第五話「商業ギルド登録完了!それから腹ごしらえ」
また寝落ちして昨夜投稿出来ませんでした…。
本日は夜にもう一本投稿となります。
1月23日追記
またもや登録費のくだりを書くのを忘れてしまいましたので加筆修正致しました…!!申し訳ないです…。
それからギルド説明のところで、ランクごとの年会費についての加筆修正を行いました。
冒険者ギルドを出て徒歩十分。私達は商業ギルドの前に来ていた。
「意外に近いんだね」
「ここら辺に密集してるからね。それに冒険者ギルドに近ければもしもの時に頼れるし」
うわぁ、ちょっと不穏だな。冒険者ギルドに頼むもしもの時ってつまりそういう事でしょ?怖〜。
「まぁ、そんな頻繁に起こるわけじゃないから安心して」
そんなにって事はそれなりに起こるという事では??
そんな事を考えながら商業ギルドに足を踏み入れる。商業ギルドは冒険者ギルドと同じく賑わっていたが、冒険者ギルドのようにわちゃわちゃした感じではなかった。数人がまとまって物を見せあったりしている。多分、全員商人の方なんだと思う。
「あら、いらっしゃいませ。本日はどのようなご要件ですか?」
先程と同じように受付に近付くと、今度はあちらが気付いて先に声を掛けてくれた。気品溢れる美人さんだ。
「今日はこの人のギルド登録をしに来たんです」
「そうなんです」
「かしこまりました。少々お待ち下さいませ」
お姉さんはそう言い残し、後ろの棚をゴソゴソと触りだした。
「リオさん、もう一人で登録出来る?もし出来そうなら、私、他に用を済ませてきたくて」
「え?…んー…大丈夫だと思う!もしダメそうだったら聞きに行くかもしれないけど…」
「それなら良かった!じゃあまた後でね。隣のカウンターにいるから終わったら声掛けて!」
そう言い残してリッテちゃんは少し離た場所にあるカウンターに向かった。
二回目だし多分一人でも大丈夫。私も、もう半年で成人って歳だしね。
その間に用が終わったらしいお姉さんがこちらに向き直り、一枚の紙を差し出してきた。
「こちら、契約書になります。ご一読下さい。最後に下の欄にサインをお願い致します」
「はい」
契約書の内容は以下の通りだ。
一、商業ギルド登録時に殺人、窃盗を犯した場合ギルド除名処分とし、その後役人に引渡します。また、殺人の前科がある者に限り登録は認められません。
二、登録時に銀貨五枚、年間費、税金を支払いの義務を負って頂きます。年間費はランクにより異なり、税金は儲けによって異なります。
三、税金の誤魔化しは厳禁です。発覚した場合、直ちにギルド除名処分並びに罰金の徴収、役人への引渡しとなります。
四、登録日から一年以内に年会費の支払いが無い場合、ギルド除名処分となりますのでご注意ください。
五、一ヶ月に銅貨一枚以の儲けがある場合、その内5%の税金を商業ギルドにて納めてください。確認が取れない場合、一度目は厳重注意、二度目からはギルド除名処分となりますのでご注意ください。
ふむふむ、オッケー。サイン〜…っと、よし。
受付のお姉さんに、サインした書類を手渡す。
「お願いします」
「ご確認します。…はい、大丈夫です。それでは先に登録費の銀貨五枚と、年会費の銀貨一枚をお願いします」
リュックから金貨袋を取り出し、金貨一枚で支払う。
うー、使いにくいしお財布欲しい…。
「確かに受け取りました。銀貨四枚のお返しです。ではこちらにお手をお願いします」
先程と同じ金属板を指し示されたので、お釣りを受け取ってから同じように片手を軽く乗せた。
「ありがとうございます、確認取れましたので結構です」
そう言われて手を引っこめる。
お姉さんは冒険者ギルドの封蝋スタンプとは違う普通のスタンプをカードに押してくれた。
「それではこちら、お客様のギルドカードになります。本日が初登録ですので、アイアンランクからですね。失くさないよう大切に保管の方よろしくお願いします」
「ありがとうございます」
受け取ったギルドカードは、スタンプ以外はほとんど冒険者ギルドカードと変わらなかった。違うところといえば記載されたランクの名前くらい。
