第150話、最終ダンジョン―冥界への道―【最終ダンジョン】
【SIDE:魔王アルバートン=アル=カイトス】
黄昏と共に出現したのは、亀島ダイナックの背中に生まれた隠しエリア。
甲羅の隙間のダンジョン。
そのフィールド名もエリア名も――終焉迷宮。
最後の迷宮を進むのは人類と旧人類の連合軍。
四星獣イエスタデイ=ワンス=モアが名付けただろう、世界の終わりを示す迷宮の名の通り、ダンジョン内はまさに静謐。
厳かな、けれどどこか禍々しい空気を放っていた。
既に第一階層は突破している。
迷宮のつくりは独特だった。
まずとても綺麗で穏やかに咲く黄色いタンポポ畑を抜け――。
雨と太陽を吸った香りが豊潤な、温かい草原を抜け。
そして。
その先にあったのは――大河。
まるで生者と死者を分かつような、広大な川である。
大河の脇で待ち構えていたのはダンジョンの受付役なのだろう、一体一体が魔王軍の幹部と匹敵するほどの黒い猫。
渡し舟を抱えていた数匹の魔猫だった。
職業は死神猫。死神のフードを被った魔猫の渡し守なのだろう。
彼らは船賃の代わりにグルメを要求。グルメがなければここは通さぬニャと、鼻をふがふが。強固な結界を張っていたのである。彼らは厳格なダンジョン魔猫なのだろう。
偉そうに、ふんぞり返っていたが――。
魔猫が出現することを知っていたダンジョン攻略組は、提示された船賃以上のグルメを逆に提示。こちらで用意した船で、こちらの好きなように通らせてほしいと契約をちらつかせたのだ。
買収である。
提案したのは、交渉上手な戦術師シャーシャ=ド=ルシャシャ。
舟守の死神魔猫達は、集合し、ヒソヒソヒソとしっぽを重ねて相談。
結論はすぐに出たのだろう。
おそらく門番の役割も果たしていただろう魔猫達はよだれを垂らしながら頷き、即座に買収されることとなり――。
第一関門は突破となったのだ。
今、大河を渡る船は小さな船ではなく異界魔術で召喚したノアの箱舟。
種の存続を果たしたとされる、神話級の魔道具である。
召喚したのは魔王アルバートン=アル=カイトス。
ヌートリア災害が収まった影響で、事態は変わっていた。三皇は既にダイナックの奥で様子をうかがう必要もなくなっているのだ。
ならば最終決戦の戦力になるべきだと、彼らも参戦となっているわけだが。
全員が今、この場に揃っているわけではない。
終焉皇帝ザカールは万が一に備えて、今、ヴェルザの街のダンジョン攻略を行っている。
引き連れているのは終焉スキル保持者と、冒険者達である。
もっとも、メンバーの入れ替えも連絡も自由に行える状態にあるのだが――それはこの世界の管理者が協力者となっているからだろう。
異聞禁書ネコヤナギ。
彼女は明確に駒達の味方となっていた。
直接参戦することはできないが――彼らの転移や、救助。メンバー交代や魔術通信といったサポートを全て管理者の目線から権能を利用し行っているのだ。
人類と旧人類。
終焉迷宮とヴェルザのダンジョン塔。
どちらとも情報を共有している神ネコヤナギが、呆れた声で天啓を下す。
『えぇ……っと、これ、どう記録に残したらいいのかしら? 三途の川をノアの箱舟で渡るなんて……意味が分からないのよ。正直、いきなり賄賂が通じるなんて、それも意味が分からないのよ。それに、ここで戦いになると思っていたものだから――拍子抜けなのだけれど?』
神の言葉に、揺れる船の上で戦術師が言う。
「これはおかしなことをおっしゃいますね――魔猫達はたしかに四星獣イエスタデイ=ワンス=モア様の眷属なのでしょうが、ネコはネコ。欲に忠実ですからね。それに、ネコヤナギ様もおっしゃっていたではありませんか。もしかしたらグルメによる賄賂は有効かもしれないと」
