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第七話「お風呂事情と街散策」

遅れてすみません…!!

しかも前回次回予告で話した固有スキルあまり使ってないです。亜空間倉庫と、実は知識欲が作用してるくらい…ですかね…。

 翌朝、私は大きな物音で目を覚ました。


 ガタガタガタッガタンッ!!


「んー…」


 何…?うるさいなぁ…。

 ゆっくり起き上がって、しばしそのままボーッとする。そうしてから周りを軽く見渡して思い出す。

 そうだ、私、異世界に来たんだった。今何時だろう…。

 くるりと視線を巡らせても時計らしきものは見当たらない。スマホ…と思ったが、そう言えば元の世界で落としたままなのを思い出した。

 まぁ、時間が一緒とは限らないし…どっちみち当てにならなかったかもだし…。


「朝ご飯…は、用意してくれるんだっけ?って、それなら早く行かないと!」


 今が何時かは分からないけど、あんまり遅いとモーニングの時間が終わって片付けられてしまうかもしれない。それは困る。何しろ朝ご飯はしっかり食べる派なので。

 バタバタと必要最低限の身支度だけ整え…たかったが、如何せん鏡が無いので諦めて手ぐしで髪だけ何となく整えて部屋を出る。すると、ふんわりと良い匂いが漂ってきた。


「うーわ、空腹に効くわ…」


 階段を下りると、昨日と同じようにカウンターにはおばさんがいた。


「おはようございます」

「あら、おはよう!朝食は奥のダイニングよ」

「あ、はい。ありがとうございます」


 良かった、まだやってたみたいだ。

 おばさんが指し示した方に向かって廊下を進むと胃をくすぐる匂いはさらに強くなり、それに合わせてガヤガヤとした賑わいが聞こえ始める。

 突き当たりのドアを引くと、それはダイレクトに届いた。


 ガヤガヤ、ガヤガヤ…


「わぁ、意外に多い…」


 中では十数人の人間が、数台の大きな机で食事を取っていた。こんなに居るということは、まだまだ朝と言える時間なのだろう。

 それはそうとして、朝食はどこで貰えばいいんだろう?

 キョロキョロと見回すと、奥の方に数人群れている事に気が付いた。その内の一人が食事の乗ったトレーを持って離れていったので、恐らくあの場所で貰うのだろう。

 そう推測し近付くと、思った通り、カウンターからお姉さんがせっせと食事を出していた。

 列に並んで自分の番を待ちながら、今日は何をしようかと考える。

 とりあえず依頼の薬草は取りに行くとして…あれ?薬草ってどこで取れるの?そこら辺で取れるもん?いやでも薬草だし…いや、異世界だから普通に生えてるのかな…?うーーん、ヤバい何も分からないじゃん私。

 そんな事をぐるぐると考えていたらいつの間にか自分の番になっていたらしい。お姉さんが「どうぞ」と言って食事を渡してくれた。


「へ?あ…ありがとうございます」


 上の空だったせいで一瞬返答が遅れたか、お礼を言って食事を受け取る。そのまま近くの空いている席に座った。


「パンとスープかぁ…外国っぽいなぁ」


 そう呟きながらパンをちぎってスープに浸す。小中学校の給食でパンとスープが出た時は、必ずこうやって浸して食べていたものである。今でもたまにやるけど。

 んー、おいし。パン自体は普通だけど、焼き立てっぽいからなのかな。それだけで倍美味しく感じる。

 スープはジャガイモと何かの肉だけのシンプルなものだった。豚肉っぽかったけど…い、いや、やめとこうかな…。そんな事よりこれからの事を考えなきゃ。


「…あれ?もう食べ終わっちゃった」


 いつの間にやら手の中のパンが消えていた。いや私の胃の中に消えたんだろうけども。貰ったパンは一つ、スープももう無い。かと言っておかわりを求めていいのかも分からない。


「んー…しゃーない、散歩がてら外に食べに行こう…」


 この街のこと、もう少し知っておきたいしね。何せしばらくはお世話になる街だろうから。

 席を立ち、食事を出してるカウンターの横の返却棚にトレーを置き、一旦部屋に戻った。


「ふぅ…荷物どうしようかな…。…荷物整理するか〜」


 とりあえずリュックの中身をベッドにぶちまける。今リュックに入っているのは金貨袋と雑貨店で購入した品の内数点、それからギルドカードとそういえば貰っていた冒険者ギルドの案内資料。


「うーん、案内資料は今要らなくて、金貨袋も重いし…数枚取ってストレージにぶち込んじゃおっと。『亜空間倉庫』。…逆に要る物ってストレージに入れてたっけ?」


 そう独り言を呟きながら荷物整理を始める。昨日の鑑定によると無限ストレージらしいから遠慮なくポイポイ突っ込む事にする。


「早急に欲しいのは財布かな。せめて小さめの巾着とか持ち歩ける大きさのやつ…」


 よし決めた。今日はそれ買いに行こう。ついでに何か食べ歩ける物見付けたらそれも買おう。…けどその前にお風呂入りたい。あと着替えよう。

 再び階段を下り、カウンターのおばさんの元へ向かう。


「すみません、お風呂ってどこですか?」

「お風呂?そんな高価なものウチには無いねぇ…ごめんねお客さん」

「えっ」


 えっえっお風呂ない?併設されてない系の宿だったかぁ…行きたいなら銭湯いけとかそういうタイプ?


