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第六話「宿と別れと私のステータスの謎」

少し短めですが、切りがいいので一日目はここで終了です。

「ふー、お腹いっぱい」

「美味しかったわね〜」


 スープは意外にボリューミーで、しっかりとした食事になった。肉が入っていたからだろう。


「さっきの続きは歩きながら話しましょ」


 リッテちゃんはそう言って席を立った。私もそれに続く。


「リオさんは食事付きの宿が良い?」

「そうだね。付いてたら嬉しいかも」

「それじゃあ『ミルクス亭』がいいかもね」

「ミルクス亭?」

「朝夜二回の食事付きでお安めの宿よ」

「おー、いいね」

「じゃあそこにしましょうか」


 そう言って歩き始めたリッテちゃんの隣に並んでついていく。

 数分歩いて見えてきたのは『ミルクス亭』と書かれた看板の吊るされた、立ち並ぶ建造物の一つだった。


 カランカラーン


 リッテちゃんが扉を引くと、軽い鐘の音が鳴り響いた。


「いらっしゃい!」


 最初に見えたのはカウンター席にいる元気なおばさんだった。そのおばさんが声を掛けてくれた。


「二人かい?」

「あ、いえ。私一人です」


 おばさんの問い掛けに私が答える。


「えーっと…」


 が、この後どうすればいいのか分からない。

 その様子を見てか、リッテちゃんが「よく覚えてね」と言い、おばさんと話し始めた。


「この人が一人、一人部屋にとりあえず一泊。鍵付きの部屋って用意出来ますか?」

「鍵付き部屋だね?それなら一部屋空いてるけど、普通の一人部屋より銅貨五枚高いけどいいかい?」

「普通の一人部屋は…銀貨四枚ですね。リオさん、どうする?」

「えっ、あ、…鍵付きでお願いします」


 急に話を振られてキョドってしまった。というか鍵付きがデフォルトじゃないの怖すぎない?オプション扱いなの?


「じゃあそれで」

「はいよ。じゃあ銀貨四枚に銅貨五枚だね」

「あ、はい。じゃあ丁度で」

「まいどあり!それじゃあこれ、部屋札。二階上がって奥の部屋だからね。札と同じ絵が扉に付いてるから、間違えないようにね!」

「ありがとうございます」


 おばさんから受け取った木製の札には、確かに花の絵が掘られていた。

 リッテちゃんと共に、おばさんに言われた通り二階への階段を上がり、部屋札と同じ絵が書かれた扉を探す。


「あ…あった」


 扉はすぐに見つかった。扉を押し開けて入った部屋はそれなりの広さだった。


「一通りこんな感じなんだけど、覚えた?」


 リッテちゃんが私に問い掛ける。


「何となく。そんなに複雑じゃないから大丈夫そうかな」

「それなら安心ね。じゃあ、もう私戻らなきゃいけないんだけど…頑張ってね」

「えっ?…そっか、そうだよね。うん、色々ありがとう」


 折角信用できる知り合いが出来たのに、もうお別れか…。ちょっと寂しい。


「あはは、そんな顔しないでよ。…またすぐに会えるんじゃないかしら」

「本当?」

「多分ね」


 リッテちゃんは笑みを浮かべてそう言った。


「それに、意図してなくてもまた会うことになると思うわ。だからその時はよろしくね」


 よく分からないが、また会えるなら嬉しい。

 お互い感謝を述べたあと、リッテちゃんは部屋を出ていった。

 何か、急に静かになっちゃったな…。


「さーて、色々試そうかな〜!」


 寂しさを誤魔化すように声を上げて、部屋に備え付けられたベッドに腰を下ろす。


「ステータスオープン」


 フォンッ


「まだよく分かってない固有スキルあるし、試すしかないよね。まずは〜、『解析』」


 …何も起こらない。解析って言うくらいだし、鑑定みたいに何か意識してなきゃダメなのかも?

 そう思ったのでベッドに意識を向けて再度チャレンジ。すると、今までと同じようにウィンドウが現れた。


【宿のベッド】

「使用材料」

 ・木材

 ・布

 ・釘


 今度は成功した。


「うーん、けど結構ふわふわした内容だなぁ」


 もっとこう、精密解析!みたいなのを想像してたんだけど。


「じゃあ次は、『錬成』」


 シーン…。


「また何も起こらない…。…あ」


 というか鑑定スキル使えばいいじゃん。忘れてた。そうとなれば早速…『鑑定』!


