プロローグ
俺ら二人は、特に目立つこともない平凡な高校生だった。特別な何かを持っている訳でもなく、素晴らしい夢を持つこともなかった。
そんな俺ら二人に、人生の転機が起きたのは、今から数十年前─。
だんだんと周りが夢に向かって歩みだして行くこの頃。そう─、ちょうど高校三年頃だったか。あの時のことは鮮明に覚えている。
ふざけたことをして笑っていた日々も遠ざかり、就職や進学に力を入れる頃。俺ら有村達哉と進藤久樹は、何も考えずに別々に生きていた。
この時は、まだあまり話すこともなく、お互いの存在を意識してはいなかった。けれど、コンビニや寮の食堂・風呂場などで見かけるたびに、互いに言葉を交わすようになっていった。しかしまだ別段干渉はせず、相手のことをよく知ろうとはしなかった。だが、まだ夢を持っていない、という点で共通していることは二人とも理解していた。
周りからもよく「冷めてるね」と言われる二人が一緒になれば、会話もそうそう続かない。傍から見ればたまたま一緒になった多少会話をする二人が隣を歩いている、という図にも見えかねない。 しかし、俺らは共にあまり話さないことについて深く考えたことはない。互いに多量な会話を苦手とする人種だからだ。普段から周囲と会話をせず、一匹狼とでも言うのだろうか。大抵一人で行動する。「会話が続かない」という理由で、短気な人々は遠ざかっていく。そうやって、一人の空間でバリアを張る。相手に深入りせず、深入りさせない。「油断」という言葉からは縁遠いということだ。広く浅く人と付き合っていく、俺らはそういう人種だった。
休日、たまに一緒に行動するときがある。この二人には「遊ぶ」という言葉がないのか、そう思うくらいに何も起こらない。別々のところへ座り、別々の趣味の本を読んだり。特に目的も持たず、店舗には見向きもせず歩き回る。猟奇的な会話で話が続くときもある。周りからすれば、そんなことをしていて何が楽しいのか、そう思えてくるだろう。そして、俺らだって別段楽しんでいる訳ではない。することがない、ただそれだけなのだ。
そんな俺らに、「夢」「目標」そういった兆しが現れたのは、その年の夏ぐらいだったろうか。まだ暑さも抜けず、海真っ盛りのシーズンだった。俺ら二人は、そういった明るく楽しい世界には興味がなしに、今までと同じ風に暮らしていた。そんな俺らの目に飛び込んできたのは、一つのニュースだった。あの時の、体が駆り立てられるような衝動は今思い出してもゾクゾクする。その一つのニュースは
『本日午前四時ごろ、海の水平線付近で膨大な光が放出されたとの情報が入ってきました。
その光は、まるで海を包み込むような大きさで、そのまま一本の光の線となってどこかへ飛んでいったとのことです。どこへいったのでしょうか・・・・』
内容はこのようなものだったろうか。何せ数十年前。記憶も定かではない。しかし、このニュースが俺らの心を大きく動かしたのは確かだった。たまたま一緒に歩いていた、その状態が、好奇心からの行動へと一変した。
それからの俺らの行動は、普段からじゃ考えられない機敏さだった。俺ら二人の心に宿った、「あの光の正体を知りたい」その感情が俺らを突き動かしたんだ。今思えば、無茶な行動をしようとしていた。でもあの頃は、初めて感じた「好奇心」というものに、従うしかなかったのだ。
特に約束をするでもなく、ある日突然集まった。そういう自然に心通う感じが引き合うのだろうか。もちろん家族や周囲の人々に書置きはない。言葉を交わすか、そういう考えは俺らにはなくて、ただ一回、強く頷き、まだ見もしない知りもしない世界へと歩みこもうとしている。その先に待ち受ける苦難をも乗り越えるような強固な思いが、その頷きにはあったのかもしれない。そうやって、俺らはその『道』を歩んでいく─。




