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約束-君と過ごした2週間-  作者: hutoyoshi
七海編 第1章 卒業
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卒業(2)

「大の男がみっともないわねー」


 肩ぐらいまでの少し栗色の髪色の女子生徒とその後ろに顔を埋めている女子生徒の2人が僕らの方へ歩いてくる。


 浩二に対して、キツい言葉をぶつけてきた女子生徒の方は直子(なおこ)

 僕らの中で1番と言っていいほどにさっぱりした性格の子。

 男子よりも女子人気のが高かったりする。

 そして、その直子の後ろで顔を埋めて今もえぐえぐと泣いている女子生徒は沙織(さおり)

 子供らしい見た目に焦茶色のショートが似合う。

 男子の人気がとても高い。

 ちなみに浩二もこの沙織のことが好きだったが、見事に修学旅行に告白して撃沈している。


「なんだよぉぉ!! なおごぉぉぉ!! もう、あえなぐなるんだじょぉぉ!!!」

「うっわ、鼻水、きったな、近寄ってくんな」


 しっしと、近づこうとする浩二を直子を手で追っ払う。

 

 まぁ、あの顔で近づかれれば……拒否するのもわからなくはない。


「なおごぉぉぉぉちゃゃゃんぅぅぅ!!」

「はい、はい、沙織も泣かないの。はいちーん」

「ちーん」


 幼い子供と母親のやりとりに思わず、笑みが溢れた。

 

 見た目の印象的にも大人に限りなく近い男と、同い年とはいえ子供っぽい見た目の女の子では同じように鼻水まで垂らしながら泣いているという状況でもこんなにも違うのか。


「沙織、直子、卒業おめでとう」

「おめでとうって……それはあんたも同じでしょ桔平」


 直子も僕と同じく、この卒業に対してそこまで悲観的ではないようだ。

 まぁ、直子に聞いた話ではあるが沙織も直子も学部は違うけれども同じ大学に行くらしい。


 沙織もそのことはわかっているはずだが、まぁこの卒業式という雰囲気にのまれて泣いてしまっているのだろう。


「ざおりぃぃぃ!!!」

「ごういぢぐぅぅぅん!!!」

「「わぁーん」」


 もう、完全にそんな雰囲気にのまれた浩二と沙織が抱き合いながら泣き合っている……。

 数ヶ月前の浩二がこの光景をみれば、きっと泣き喚くよりもニヤニヤが止まらないだろう。


 しかし、沙織と近づくために既に友人通しだった直子を通じて僕たちは良く連んで遊んでいた。

 そして、そのフラれたことをきっかけに浩二の中で何かが吹っ切れたのだろう。

 あれだけぎこちなかった沙織とのやりとりが嘘のように順調になっていった。

 

 今となっては、浩二と沙織は良き友人関係だ。


 まったく関係ない人間から見れば、フラれた人間と振った人間が友人関係でいるというのは、少々異常な光景ではあるが……。


 たしかに、中々珍しい経緯で友人になった2人、なのかもしれないが、今、目の前で抱き合って泣き合っていられる相手がいる浩二を僕は少し羨ましく思えていた。



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