表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
流れる水の記憶  作者: 井中エルカ
第一章 出会い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/29

第5話 同じ相

 しばらく見分したのち、蓉杏(ようきょう)董星(とうせい)の手を乱暴に放して言った。

「分からなかった」

「本当に? ちゃんと見てよ」

 央華(おうか)が抗議すると、蓉杏は渋々といった体で再び董星の手を見た。

「しっかり見たんだけどね。……前に言ったでしょう、ここに来るときに自分の事を占っちゃったから、もう見る力はあまり残っていないって。あまり期待しないでください」

 占いでは自分のことを占うと、その力が弱まると言われている。蓉杏はそのことを言っているらしい。


 多少崩れた所があっても蓉杏は美しかった。態度にも妙な落ち着きと迫力があって、高位の神官でなくて働き女だというのが不思議なくらいだった。


 董星が蓉杏の横顔を見つめていると不意に蓉杏の鋭い視線と目が合い、董星は身を固くした。

 蓉杏はにやりと笑って言った。

「ひとつ確かなのはね、この子の手にも王道が現れていることよ」

「王道?」

董星は聞き返した。

「そう、王様になって人を導く相だよ」


 菫星は一瞬驚いて言葉を失ったが、たちまち央華が不満を表して、そこで我に帰った。

「同じこと、私にも言ったじゃない。本当にそうなの、ちゃんと見てる? 私、もう蓉杏のこと、信じないから」

「そうだね、人を疑うのは成長の証、って言うからね」

 蓉杏は笑ってタバコをふかした。その仕草に董星が見とれていると、それも央華の気に触ったらしい。

「あっち行こ」

 央華は董星にまとわりついて袖を引いた。


「さて、こっちも店じまいだ」

 蓉杏は終わったタバコを押し潰すと腰を上げた。ゴザの上を片付けながら子どもたちに言った。

「もうすぐ雨になるよ。あなた方も、遠くには行かない方がいいね」

 央華と董星はその言葉につられて空を見上げた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