけでいいんですが、お部屋に戻ってきてくれると嬉しいです...」


 殿下は、驚いたような表情をしましたが、すぐに満面の笑みになります。テンションが上っているのがすぐに分かります。

 私は、今までの境遇から、「一人部屋」というものに抵抗があるんです...


「一人部屋って、寂しいんですよ!暗い中でひとりぼっちですからね!」

「…うん、そうだね。...ちょっと複雑だな」


 殿下がちょっと落ち込んでますが、気にしちゃ負けです。

 それにしても感情の起伏が激しい人ですね。

 いいじゃないですか、婚約者と同室することになんの問題があるんです?

 あ、そう言えば。


「殿下はどうして、夜会で踊った相手が私だとわかったんですか?」

「忘れるわけないじゃないか!僕の最初で最後の恋だぞ」

「いやでも…あの時名乗った記憶がなくてですね」


 私は、夜会で名前を名乗ったことがありません。元々社交に疎いこともあるのですが、私に関する噂が流れてしまっているので、名乗ることで距離を置かれることを恐れていたからです。


 殿下は目をぱちぱちさせます。


「もちろん調べ尽くしたよ、全世界。プラチナブロンドの髪と翡翠色の瞳の公爵令嬢だということまでわかっていたから、数日で見つかったよ」


 ひぇ、ストーカーですよこの人!

 きっと、逃亡しても地の果てまで追ってきますよ!


「それで、どうして数ヶ月前の夜会で見つけた相手を今頃…」

「タイミングがよくなかったんだ」


 殿下は悲しそうな目で、理由について話してくれました。

 殿下の話によりますと、レイザスラルクで内戦が起こってしまっていたらしく、他国に容易に出かけることができない状況だったそうです。

 ほえー。軍事国家も大変なんですねー。

 なんて思っていると、


「危ない!」


——パリィンッ


 殿下が私を庇うように伏せます。

 不意に馬車のガラスが割れ、破片が飛び散ります。


「弓矢だ、盗賊か!?」


 ここは既にレイザスラルクの領地内。

 わざわざ王族の紋様が刻まれた馬車を襲撃する必要あります?

 なんか、嫌な予感がします。

 とりあえず、馬車から飛び出そうとする殿下を引き止めます。


「殿下、王太子自ら危険に突っ込もうとするとは何事ですか!大人しく待っていてください。殿下は国に必要とされている人物なんですっ!」

「(´・ω・`)」


 絵文字(それ)って話し言葉だったんですね。初めて知りました。

 殿下が腰に掛けている剣を鞘ごと引き抜き、馬車を出ます。


「あっ、ちょっと!」


 殿下が追ってこないように、馬車の扉の持ち手の部分に鞘を突き刺しておきます。

 音を立てないように、裏側から屋の飛んできた方向へと向います。

 馬車の影に息を潜めていると、前の方からあの茶髪騎士様の声と盗賊(であろう)人の怒鳴り声が聞こえます。


「何者だ、お前ら!」

「名乗る名はない。そこの王太子を差し出せ」


 どうやら、盗賊の目的は殿下のようです。軟禁してきてよかったです。

 馬車の影から見えたのは、ガタイのいい男2人。甲冑などの防具は纏っていないようです。

 2人ですか。2人まとめて不意打ちはちょっときついですねー。

 とりあえず、1人の背後に回り込んで、剣の持ち手部分で首元を打ちます。


「っぐ…」


 1人目もーらい。みねうちですので、生きています。


「ミルドレッドさま、お下がりください!危ないですから」


 騎士様が心配そうに言います。

 平気ですよ、丈夫なんで。

 それに騎士様、多分右肩らへんを怪我してますよね!?だから安静にしていてください!

 辺りはまだ暗いため、気配を探って戦います。

 ノールックで、斜め後ろへ斬り込みます。


——キィンッ


 乾いた金属音と共に、賊の剣は宙を舞い、私の足元へと落下します。

 それを馬車の方向、賊から遠ざかる方向へ蹴ると、鳩尾に一刀(もちろん柄のほうですよ)すると、賊は音もなく倒れます。

 2人目、もらった!

 一件落着…ん?森の暗闇から、人間の気配がします。あれ、もう1人いる!?

 弓を弾き絞りこちらを狙っている賊がいます。

 やばいかも!


