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ちょっと短いです。
「お姉さん、助けてくれてありがとうございました。僕はアンリって言います」
ペコリとお辞儀付きでユーリにお礼を言うアンリ。その姿が可愛くて、ユーリはアンリの頭を撫でる。
「どういたしまして。私は、ユーリ」
頭を撫でられてアンリはきょとんとした顔をした。その顔がまた可愛くてユーリは笑った。
「!……えっと、道で転けちゃったから僕汚いですよ」
羞恥によるものなのか、アンリはあわあわと顔を赤くし、俯いてしまった。
(僕っ娘なのかな?美少女が僕って可愛いな)
にこにこしながら、未だに頭を撫でるユーリをアンリは上目遣いで見上げる。
その視線とユーリの視線が合うと逸らされてしまった。
「じゃあ、お風呂に入ろうか」
「オフロ?って何ですか?」
この世界にはお風呂文化が無い。だから、不潔じゃない程度に体を拭うのが精々だ。
これに我慢ならなかったユーリはガンツとナンシーに頼み込んでお風呂場を作って貰った。
全面が水を吸わないようにタイル張りにし、部屋の中央に白い猫足バスタブを鎮座させた。猫足バスタブはガンツの伝手を頼って商人に作って貰った。
ただ、上下水道などある筈もないので、お水や沸かしたお湯などを持って来て体を洗い、汚れた水は川に流すようになっている。
環境問題になったら困るので、ここは要改善だ。
アンリの入浴の為にお湯を沸かし、タオルと着替えの服も用意した。
お湯が沸いたので、アンリの両脇に手を入れて抱き上げる。
アンリがユーリの腰までしかない小柄な体型だから出来るわけではなく、元々ユーリは力持ちだ。買い出しの大量の食材もユーリは一人で運ぶ事が出来る。
最初は色んな方面から驚かれたが、皆もう慣れてしまい、ユーリが背負う小山は日常の風景になった。
お風呂場にアンリを連れていき、服を脱がせた。そこで気付いたのは、
(男の子だった)
アンリは中性的な美貌の男の子だった事にユーリはやっと気付いた。
手が止まったユーリをアンリは不思議そうに見上げる。
「どうしたんで…へぷちっ!」
アンリの可愛らしいくしゃみで我に返り、彼が服を脱がされ、白い肌を晒している事を思い出す。
昨日を熱を出していた彼に風邪を引かせてた大変だ。急いでバスタブの中へアンリを入れて、お湯専用の水差しから少し冷ましておいたお湯をバスタブの中へ注いでいく。
「熱くない?」
「大丈夫です」
「頭にお湯を掛けるから目を瞑って、息止めててね」
お湯の中で縮こまっていたアンリはユーリの言葉に素直に従い、目をぎゅっと瞑り、口を両手で塞いだ。
ユーリは、そんなアンリの様子にクスッと笑い、頭にゆっくりお湯を掛けた。
「じゃあ、頭から洗おっか」
用意していた手作り石鹸とシャンプーとリンスを取り出した。
「それは何ですか?」
バスタブの縁に手をかけて、身を乗り出すアンリ。
「企業秘密」
「キギョウ?」
掌にシャンプーを取り、アンリの髪を洗っていく。思った通りアンリの髪は柔らかかった。
鼻歌混じりにアンリを洗っていく。アンリはユーリにされるがまま、じっとしている。
時たま、ユーリの顔を見上げ、彼女と視線が合うと嬉しそうに笑った。
入浴後、大きなタオルでアンリを拭き、ユーリの服を着せてあげる。
ただ、やはりユーリの服はアンリには大きいので、この後町へアンリが着られる服を買いに行く事にした。
綺麗になったアンリの髪を櫛で梳かす。ボサボサだった髪が整えられ、光を反射してキラキラと輝いている。まるで精巧に作られた天使の彫像のようだ。
ただ、お湯のおかげで体温が上がり、瑞々しい頬がほんのりと赤い事と唇の赤で人形ではなく、生きた人間だと分かる。
ユーリは綺麗になったアンリを満足げに確認すると一つ頷き、抱き上げる。そのまま部屋へと連れて行く。
「これからアンリの服を買いに行くんだけど、お留守番してる?一緒に行く?」
「僕も一緒に行きたいです」
アンリは元気よく手を上げて答えた。そんな行動が可愛くて、ぎゅっと抱き締めた。
「ユーリ?」
「ふふふ、アンリが可愛くて…つい…痛かった?ごめんね?」
「大丈夫です」
アンリは嬉しそうにユーリに抱き付いた。ユーリは抱き付いてくれたアンリの頭を撫でると彼を椅子に下ろした。
アンリに靴を履いてもらっている間に財布を取ってきて、ガンツとナンシーに出掛ける事を伝えた。
ユーリはアンリの小さく温かくて柔らかい手を握り扉を開けた。
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