第四話「冒険者ギルドにやってきました」
昨日投稿したと思い込んでいたら出来てませんでした…すみません!
1月22日追記
登録費を支払う描写が抜けていたので加筆修正しました。
失礼致しました。
「さっきより賑やかだね」
店を出てから大通りを歩き始めて約十分、私達は休日のショッピングモールかな?というレベルの喧騒と人混みの中にいた。
私達はまず冒険者ギルドに寄る事にした。複数のギルドに登録出来るみたいだし、まずは異世界系でポピュラーなとこに行こうと思ったんだよね。
「そりゃあね。ギルド近くにはどこでもお店が集まるものだから」
「なるほど〜」
「…リオさんのそれって口癖?」
「へ?何が?」
「気付いてないのね…いえ、別にいいの。何でもないわ。少し気になっただけだから」
「うん?」
何の話?
「それより見て、あれが冒険者ギルドよ」
「おぉ〜。…何か周りの人たち、厳ついね…」
「当たり前じゃない。冒険者ギルドよ?」
そうなんだけど、男性だけじゃなくて女性も見た目がカッコいいと言うか…。冒険者なら誰でもそれが普通なのかな。
そんな事を考えている内に冒険者ギルドに着いてた。中に入ると一層賑やかさが増した。
リッテちゃんは奥に見える三つのカウンターの内、一つに近づいて行った。私もそれに続く。
「すみません、この人のギルド登録をお願いしたいんですけど」
「いらっしゃいませ。ギルド登録ですね?それではまず銀貨五枚お願いします」
私は受付のお姉さんに言われた通り、銀貨五枚を差し出す。
「1、2、3…はい、ありがとうございます。少々お待ちください」
それにしても可愛いお姉さんだなぁ。
「お待たせしました。こちらの契約書にサインをお願いします。もしアレでしたら拇印でも結構です」
お姉さんは少し受付を離れたかと思うとすぐに戻ってきた。
「リオさん、字は書ける?」
「勿論!…あ、でもこっちの字知らないから…」
あれ?つまり私、字書けない子?
「あ〜…。すみません、故郷の字でも有効ですか?」
「大丈夫ですよ。必要なのは本人が自分の意思でサインしたという所ですから」
私の代わりにリッテちゃんが聞いてくれたところ、大丈夫らしい。
それならと私は貸してもらったペンをとる。
「…あれ?」
「どうしたの?」
「いや、何故か読める…読めるんだよ、確かに分からない筈なのに。習ったことも無いし…」
うーん、と考え込んでいると急にリッテちゃんが焦り出した。
「まっ、まぁ細かい事はいいじゃない!?書けるならそれで!さぁ早く済ませちゃいましょ!ねっ!」
「う、うん」
その勢いに圧されて書類に目を通し始める。その内容は次の通りだった。
一、冒険者ギルドに登録したその時から冒険者同士の殺人は認められない。もしこれを犯した場合、ギルド除名処分となり役人に引き渡す。また、見掛けた場合はギルドに報告をすること。
二、殺人、窃盗などの罪を犯した者はギルド除名処分としギルドカードを剥奪の後役人に引き渡す。殺人の前科がある者に限りギルド登録、ギルド再登録を認めない。
三、冒険者ギルドに登録する時、銀貨五枚を支払うこと。ギルドカードが無効になった場合、新たに登録が必要になるが、その際にも改めて銀貨五枚を支払うこと。失くした場合も再発行のために銀貨五枚を支払うこと。
四、冒険者ギルドは依頼仲介人としての責任は負うが、依頼進行中でのトラブルについては一切の責任を負わない。また、普段の冒険においても上に同じである。
五、以上に同意の出来る者だけが以下の署名欄に記名をすること。本人の署名かそれに準ずるサインのみ有効である。
「ほうほう、ちゃんとしてる…」
「契約書だからちゃんとしてないわけないでしょう」
リッテちゃんにツッコミを入れられてしまった。そりゃそうか。いくら異世界でも契約書だもんね。
「サイン、っと。…お〜?」
何かサラサラーっと書けちゃったけど、これってここの文字だよね。何これ読めない…いや読めるけど。違和感しかない。
「ありがとうございます。うん、大丈夫ですね。それではこちらの魔道具に片手を置いてください」
お姉さんがそう言って出したのは四角く加工された金属の板。私の手より二回り大きいくらいのサイズだ。
言われた通りに手を置くと、一瞬金属板の周りが光に包まれ、すぐに消えた。
驚いているとお姉さんから「もう結構ですよ」と言われたので手を引っ込めた。
「今、光ってたね…これも魔法?」
気になってリッテちゃんに話し掛ける。
「どこのギルドでもこうやってギルドカードにその人のステータスやギルド内でのランク何かを記録するの。更新する時も同じ事をするから覚えておいてね。あとこれは魔石を埋め込んでいるから…まぁ魔法ね。魔力回路って言うのかしら。構造は全然分からないけど」
「そうなんだ…ありがとう、覚えとくね」
そうこう話している内に、お姉さんはカードに封蝋みたいなスタンプを押したり色々謎の機械?魔道具?って言うのかな?分からないけどそんな感じの物とカードをゴソゴソやって、諸々の手続きが終わったらしい。
「はい、これで登録は完了です。これがギルドカードになります。大切に保管してくださいね。登録料、地味に高いですから」
「わぁ〜、ありがとうございます」
お姉さんがくれたのはクリーム色の謎の材のカードに、私の名前やランクなんかが書かれた物だった。さっきの封蝋的なやつは暗い灰色で、真ん中には…剣?がクロスされてるっぽいマークがスタンプされていた。
「では当ギルドの説明をしたいんですけど…字が読めるなら一応冊子もあります。急ぎでしたら冊子だけ渡しておくことも出来ますが、どうしますか?」
「特に急ぎじゃないんで大丈夫です。…あ、でも一応貰っていいですか?冊子」
「分かりました。どうぞ〜」
「ありがとうございます」
これで聞き逃しても確認出来るね!
