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SSRが降ってきた。  作者: オシボリ
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7話:アイドルと未来人

 俺が脱衣所から出ると、彼女はテレビを食い入るように見ていた。

 番組が面白いというよりは、興味を示しているといった風だが。

 

「そんなに面白いか?」


 俺の問いかけに返事はない。集中しているようだ。

 彼女がシャワーから出たあと、続いて俺もシャワーを浴びた。自分の身体も冷えていたからだ。

 髪をバスタオルで拭きながら、彼女の斜め後ろに座る。

 初めて会った時は、アイドルライブの日々木奏でだったが、今はうちの母親のパジャマを着た黒髪の少女だ。

 テレビでは、音楽番組がやっていて、アイドルグループが歌やダンスを披露している。

 

「本当に、アイドルが好きなんだな」

「好きというか、好きだけど、これはそういうんじゃなくて、なんか懐かしいというか」

「懐かしい? リアルタイムの番組だぞ?」

「そうなんだけど、懐かし映像とかでしか見たことないから」


 懐かし映像?

 またおかしなことを言っている。未来人設定の続きか?


「あのさ。少し話していいか?」

「うん、いいですよ」

「本当に未来人なのか?」

「そうですよ」

「いつから来たんだ? 何年先から?」

「約200年後ですね」

「そうなんだ。200年先の人からしたら、確かに懐かし映像だよな」


 というか、もはや古典だけど。


「そうですね」

「じゃあ、これも見たことあるんだ」

「今放送しているもの、そのものは見たことないですけど、この番組がやってたこと、このアイドルが当時いたことは知ってます。好きで、けっこう調べましたから」

「なるほどな。じゃあ、日々木奏の格好をしているのも?」

「はい。私、アイドルライブってゲームが好きで、その中のキャラの一人で日々木奏が一番好きなので」


 そういうことか。でも、だとすると、今で考えたら、今から百年前の歌手のコスプレをして街中をウロウロしているってことか。それはそれでおかしな奴な気もするが。

 

「これのことか?」


 俺はスマホでアイドルライブを起動すると、画面を見せてやる。


「うわぁ、スゴい! 本物のアイドルライブだ!」


 うっ、顔が近い。

 女の子に免疫のない俺は、それだけで緊張する。


「いいよ。やっても」

「本当ですか!?」


そう言ってスマホを渡すと、なんとか離れる。

俺はキッチンへと向かうと、二人分のお茶を入れる。

 そういや200年後って何飲んでるんだ?

 お茶でいいのか? まぁいいか、昼間も公園で俺が渡したおにぎりとお茶飲んでたし。

 

「日々木奏が好きで、その格好をしていただけなら、君の名前もあるんだろ? なんていうんだ?」

「筑波ミクですよ」

「ミクちゃんか。いくつなんだ?」

「17です」

「同じ年じゃないか」

「そうなんですか? そう言えば、私も名前聞いてなかったです」

「あぁそうか。そうだったな。俺は藤堂彼方だ。母親と二人で暮らしてたんだが、母は今、海外に出張中でね。今は一人なんだ」


 そう話ながら、お互いの名前も知らず、未成年の男女が一つ屋根の下にいることに、急に緊張してくる。名前を知ったところで、どうということはないのだが。

 俺はお茶を入れると、彼女の下へと戻る。ミクはゲームに夢中だ。


「ところで、その、君が未来人ってことが本当だとして、なんで過去にやってきたんだ?」

「それは、男の人に会ってみたかったからです」

「男に会う?」

「そうです。私の時代には、男はいないので」

「へー、え!?」


 そしてまた、衝撃的事実を知ることとなった。


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