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喫煙所
「結婚しよ。」
喫煙所で唐突に始まったプロポーズ。
しかも俺は心に決めた彼女がいる。
「何言ってんだよ、俺らそういう関係じゃないだろ笑」
さゆりが酔っているのは明白だった。1人でタバコに火もつけられないような状態で長年の友人を口説き始めているんだからこれまた面白い。
「どうして私たちは恋人にならないんだろうね。」
半分ふざけていた俺に対して、そう言ったさゆりの顔はどこか寂しそうだった。
後にこの夜の答え合わせする事はなかったのだが、結局俺はさゆりとの決して満たされることのなかった関係がどんな恋愛よりも忘れられない。
20歳になったばかりの頃、飲み屋の帰りに寄ったコンビニの前で蹲っている女の人と目が合った。
「水が欲しい、水、お願い」
関わったらいけない人だと思ったが、あまりに辛そうだったため550mlのペットボトルを買って渡した。それがさゆりとの出会いだった。