 フォンッ


【スキル:錬成】

 ・アクティブスキル。材料を前にして錬成したい対象を脳内に具体的に浮かべながら使うと効果を発揮する。リオ・アマガヤのみが所持するチートスキル。


「…私だけが所持するチートスキル…?」


 ま、マジか。まさかの結果すぎる。私も他の子達と一緒でチートスキルあったよ…。…他のスキルはどうなんだろう?

 続けて他の固有スキルに対しても鑑定スキルを使う。


【スキル:解析】

 ・アクティブスキル。鑑定系スキルの頂点であり、所持する者は一万年に一度現れれば良い方というレベルの希少価値。スキルを使った対象を構成する物を表示する。スキルレベルが上がるとその精度も上がる。


【スキル:亜空間倉庫】

 ・アクティブスキル。無限に広がる希少な亜空間に繋がっているため、物が溢れることのない無限収納スキル。時間停止機能がついているため、物が劣化しない。異世界からの召喚者にもれなく携わっているチートスキル。


【スキル:知識欲】

 ・パッシブスキル。無限にスキルを覚えることが出来る。適正に関係なく全てのスキルを習得出来る。ただしその者のレベルに従属する。オンオフ切り替え不可能。リオ・アマガヤのみが所持するチートスキル。


「う、わぁぁ…」


 ダメだ、他言厳禁確定だ。というか何このラインナップ。…攻撃系ないし、やっぱり私は勇者じゃないみたいですね。いや別に良いんだけど。


「そういえば、この特質って何なんだろう。お城でもみんな言ってたよね」


 私が目を向けたのは追加ステータスの『特質』という欄。これがお城で確認されなかったからヒソヒソと後ろ指を指されて…うん、やめよう。思い出してもロクなことないや。


「『鑑定』」


 フォンッ


【特質:探究心】

 ・固有スキルに「鑑定」「解析」「錬成」「亜空間倉庫」「知識欲」を追加する。またステータス欄に「器用」「勘」「思考力」を追加し、強化する。その他生産系ステータスが追加された際に成長速度を高める。リオ・アマガヤのみが所持するチート特質。


【特質:不可視】

 ・追加ステータスと一定以上の性能を有するスキルを隠す特質。オンオフ切り替え可能。オン時は本人以外は如何なる者でもステータスの全貌を知ることが出来ない。切り替えの際にはステータスウィンドウ内の不可視に触れる。


「こっちもやば…。なるほど、不可視のおかげでステータスがバレなかったんだ」


 結果的に良かった…の、かな。


「それにしても探究心ねぇ…バレたら厄介だろうなぁ…」


 まぁ、不可視が仕事してくれる限り大丈夫だと思うけど。


「とりあえず気になるのは錬成かな。明日何か買って試してみよっと」


 それから、他に何かすることあったっけ?うーん…。


「…ああっ、依頼!忘れてた!」


 そうだ、冒険者ギルドで受けてたんだった!!期限いつまで!?

 急いでリュックから依頼書を取り出し、紙に目を通す。そこには「期限:なし」の一文が。


「良かった…」


 これなら明日でも大丈夫そうかな。


「ふあぁ…眠い…」


 色々謎が解けたら、急に眠くなってきちゃった。よく考えたら私、召喚に巻き込まれなければあっちではもうご飯食べてお風呂入って寝て…夜中くらい?

 あー、そう考えたらめちゃくちゃ眠い。もう無理。マジ疲れた…。


「お風呂…は、もう明日でいいや…」


 部屋に鍵をかけた後、靴を脱ぎベッドに横たわる。布団をかけるとすぐに眠気が襲ってきて、私はそのまま眠りについた。

というわけで、ここにきて初めての友達との別れです。リッテちゃん、その内再登場します。その時に、何故お城でリオに対して友人になりたいと申し込んだのかも明らかにしていこうと思います。

さて、次回は固有スキルをしっかりと使っていきます。

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