「お客さん、良い家の人かい?庶民は基本的に魔法で出した水を使って浴びるか、濡れた布で体を拭くかだから…悪いね。多分ここらじゃ風呂持ちの家は無いと思うけど…」


 えええっ、ショックすぎる…暖かいシャワーだけでも浴びたいです…。元々いつもシャワーだけだったし、湯船なんて贅沢なこと言わないから…。


「タライと布だけなら貸し出せるから、使うかい?」


 私の表情を読み取ってか、おばさんが気を利かせてそう声を掛けてくれる。


「お願いします…」

「はいよ、ちょっと待っててくださいね」


 そう言っておばさんはカウンターから離れていき、すぐに戻ってきた。その手には大きな木製のタライと布が握られていた。


「使い終わったら窓から水を捨てて、タライと布は部屋の前に出しといてちょうだいね」

「はい、ありがとうございます」


 おばさんから物を受け取り、部屋に戻る。


「…この大きさなら、中に入って慎重にやれば…いけるかな?」


 服を脱ぎ、タライの中に入る。

 このまま慎重に…慎重に…。


「『クリエイトウォーター』」


 そう唱えると、頭の上に数個の小さな水の塊が現れて私の体に降り注いだ。

 一日ぶりのシャワーは気持ちいい。


「ひっ、冷たっ!!!」


 が、それ以上に冷たかった。飲むのには良いかもしれないが浴びるとなるとそうはいかない。このままでは風邪を引く。


「温かく出来ないのかな…」


 温かいお湯…温かいお湯…。確かリッテちゃんは精霊を感じろって言ってたけど…。いや、分からんわ。無理だわこれ。

 大体、精霊ってなんだよーーーっ!!私の世界には精霊どころかUMAだってマトモに立証された事はないんだぞーーーっ!!

 はぁ…愚痴ってても仕方ないか…。…温かいってことは火の精霊?でいいのかな。多分居るよね、火の精霊。水の精霊が居るくらいだし。


「火の精霊…暖かい水…水の精霊…暖かい水…お湯…」


 どうにか頭の中に、お湯がこの手の先に現れる想像を満たした。そして唱える。


「こ、今度こそっ…『クリエイトウォーター』!」


 パシャッ


「わっ!?何これめっちゃ出る…っていうか温かい!お湯だ〜!やった〜!」


 やれば出来るじゃん私!


「はぁー気持ちいい。シャンプーとか買っとくんだったなぁ…あるのか知らないけど」


 お風呂が普及してない世界にシャンプーその他が存在しているのか謎だけど。あ、でも所謂『良家』の人の家には付いてるんだっけ?じゃあその周りの物も高いって事かな…はぁ…。

