閑話 アーサーの話
タイトル通りにアーサー視点
私の名前はアーサー・ケントルムと言う。ケントルム王国の王太子をしている。父はケントルム王国の王と母は王妃との間に第一子として生まれた。父の容姿と母の気性を受け継ぎ、幼い頃から家臣や侍女などから可愛がられた。
ある時、宰相に幼い私に婚約者をという話をされた。その時はまだ私が幼すぎて父上と母上に先送りにされた。だが、宰相は父上や母上が居ない隙に事ある毎に宰相は婚約者という言葉を連発した。私の意識の根底に刷り込むように何回も何回も。流石の私も宰相が自分の娘を私とくっつけようとしていると勘づいた。
それからはなるべく宰相に近付かないようにした。しかし、宰相は父上である国王の右腕で会わないわけにはいかなかった。
宰相に自分の娘を婚約者にするようにと明確な言葉で言われないが、それとなく周囲の者達にも言っているようで外堀から埋められていっているのがなんとなく感じた。
安らげる時間と言えば、他国に外遊に行く時だけだった。
そんな憂鬱な日々を送るのに少し疲れていた私はペンを指で遊びながら侍女に淹れてもらったお茶を飲みながら書類に目を通していた。そんな私の耳に扉の向こうから騎士達の楽しそうな声が届いた。普段なら勤務中に無駄話をするとそれとなく注意するが、この時は私も集中できなかったので扉へと近付き、少し隙間を開ける。
「マジか!?」
「本当だって!食事は旨いし、食ったら食ったで身体が軽くなるし!作ってる女性が美人なんだよ。しかも…」
「しかも?」
「顔立ちは幼いのに身体は完全に女性なんだ。俺は細い腰が好きだな」
「俺は女性は胸派なんだよ」
「その女性の胸は大きいんだよ」
「ほぉ」
騎士達の話の内容は下世話な話だったが、少し興味を引かれた。少しだけ開けていた隙間を扉前の騎士達に声を掛ける為に大きく開けた。
「その話を詳しく聞きたいんだけど?」
突然開いた扉から私が顔を出したので騎士達は驚いて固まっている。そんな彼等に私は笑いかけた。
騎士達の話を聞いて一層興味を引かれたので行ってみたいと思うが、私が移動する為には大勢の騎士達等の護衛を連れていかなければならない。それでは、面白くない。そこで、誰か仲間に引き込もうと考えた。誰を引き込もうかと考えていると私には都合良く、相手にとっては不運な事に生け贄が通り掛かった。
「やあ、久し振りだね」
「ああ、お久し振りです。アーサー様」
大量の書類を両手に抱えているフィーが声を掛けた私に振り返った。
「今度は何の魔道具の開発をしているんだ?」
「今は既存の魔道具の出力をもう少し上げられないかと研究中です」
「ほう…所で最近王宮から出たのは何ヵ月前だ?」
「え?えーと、二ヶ月前?でしょうか?」
「そうか。私は昨日、騎士達から面白い話を聞いたのだが…」
フィーは徐々に自分に災難が降りかかるのを感付き始めたのか、赤紫色の瞳を忙しなく動かし、自分の替わりの生け贄を必死で探し始めた。
フィーは研究に没頭してしまうと他の生活に不可欠な事を疎かにしていまう悪い癖がある。そして、一旦研究題材を決めると外に出なくなる。人付き合いが苦手で出不精でもあるから私が強引に引っ張って外に出すようにしている。たまに私はフィーの世話係なのでは無いだろうかと思う時もある。
一通り、辺りを探して生け贄が見付からなかったのか、大きな溜め息をついて不機嫌そうな顔を隠しもしないで私に視線を戻した。
「それで?今度は何処行きたいんですか?」
「美人の看板娘さんがいる宿屋なんだけどね。食べた事がない料理を食べられるそうなんだ。行ってみたいな…」
そう呟きながらフィーをチラチラと流し目で窺うと冷たい視線が帰って来た。おかしいな。普通、私のこの視線でキャーキャー言うんだけどな?女性が…成る程、フィーは男だから私の流し目が通用しないんだな。
蔑む視線を送ってくるフィーに一応私は次期国王なのだと言いたい。そんなフィーは一つ深い深い溜め息をついた。
「分かりました。ご一緒しましょう。僕の予定はこの後で空いてます」
ふむっと今後の予定を思い出す。この後は、執務の残りと周辺国への訪問の準備と宰相の御令嬢とのお茶会だったな。
執務の方は私が居なくても大丈夫だろう。補佐が優秀だからな。ただ、最近仕事量が増えたので涙目で私を見てくるんだけど…彼なら多少頑張ればなんとかなる…筈だ。
準備も周囲の者達が率先して準備してくれているから私は最終確認だけしてれば良いし、宰相の御令嬢とのお茶会は、出なくて良いだろう。面倒だ。何度か会った事があるが、あれは駄目だな。頭が無いし、話の内容も無い。これでは王妃には相応しくない。問題無い、と判断し、フィーにニッコリ笑いながら返答する。
「私もその時間は空いている」
「間がありましたけど?本当に大丈夫なんですか?」
呼んでいただきありがとうございます。