理知的な戦術師シャーシャ=ド=ルシャシャの言葉に返ってきたのは、やはり、天からの呆れ声。
『そうなのだけれど……まあいいわ。ここはテキトーに記録しておくから。ともあれ気を付けてね、みんな。あなたたちも大魔王ケトスの行動を再現した童話を見ていたから、知っているでしょうけれど――四星獣のうち二柱、過去と現在は人間自身がこの終焉を解決することを望んでいるわ』
地母神たるネコヤナギが、愛する我が子らを心配する声で、ざぁぁぁぁぁぁぁ。
葉を揺らす音を奏でている。
『そして、大魔王は動かない。竹林で状況を眺めているでしょうけれど、敵ではないけれど味方でもない。そして協力しているあたしとは真逆で、未来は敵側。ナウナウがいつでも見張っているから……本人は戦ってこないでしょうけれど、大王の眷属たちがダンジョンに配置されている筈よ。大王の部下は海を棲家とする魔物や獣神。賄賂も効かないでしょうから……イエスタデイの眷属の魔猫相手のようにはいかないのよ』
心配する世界管理者の言葉であるが。
それよりも、気になることがあるのか。
終焉迷宮の攻略に参加している者たちはどこか不思議な表情を浮かべていた。
花畑を抜け。
草原を抜け、川を渡る……その道筋に、盤上遊戯の駒達はなにやら思い当たることがあったのだろう。
そう、ずっとずっと昔に、自分たちもここを通った――そんな先祖たちの魂の記憶が刺激されていたのだろう。
『まるで異界の神話にある冥界下り、といったところですね』
告げたのはこの中で最も戦闘力の高い存在。
人間と魔族の共同戦線を束ねる者として選ばれたのは、かつて人間の英雄でもあり、現在魔族の王でもある銀髪赤眼の青年。
魔王アルバートン=アル=カイトスだった。
人類と旧人類の軍を乗せた箱舟は、三途の川を進む。
四星獣イエスタデイ=ワンス=モアが定めた最終ダンジョンを、一歩一歩と進んでいる。
船の先頭で警戒している魔王。その護衛は多くいる、けれど代表的なのは四天王の一角。
魔王に付き従う猛将マイアだろう。
女性にしては立派すぎる雄々しき悪魔の角に魔力を溜め、赤く長い髪にも魔力を流し――軍属の鋭い空気を纏う彼女もまた、川を進みながら周囲を警戒していた。
「陛下、いささか前に出すぎでは?」
『これも作戦だよ。この中で前衛を担当することができて、なおかつ一番レベルが高く、不老不死の属性を持っているのは僕ですからね。罠が出ても僕なら対処できますし。一番被害が出ないのは僕が前に立つことでしょう?』
気さくな声だった。
最終決戦だということもあるのか、あるいは心境が変わったのか。魔王は魔王の仮面を捨てていたのだ。
猛将マイアはそれでも魔王を敬愛している。
「レベルではたしかにそうですが……」
言って、猛将マイアは人間側の英雄アキレスをチラっと凛々しい切れ長で眺め。
「ああん? 猛将。なんだ、なんだ。また言わせてえのか?」
「いや、そういうわけではないが――」
「はん! どうせレベルはそっちのアルバートンの野郎の方が上だろうさ」
馬面美形の口を逆三角に尖らせ腕を組むアキレス。
その顔は既に魔王を仲間として認めてはいるが、認めているからこそ容赦のない顏でもあった。
同じく不老不死の英雄アキレスならば、前衛も任せられる。ただ、レベルで言うならば差は明確に存在した。生きている年月が違うのだ。最低でも五百年を生きる魔王と、まだ五十にも満たないアキレスとの差はそれなりにある。
既に魔王とアキレス、どちらが先頭に立つかで、少し揉めたのだ。
マイアとしては敬愛する魔王を矢面に立たせることは避けたいのだが、魔王は前を譲らず。