カードを観察しているとお姉さんが尋ねてきた。
「当ギルドの説明はご必要ですか?」
「お願いします」
「かしこまりました。まず、商業ギルドとはこの大陸上全ての国を跨いで活動する大規模組織です」
お姉さんがしてくれた説明は以下の通りだ。
・構える店舗によってランクが異なり、またランクによって構えられる店舗の規模が決まる。
・ランクによって年会費が異なる。
・ランクは下から「アイアン」「ブロンズ」「シルバー」「ゴールド」「ミディアム」「グランデ」「プラチナ」の七種類。通貨に由来する。
・年会費は、アイアンランク→銀貨一枚、ブロンズランク→銀貨五枚、シルバーランク→金貨一枚、ゴールドランク→金貨三枚、ミディアムランク→金貨五枚、グランデランク→金貨七枚、プラチナランク→中金貨一枚
・店舗申請を出す際に、その規模に応じたランクのギルドカードを持っていないと申請は通らない。
・ランクを更新する時は商業ギルドで行う。
・商業ギルドでは自分の欲しい商品を手に入れるための依頼が出せる。逆に自分が依頼を出した時に誰かが受けると、すぐにギルドから連絡が届く。
・宝石や調味料などの査定は商業ギルドが得意としているので是非利用してほしい。
・商業ギルドは銀行も経営しているのでそちらも利用してほしい。
「以上です。何かご質問はございますか?」
「いえ、大丈夫です。ありがとうございました」
「いいえ、ご利用ありがとうございました。では、お互い経済を盛り上げて参りましょう!」
「はっ、はい」
上品に落ち着いた話し方だったのが、急に元気になるから驚いた。心無しか目がキラキラしている気がする。それだけ商売が好きなのかな。
とりあえず登録が終わったので、約束通りリッテちゃんの元に向かう。
「リッテちゃん、終わったよ〜」
「あ、リオさん。どう?大丈夫だった?」
「うん。問題なし!」
「そう、良かった!」
「リッテちゃんは?用事終わった?」
「丁度終わったところよ」
「そっかそっか。何してたの?」
「ちょっと良いモノが手に入ったから査定してもらってたの」
「なるほどね〜」
査定は隣のカウンターでしてもらうのね。覚えとこ。
「次はどこに行こうかしら?宿の取り方は分かる?」
「あぁーそっか、宿かぁ」
そうだった。私今、一文無しではないけど宿無しだった。
うぅ、サヨナラ、元の世界の私の1LDK…。まだ一年も住んでなかったんだけどなぁ…。
「リオさん?」
「はは、何でもないよ…。宿のこと分からないから教えてもらって良い?」
「勿論よ、任せて!」
張り切るリッテちゃんに連れられて、私達はギルドを後にした。
「あ、そうだ、その前に。ねぇ、そろそろお腹空かない?」
「言われてみれば確かに…」
召喚されたのはバイト帰り。つまりまだ夕飯を食べていないということ。
う、思い出したら急にお腹が…。
「めっっちゃお腹空いた…」
「そうよね、もうお昼だし。そこの食事処に入りましょ」
リッテちゃんに連れられて入ったのは賑やかなレストラン…、…居酒屋の方が近いかもしれない。丸い木のテーブルに席が大体四つ付いたセットがいくつもある。ほとんど満席だ。
リッテちゃんはその混雑の中を潜り抜け、どうやら奥にあったらしいカウンター席に座った。その隣に私も座る。
「メニューは上に書かれてるからね」
そう言われて斜め上を見ると、昔ながらの定食屋のようにメニューの書かれた板が何枚も並んでいた。
なになに?「オークのステーキ」、「ビッグカウのステーキ」、「ビッグカウと野菜のスープ」、「オークの串焼き」…。
その他ビッグカウとオーク肉が付いた名前の料理多数。
「何かビックカウとオークばかりだね」
「単価が安いからね。どこも似たようなものよ」
リッテちゃんは「単価的にはオークの方が安いけど」と付け足した。
なるほど、確かに。たまにある全然知らない名前の魔物?が書かれた料理より、オークやビッグカウと書かれた料理の方が遥かにお安い。
ビッグカウは確かリュックの時にも出てきたよね。「カウ」って言うくらいだし、牛肉に近いのかな?
