2話:登校でエスケープ
なぜ日々木奏がここに?
とりあえず頭が混乱する。
現実にいるわけがない。ということは、コスプレイヤーか。
にしても、平日の朝っぱらから、こんな住宅街の真ん中でコスプレしてる奴なんて、怪しいにも程がある。
待てよ。そうか、こいつは怪しい奴だ。そうに違いない。
関わってはいけないやつだ。つまり、、、
「あっ、すみません。急いでますんで」
俺は、彼女の横を通り抜けた。
「ちょっ、ちょっと待ってください! いや、無視ですか」
彼女が俺の足首を掴む。
振りほどこうとするが、なかなの力だ。
「あなたが呼んだんですよね。そうですよね!」
「いや、呼んでないし。知らないし。俺、ゲームしてただけだし。てか俺、学校行かなきゃだし。遅刻するし」
「学校? 学校行くんですか? 私も行きたい!」
「行けよ勝手に!」
「だって私、学校行ってないし」
「だっての意味がわからん。行きたきゃ行けばいいだろ」
俺はやっとのことで、彼女の手を振り払う。
学校に行きたいのに行ってない?
マジで意味がわからん。
不登校か何かか? それとも何か事情があって?
とにかく関わったら面倒だ。
「私のこと置いてかないでぇ」
そう叫ぶ彼女の声を背中に、俺は学校へと向かった。
普段、面倒くさくて行きたくない学校に、こんなにも駆け足で向かったのは初めてだ。