英雄アキレスとしても、魔族に前を任せてたまるかと最前線に出たいが、魔王が譲らず。
結局はレベルで勝負することになり、こうなった。
「魔王さんよお、あんた、なんか楽しんでねえか?」
『どう、なんでしょうね。僕はまあ、こうしてみなさんと行動できるのは久しぶりですから――そうですね、自分では分からないですが。楽しいと感じているのかもしれません』
魔王は美貌に愁いを帯びた笑みを浮かべていた。
「ちっ……ガキみてえな顔しやがって」
「おい、英雄。あまり陛下を困らせるな」
既に気心が知れている猛将マイアに、英雄アキレスは不真面目な顔でまじめな話を開始する。
「猛将、てめえもあんまりこいつを甘やかすなよ? 世界の存続が決まったとして、だ。平和になったあとはどうせまた、人類だ旧人類だで揉めるのは確実だ。しばらく、そりゃあ五十年ぐらいは”仲良し小好し”になるかもしれんが、百年も経てば昔話になって、二百年もすればもう御伽噺だ。その時にまた、争いは始まる。たぶん確実にな。んでだ――そう考えるとだな? 血に飢えた魔族どもを止める役でもある魔王陛下にここで死なれちゃ、オレたち全員が困るんだぞ? なんで前にいることを許してやがる」
言われてマイアは、冷静な顔のまま目線をそらし。
「仕方ないだろう。あんな顔で、僕は皆を守りたいんだと言われてしまったら……」
「ったく、それは魅了だよ。こいつに与えられている恩寵だ。すっかり骨抜きにされやがって……」
恩寵を恩寵でレジストできる英雄アキレスには効かないが、魔王アルバートン=アル=カイトスには四星獣が授けた様々な才能がある。
魅了もまた、その一つ。
種の存続を果たせるほどの大船に乗っている人数は軍単位だが、全員が戦闘に参加するわけではない。
主だったメイン戦力の前衛職は三人。
蹴撃者アキレスと万能職である魔王アルバートン=アル=カイトス。
そして、前衛も後衛も担当できる魔軍教授の猛将マイア。
理由は単純。
前衛可能な参加者の中で彼らが飛び抜けてレベルが高いのである。
もっとも、魔王と英雄アキレスに比べると猛将マイアは数段レベルでは劣るが、それは比較対象が強すぎるだけ。魔王軍幹部と呼ばれる上位魔族と比べると、マイアの実力は数段上。
その後ろには固定砲台ともいえ、メインアタッカーとなる赤珊瑚髪の少女。
スピカ=コーラルスターがいる。
船の上での移動という事で、遠距離攻撃の達人である彼女の優位はすさまじい。
なので守ることに長けた騎士職や、敵からターゲットを奪う事が可能な”挑発系の能力”を持つ種族の魔族達は、スピカを守るように陣取っている。
スピカ本人はここまで厳重に守られていることがこそばゆいらしく、何度かアキレスに助けを求めているが――戦術的にはスピカを中心に守りを組むことは間違っておらず、反応は薄い。
ともあれ、スピカが言う。
「あ、あの……もうダンジョンに入っているんですし、また揉めるのはちょっと……」
「しゃーねえだろう。たしかに協力関係にあるが、魔王と一緒に前衛たぁ……なんか調子が狂っちまうだろうがよ」
やはり北部の人間は、いまだに魔族とは確執が存在する。
この戦いが終わった後、どうなるかは……少女はあまり考えないようにして。
「……。そーいうところが、ラヴィッシュさんにウザがられているかもしれませんよ? 実際、レストランでは門前払いを喰らったって聞きましたし……」
年頃少女であるスピカ=コーラルスターの指摘に、ぐぎっと肩を揺らし。
英雄アキレスは、ダラっと汗を滴らせる。
その汗を眺め、にょほほほほ~っとぷくぷくの頬を緩めたのは、珍しく戦線に参加している大物。
千年幼女マギであった。