「っ!!」


——ドサッ


 あれ、痛くない?

 放たれた矢は、狙われた的から遥か遠い場所へと向かい、星空へと吸い込まれていきました。


「無茶するな、ミルドレッド」


——そこには、馬車に閉じ込めたはずの殿下が、賊の剣を持ち、立っていました。



********************



「確かに僕は王太子だ。だけど君も王太子妃だろう!」

「返す言葉もございません…」


 わたくしミルドレッド、猛烈に反省しております。

 怒った殿下こわい。

 殿下はやれやれといった顔をしました。


「…自ら危険に突っ込もうとしたことは、一回目を瞑ろう」


 ぐさっ。私も同じこと言った気がする…


「なんで近衛を頼らなかった?」


 怪訝な顔をされたので、口には出しませんが反論させていただきます。怪我した騎士様1人しかいなかったからですよ!

 というか、そもそも王太子が国外に出るのに近衛を1人しか連れて行かないなんて、よく国が許しましたね!?

 騎士様のこと、気づいていませんね。伝えたほうがいいでしょう。


「茶髪の騎士様、右肩を痛めていらっしゃいます。多分、その方は近衛になってまだ日が浅いのではないのでしょうか」


 殿下は不思議そうに言います。


「…?そうだよ。だけどなぜそれを…」

「きっと肩を痛めている理由は、鍛錬に打ち込みすぎていることだと思います」


 私はある薬草を探しに暗い森へと踏み入れます。騎士様は捕獲(あとしょり)中で、しばらくは出発できないでしょうし。

 話し続けながら、周囲を探索します。


「荷物を積んでいただく時にも、右肩の動きが鈍かったんです。それに、万全の状態なら、盗賊なんてすぐに追い返しているでしょう。軍国レイザスラルクの近衛騎士様なら」

「…確かにそうだな」


 あ、あった。

 探してた薬草が見つかりました。

 この薬草は茎の部分に薬効があって、炎症の緩和が期待できます。

 根をちぎらないように、指先でそっと押さえ、真っ直ぐ引き抜きます。


「殿下、私の荷物の中から調理器具を持ってきて欲しいです。藍色のカバンです」

「調理器具!?」


 殿下は面食らったご様子ですが、気にしません。

 持ってきてもらったカバンから、すり鉢を取り出し、少し水を加えて、茎の中の油分が浮かび上がるくらいまですりつぶします。

 この油に薬効があります。

 肩掛けポーチからクッキーの入った包みを取り出して、薬液の上澄みをかけます。

 苦いんですよこの薬。良薬は口に苦しと言いますが、これは、その場しのぎにしかならない上に治療薬より苦いです。

 殿下が不思議そうにこちらを見ていたので、説明します。


「これは炎症を抑える薬です。ハート型の葉が特徴的な野草を使って作りました」

「そうなのか」

「とてもとても苦いので、クッキーで誤魔化そうと思いまして」

「ヴァレンス殿下、ミルドレッドさま、準備が整いました」


 ちょうどそのタイミングで、騎士様がこちらへやってきました。後処理が終わったようです。


「騎士様。差し入れです。上の方に舌をつけないように食べてください!」

「は、はい...?」


 騎士様は少し怪しがりながらも食べてくださりました。

 苦みに顔をしかめたのが見えますが、それは、ちゃんと手べてくれたことの証明です。

 まだ会って日が浅い私のことも信用してくれるとは、心優しい人ですね。


「それは、お肩の怪我にも効く薬を塗ったクッキーです。薬が効き始めるまで数分出発を遅らせましょう」


 殿下は面白そうにこちらを見ています。

 騎士様は言葉にならないほど驚いています。なぜでしょうか?


——数分後


「どうですか、ご調子は?」

「不思議です。先程までの痛みがありません。それに、幾分か動かしやすくなっています」


 よかったー。効いたみたいです。


「…君は一体、何者なんだ?」


 殿下が不意に口を開きました。

 何か未知のものを見るような目でこちらを見てきます。

 私は…


「——私は、ただの公爵令嬢です。ただ……学生時代の渾名を聴いていただければわかると思います」

「渾名?」

「——十全令嬢(パーフェクト・ガール)

tx!:)

ありがとうございます(╹◡╹)

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