「ではまず、冒険者ギルドとは大陸内の全ての国で活動する国の管理下から独立した大規模組織です。冒険者にはランクがあり、最低ランクがG、最高ランクがSの八段階でランク付けされています。ランクアップには依頼をこなしてもらう必要があります。ただし、依頼は自分のランクとそのすぐ上のランクレベルの物しか受ける事が出来ません」
ふむふむ、じゃあ私は今Gランクって事だね。確かにギルドカードにも書いてある。
「狩ってきた魔物の解体は、登録特典として格安で承りますので隣のカウンターにてお申し付けください。採取した薬草やダンジョンでの戦利品、隣で解体した魔物の買取も承っています。勿論、ご自分で解体されたものでも大丈夫です」
おおー、お得!リッテちゃんが言ってた特典ってこれの事か〜。
依頼をこなすのも良いけど、ここで何か買い取ってもらえれば小銭稼ぎくらいにはなるかな。某ゲームみたいに何でもってわけにはいかないんだろうけど。
それにダンジョン!やっぱりあるんだな〜、ファンタジーって感じでワクワクしちゃう。まぁ私は行こうと思わないけど。怖いし。
あ、でも遠くで見学くらいだったら良いかも?
「G、Fランクは一ヶ月依頼を受けないと登録が抹消されます。C、Bランクは三ヶ月、Aランクは半年、Sランクは一年です」
あっ、ちょいちょい受けないとダメなんですね…。
「基本的な説明は以上になります。あ、依頼はそちらの壁に貼り付けられてる紙…依頼書を剥がしてこの受付に持ってきてください。適当に引っ張って剥がす感じで大丈夫です」
「分かりました」
「また分からない事があったら別途聞きに来てください」
「はい、ありがとうございました。お待たせリッテちゃん」
「いいのよ。折角だから、何か受けていく?その、リオさんの格好だと何か気後れして今後入りにくそうだから、練習がてら?」
確かに。今の私は着替えていて、リッテちゃん曰くよくいる街娘ファッションらしい。ガッツリ防具を着込んでいる冒険者の皆さんの中では少し浮いて見えるかもしれない。いや、かなりかも。
お金が貯まったらそれっぽく見える物を買ってもいいかもしれない。
「うーん、そうだね。簡単そうなやつを一つ受けてく事にする」
「そう来なくっちゃ。さ、どれにする?初心者は無難に薬草採取が良いと思うんだけど」
「じゃあそれで。…二つあるけど、どっちの方が良いんだろう…」
片方の薬草採取はヒール草、もう片方はマジック草。ヒール草は十本一組の束で銅貨五枚、マジック草は十本一組の束で銅貨八枚。どっちも依頼数に制限は無いみたい。あればあるだけ欲しいってとこかな。
「ヒール草は単価が安いけど見つかりやすいわ。マジック草は単価が高いけど、その分ヒール草よりは見つかりにくいの。どこを優先するかは自分との相談よね」
私だったら単価を取るけど、とリッテちゃんが笑った。
なるほどなるほど、高いには高いなりの理由があるってことか。
私は初心者だし、初めての依頼だから…。
「こっちにする」
そう言ってベリッと剥がしたのはヒール草採取の依頼書。それを先程のカウンターに持っていく。
「すみません、これお願いします」
「ではギルドカードの提示をお願いします」
ここでもギルドカードを使うんだね。大切にしなきゃ。
私は先程リュックに仕舞ったギルドカードを取り出し、提示した。
本当はストレージボックスに入れようとしたんだけど、リッテちゃんに人前で使うなって言われてるからすぐ欲しいものはリュックに仕舞う事にした。折角買ったリュックだしね。
「はい、大丈夫です。ではこの依頼書を無くさずに依頼完了報告の時まで持っていてください。完了報告の時はまた受付にお願いします。ちなみにどこの冒険者ギルドでも大丈夫です」
「なるほど、分かりました」
お姉さんから依頼書を貰って、リュックに仕舞う。
そして少し離れた場所で待機してたリッテちゃんの元に戻った。
「大丈夫だった?」
「うん、何とか」
「そう、良かった。……ねぇリオさん、さっき字が読めるって言ってたわよね?」
「ん?うん」
急に小声になったリッテちゃんにそう答えると、先程よりも神妙な顔付きになり、更に小声で話し始めた。
「記録によるとね、数千年前に召喚された勇者も何故か言葉で苦労する事が無かったんですって。勇者って、みんなそういう風に出来てるんじゃないかしら。…つまりリオさんは、やっぱり本当は勇者かもしれない」
「え」
マジですか。
「それと、大昔の勇者召喚は今じゃおとぎ話化していて、ほとんどの人が知ってるの。だから最初から字が分かってるかのように振る舞わなきゃダメよ。余計な詮索はされないようにね。あと、言ったか覚えてないけど」
「なるほど…だからだったんだ…。うん、分かった」
「よし、じゃあ次は商業ギルドね!」
こうして私は初ギルド登録と初依頼を受けたのだった。次は商業ギルドに行くよ!