「おぉ! これはこれは、面白い顏じゃて! なんじゃ、おう? さしもの英雄殿も、娘の取り扱いには戸惑っているとみえるの~?」
「うるせえ、幼女ババア」
「拗ねるな拗ねるな! そういう弱点があった方が、若い娘には受けがよいじゃろうて! なんじゃ、浮気願望でもあるのかおぬし? 今頃ヴェルザのダンジョン塔を駆けあがっておるガイア殿にチクっても良いのであるぞ?」
「だぁああああああああぁぁぁ! うるせえ幼女ババアだなあ!」
見た目と覇気と名誉をあわせれば二枚目。
けれど口を開けば三枚目の英雄アキレスは終始、からかわれてばかり。彼はムードメーカーの素質がある。アキレスを中心に会話をすることで、攻略隊の空気の調和を保っているという側面もあるのだ。
魔王アルバートン=アル=カイトスは自身の後ろを振り返らずに、けれどスキルで確認する。
攻略に参加しているのは、多くの魔族と人間たち。
実力者たちが前を囲む中で、後ろにいる者達は後方支援や交代要員となる――それ以外にも道中での拠点形成、転移門の設置。集団支援魔術が可能な隊も複数用意している。
後方支援部隊の先頭で壁となっているのは、後衛職にしては強固な守りを持ち合わせる魔族、アヌビス族の優秀な若者ビスス=アビススだった。
そして――彼がそこにいるのなら。
「はいはいはい、英雄様はすごいすごい~。もう、英雄様のすばらしく通る声の自慢はいいから、陛下の邪魔はしないでちょうだいね~」
「ロロナ嬢ちゃんもあいっかわらずだな」
「あらぁ、やだぁ! 英雄様ったら、あたしの名前を覚えていらっしゃるの~? ロロナ感激~!」
キャッキャウフフと微笑む魔族ロロナである。
だが、彼女の本性を魔族の大半は知っている。その拷問と状態異常に特化した職業も、性格も有名であるが。人間たちにはまだあまり伝わっておらず、キャピキャピな魔族娘としてそれなりに好印象を持たれているようだった。
あの子の本性を知ったら、驚くでしょうね。
と、こっそり微笑する魔王に、アキレスがこっそりと言う。
「おいおい、あいつ、大丈夫なのか……?」
『ロロナは前の魔王城襲撃事件で、少し……変わりましたから。心配ないと思いますよ』
「ならいいがよ……」
『何か不安でも?』
「いや、あいつの本性を知ってたら不安しかねえだろうよ……」
確かに……と、眉を下げる魔王に英雄アキレスは言葉を詰まらせる。
『どうかしましたか?』
「いや、おまえさん……本当に、普通の人間だったんだなって、なんか、そう思っちまっただけだよ」
神や周囲によって運命を狂わされた駒。
それが魔王。
直感と観察眼に優れた英雄アキレスには見えてしまったのだろう。アルバートン=アル=カイトスだった、普通に生きる未来もあった、少年だった魔王の無垢で純粋な心が。
英雄は魔王の頭に手を乗せて。
まるで父親の顔で、告げていた。
「優しすぎるからこそ、最も過酷な道に落ちちまった……か、おまえさんも、かわいそうなガキだな」
魔王はしばらく、呆けていた。
その手の感触と温もりに、かつての父を重ねていたのだろう。
「っと、わりぃ……どうも、泣いているガキを見ていると、余計なことをしちまいそうになる。大人の悪い癖だな、こりゃ」
『いえ、とても……懐かしくて、大切なことを。思い出しましたから。気にしていませんよ』
「大切なことだぁ?」
『ええ、父親の手は大きくてとても――安心するって事です。きっと、あなたも仲直りできますよ、あの子と』
「うっせー、バーカ」
その様子を見ていた女性陣から、妙な黄色い声が上がっているが。
猛将マイアの陛下に無礼を働くなという視線に気づき……英雄アキレスは手を離し。
誤魔化すように天に向かい、アキレスが馬の鬣に似た髪をかき上げ。