 ううっ、沢山稼いで絶対良いお風呂に入ってやる…。

 お湯を浴びつつ布で体を拭き、良い感じのところでやめる。そうして雑貨屋で買ったタオルで体の雫を拭き取り、新しい服に着替えた。


「サッパリした〜。案外お湯だけでもいけるもんね。まぁ、いつまでも続けられるとは思わないけど」


『クリエイトウィンド』と唱えて髪を乾かす。乾かしながらお湯を捨て、指定通りに使った物を部屋の外に置いたところで気が付いた。この風も温風に出来るのでは?と。


「何事もやってみなきゃだよね。よーし」


 温風温風温風…ドライヤーの風…。


「あっいけそういけそう…『クリエイトウィンド』!」


 ブワァッ


「わっ、上手くいった…けど風強すぎ!!ストップストップ!!」


 そう叫ぶと風はピタッと止んだ。


「絶対髪ボサボサだ…」


 今度は程々の温風をイメージする。そうすると上手くいった。なるほど、やっぱり魔法はイメージが大切らしい。

 髪が乾ききったところで荷物整理の終わったリュックを背負い、部屋を出る。


「…あ、そうだ。宿泊延長しなきゃ…」


 どれくらいだろう。三日?四日?一週間?とりあえず三日でいっか。

 相変わらずカウンターで仕事をしているおばさんに声を掛ける。


「すみません、同じ部屋をあと三日…三泊?お願いしたいんですけど」

「はいはい延長だね。一週間泊まると割引が利くけど三日でいいかい?」


 え、うーん…まだ行き先決まったわけじゃないし割引利くなら一週間でも…。


「じゃあ一週間でお願いします」

「はいはい、ありがとうございます。先払いで金貨二枚と銀貨八枚…割引価格で金貨二枚と銀貨五枚だね」

「これでお願いします」

「はいよ、銀貨五枚お釣りね。それとこれは外出用の部屋札ね。戻ってくる時に渡してちょうだいな。失くさないようにしておくれよ!」

「はい」


 手続きを済ませ、宿を出る。まだ太陽は真上に来ていない。

 宿から少し歩き、昨日も通った大通りまで来た。相変わらず賑わっている。


「いいの入ってるよー!」

「今朝採れたばっかの新鮮なやつだよー!」

「安いよ安いよー!さぁさぁいらっしゃーい!」


 四方八方からそんな声が聞こえてくる。私が足を止めたのはその内の一つ、串焼きを売っているお店だった。少々ボリューミーかもしれないが、起きてから時間が経っているので恐らく問題なく食べられるだろう。


「すみません、一本ください」

「まいど!鉄貨五枚だよ」


 お兄さんにお金を手渡し、代わりに串焼きを受け取る。串焼きは塩味の豚肉っぽいものだった。ちょっと素材の味感が強いけど美味しい。

 串焼きを頬張りながら散策を再開する。


「何か…大通りというよりは商店街?」


 片側には立ち並ぶテントに沢山の人。その向かいには同じく立ち並ぶ普通のお店。その内容は屋台のような食べ物だったり、パンだったり、服だったり…。はたまた怪しげな物を売っているお店もあった。何とも統一感のない通りである。

 さらに歩いていくと、何やらもう一本賑やかな道を見付けた。


「何だろう?」


 気になってその通りに入る。そこはこれまでとは違い、野菜や肉を扱ったテントが数多く並ぶ通りだった。先程までが商店街なら、ここは市場だなと思った。


「あ、ジャガイモある。その横はニンジン?それに…キャベツもある。そんなに食べ物は変わらないんだ…良かった」


 元の世界で慣れ親しんだ野菜を見付けてホッとする。もしかしたら得体の知れない野菜ばかりなのでは?と心配していたから。


「魚は見当たらないなぁ…肉屋はこんなにいっぱいあるのに」


 内陸の方なのかな。運搬業が発達してるのかは知らないけど、もし新鮮な魚が手に入るなら色々作ってみたいな。


「何か面白そうな店は…」


 ふと一つの店の前で足を止める。その店に並ぶのは卵だった。


「何かちょっと大きいけど、普通の卵だ〜」


 異世界だし鶏卵かは怪しいけど、それっぽい卵なのは分かる。


「すみません、これって食べれます…よね?」

「当たり前じゃないか、とれたて新鮮な卵たちだよ!俺が丹精込めて育てたエッグポローの卵さ!お嬢ちゃんも一つどうだい?一個で鉄貨二枚だよ!」

「エッグポロー?」

「何だ、お嬢ちゃんとんでもない田舎から出てきたのか?エッグポローは卵を産む大人しい魔物だろう?肉は食えるし卵は産むで、慣れた人間は育てて売って生計を立てているもんさ」

「なるほど…」


 つまり魔物の家畜ってことだよね。聞いてる限りまんま鶏だけど。


「じゃあこの卵、五つください」


 そう言って銅貨一枚を差し出す。


「まいどあり!…って、カゴはないのか?」

「え?あー…」


 どうやら自分でカゴを用意して入れてもらうタイプらしい。残念ながら私は今リュックしか持っていない。


「しゃーないなぁ、ほら、藁でよけりゃ包んでやるよ」

「わっ、ありがとうございます!」


 お兄さんから包んでもらった卵を受け取り、その場を離れ…ようとしたが、ふと思い出して立ち止まった。


「すみません、お聞きしたいんですけど、ヒール草ってどこに生えてるか知ってますか?」

「ん?ヒール草?そんなもん郊外の草原にいくらでも生えてるだろ?」


 なるほど、そうだったんだ。それさえ分かればこっちのもの!


「ありがとうございます!」


 お兄さんにお礼を言って、一旦人通りの少ない場所に移動する。


「『亜空間倉庫』」


 ブォンッ


「卵もとりあえず突っ込んどいて…今度から適当なカゴ持ってかなきゃね」


 また必要な物が増えちゃったし、早いとこ依頼達成してお金手に入れなきゃ。今のところ支給のお金しか持ってないし。

 よーし、そうとなれば草原にレッツゴー!

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