一章プロローグ
日本――少し寂れた町にある家の庭で1人の少年と1人の大柄な男がが木刀で斬りあっていた。
ヒュンヒュンと木刀が風を切る音がする
「そこっ!」
少年が男の隙を見て斬りかかる
「甘めぇよ」
男は少年の木刀を弾き自分の木刀の剣先を少年の喉元に近付ける
「くっそぉー また負けたぁー!」
少年は仰向けになりそう叫んだ。
「これで俺の486戦486勝だな」
男はドヤ顔で少年の顔を見る
「次やる時はぜってぇ負けねぇ…」
悔しげな表情を浮かべ少年は先ほどの勝負を振り返る
(さっきの親父の剣筋、一手目と二手目はなんとか分かったけど…三手目が全然見えなかった、どんだけ速い剣捌きなんだよ…)
「さぁ勝負も決まった事だし 負けた方は何でも言うことをきくっつうルールだったよなぁ?さーて 何にしようかなぁー」
男――宮本武蔵はニヤついた表情で少年に言う
「だぁー!イラつくその言い方!次はぜってぇ負けねぇ!」
少年――宮本伊織はイラつきつつそう答えた
「ほーん 次は勝つねぇ お前1敗目の時からずっとそれ言ってるけどまだ一回も勝ったことねぇよなぁ まっ勝てるもんなら勝ってみてほしいもんだな」
武蔵は鼻をほじりながら挑発するように言った
「だぁーまじでムカつく!見てろよくそ親父!」
グオオオオオオオオオオオオオ!!!
「!?」
「なんだ!?」
武蔵と伊織は顔を見合せ 声のした方向へ向い走る
「グオオオオオオオオオッ!」
空気が張りつめていく… ビリビリとした殺気が飛んでくるのを
二人とも肌で感じていた。
「こいつは…」
武蔵は何か思い当たる節があるのか神妙な顔で呟いた
「なんだよ…こいつ…熊…? にしてはデカすぎるし何なんだこいつは…」
突然の光景に伊織は頭が混乱している それもそのはずだ
目の前に現れたのは熊と呼ぶにはあまりに異質だった、顔は熊そのものだが、身体が余りにも大きい さらにその手の爪は普通の熊の何倍にも伸びていた、そして伊織は気づいたと言うよりは本能で感じていた今の自分ではこの化け物に勝てないと。
「こいつはやべぇ…戦ったら確実に死ぬ… 」
伊織が化け物との力の差を感じている頃… その父武蔵は面倒くさそうに化け物を見据え手に持った木刀を構えた
「レッドベアか…またそこそこのランクの奴が出てきたな…面倒くせえ…」
武蔵はその化け物の事を知っているかの様に呟いた。
「レッドベア?…ランク…?親父訳わからねぇこと言ってる場合かよ!早く逃げねぇと!」
「やれやれ… そろそろ話そうと思ってたし……まぁいい機会だ…… "伊織そこで見てろ"」
いつになく真剣な顔をして武蔵は言った
「二天一流 型式一刀 "閃" 」
瞬間 熊の化け物の身体から頭が切り離され宙を舞う 自身に何がおきたのかさえ分からず 化け物は崩れ落ち 心臓の鼓動を止めた。
「なっ…」
色々な事が起こりすぎて頭の処理が追い付かない伊織はその異様な光景を見て 立ち尽くす事しかできなかった。