「で、ネコヤナギ様よ。本当にヴェルザのダンジョン塔とも、ダイナックの街で待機してる連中とも即座にメンバー交代はできるようになってるのか?」
『その辺は抜かりはないわ。まあ、他の四星獣が妨害しないなら……だけれど』
「おいおい……それって絶対じゃねえってことかよ」
『けれど、たぶん妨害はしてこないと思うわ。ナウナウがあなたたち、この世界の命にこの事態を解決させたがっているように――イエスタデイも、たぶんムルジル大王もあなたたち自身での解決を望んでいるもの』
しかし今、この世界には外来種も存在する。
「大魔王は、どうだ」
『ナウナウがあの子……あなたの娘さんの”友達”である限りは手を出せないって感じでしょうね』
「ヌートリアレギオンの方は――ちょっと心配じゃねえか?」
異聞禁書ネコヤナギが声のトーンを変える。
『――……仮に毒気が戻っても、問題ないわ。むしろ、今手を出せないのはあのネズミの中に、あの子の大事な存在の魂の一部が入り込んでしまっているせいなんですもの。だから、言い方は悪いけれど処分することもできない状態にあるわ。完全にあの子の主人の気配が消えたのなら、その瞬間にイエスタデイが目覚めて、潰してしまうでしょうね』
盤上遊戯で対局するフリをしているのは、ぬいぐるみ。
本来なら対局中の存在を攻撃することなどできないが、今はもう違う。
ただ汚染された駒を送ってきた時とも状況が違う。
遠き青き星の悪人を騙し、駒として送り込んできた時とも状況が違う。
ヌートリアレギオンの分霊ではなく、ヌートリアレギオンの本体が盤上世界の中に入り込んでいる今なら、実力行使に出ることも可能なのだ。
もし、羊飼いの男の気配が消えれば――。
四星獣イエスタデイ=ワンス=モアが許さない。
すかさずその瞳を開き、巨大鼠の身体と魂を灰燼に帰すだろう。
「なら、心配はねえな。ところで、ムルジル大王の部下ってのはクローディアの姉さん以外にはどんなやつがいるんだ。そりゃあ海の生き物だっていうのは知ってるが」
『そうね……やはり魚が多いんじゃないかしら』
告げたその瞬間。
異聞禁書ネコヤナギの声に、英雄アキレスは食い下がることとなった。
そう、三途の川――水属性のフィールドから浮かび上がってきたのは――。
「って、魚類じゃなくてドラゴンじゃねえか!?」
「まずいぞ北の英雄。こいつらは――神話に名を連ねる竜ではあるまいか!?」
「知っているのか猛将?」
「ああ、異界魔術の文献で眼にしたことがある――おそらくは、海を支配する海獣レヴィアタンに、そしてあれはその蜷局で世界を一巻きにするほどの巨体とされる、世界蛇ミドガルズオルム……っ」
魔王がほのぼのとした顔で言う。
『まあ異界神話ではドラゴン、すなわち竜と魚は同一視されている場合もありますから。拡大解釈で大王はドラゴンの多くも眷属にしているんでしょうね』
『そういえば大王、よく異界の海に接続して……ドラゴンを釣って喜んでたわね。まあ、リリースするなら問題ないかって黙認してたけど……あぁ、そういうこと。もう! 外来種なのに、そのまま眷属にしちゃってたのね! もう! もう! もう! ナウナウといい大王といい、あたしに内緒で! それってまたルール違反じゃない! 何考えてるのよ、あの子達は!』
釣り上げた神竜を、そそそそっ、キョロキョロと周囲を見渡し――こっそりと隠す大王の姿が過去ログに表示される中。
ぷんすか怒る銀髪少女の幻影の前。
ハッと我に返った英雄アキレスが唸りを上げる。
「平然としてるんじゃねえ! 気張れよてめえらっ――ドラゴン退治だこの野郎!」
第二の関門は、純粋な戦闘。
川の中のどこから襲ってくるか分からない神竜の群れだった。