オークは…何だっけ。二足歩行する豚のモンスターだっけ?
豚…人っぽい豚…ううぅ…。食べたら多分豚肉っぽいんだろうけど、けど…。
「決めた。久々の外食だし、奮発してキラーラビットの塩焼きにしよっと!リオさんは決まった?」
「え、えーっと…」
オークはまだちょっと無理…!だから…。
「ビッグカウと野菜のスープ…かな」
「スープね。すみませーん!」
リッテちゃんが大きな声で誰かを呼ぶと、すぐに人が来た。
「はいはーい!ご注文は?」
「キラーラビットの塩焼きとビッグカウのスープ一皿ずつ!」
「はーい、塩焼きとスープね!塩焼きが銀貨一枚、スープが銅貨三枚よ!」
「じゃあ丁度で」
「えっ!?」
「ありがとうございまーす!お水お持ちしますね!」
どうやら先払い制だったらしい。知らずにリッテちゃんに出させてしまった。
「ご、ごめん。私先払いだって知らなくて!銅貨三枚だよね?ちょっと待って、今返すから」
「あぁ、いいわよそれくらい。お友達になった記念ってことで奢られといて?」
「えっ、でも悪いし…」
「それに私は職に就いてるけど、リオさんは正直どうなるか分からないでしょう?だからここは出させて」
「うっ…そうならないようにしたいんだけど…。ありがとう、お言葉に甘えます」
ペコリ、とリッテちゃんに頭を下げる。
「いーえー。さっ、それじゃ宿探しについてレクチャーするわよ!」
リッテちゃんが元気にそう言った。
「宿探しの第一歩はまず、条件に合う宿のピックアップから!」
「ふむふむ。あ、ちょっと待って」
さすがに宿の取り方は口頭で覚えられる気しないからね。
私は雑貨屋で購入したメモ帳と鉛筆をリュックから取り出す。
正確には手帳と木炭をペン型に加工したものらしいけど、メモ帳とかペンの方が言いやすいから私はそう呼ぶことにする。
「ごめん、続けて」
「はーい。それで条件に合う宿を探すわけなんだけど、宿と一口に言っても色々な場所があるの。代表例で言えば金額、それから食事付きかそうでないかとかね」
うんうん。
「後は従魔や奴隷も一緒に泊まれるかとか、何人まで同じ部屋で泊まれるかとか…」
「奴隷!?」
「ちょっ、急に大声出さないでよ」
「あ、ご、ごめん。ねぇ、奴隷って?この世界には奴隷がいるの?」
「そうよ。破産した人なんかがよくなるわね。後は罪人が償いで奴隷堕ちを課されたり…それくらいかしら。奴隷堕ちを課されるのは軽い罪の罪人だから、一定期間奴隷として働いたら社会に戻れるようになってるの。それ以外はただの人身売買だから違法奴隷で役人に捕まるわ」
「そうなんだ…」
よくある無理矢理売られたりっていうのは違法になってるから、心配要らないのかな。
奴隷って呼ばれてるから聞こえは悪いけど、つまり派遣社員みたいなものっぽいし。
「…続けて大丈夫?」
「う、うん。ごめんね、話中断しちゃって」
「大丈夫よ。で、自分に適切な宿を選ぶためには直接宿に行って条件を聞くか、ギルド職員に聞く方法があるわ。それか、冒険者なんかに聞いたりね。彼等はそこら辺詳しいから」
なるほど。
「その情報を元にその日泊まる宿を決めるのよ。それで肝心の宿でのやり取りなんだけど───あーっと、続きはまた後でみたいね」
「お待たせしましたー!キラーラビットの塩焼き、ビッグカウと野菜のスープでーす!」
話の途中で注文した料理とお冷が運ばれてきた。
「冷めない内にいただきましょ」
「うん。いただきまーす」
ビックカウのスープはあっさり塩味で、野菜はジャガイモと謎の葉物野菜だった。ビックカウの肉はは予想通り牛のような食感と味だった。
次回、宿決めです。