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黄昏校舎に怪人を  作者: 上山烏頭
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放課後の怪人

「烏哭」で登場したコンビ早瀬志帆と空木要が引き続き登場する短編の第二弾です。今回も始めたからにはきちんと完結できるように頑張ります。

 学校で怪人を目撃した。


 黒いマントに黒い帽子、顔にはセルロイドの白い仮面という、何とも古色蒼然とした、ともすれば馬鹿馬鹿しいとしか言い様のないスタイルの人間が不意に、目の前に出現したのだ。


 そんな自分の好きな、懐かしの探偵小説じみた事態にいざ遭遇したとして、その正しいリアクションの仕方は、はたしてどのようなものだろうか。


 早瀬志帆は、その不意に訪れた瞬間に対して、もちろん特にこれといった反応を示すこともなく、ただボンヤリと口を開けたまま固まるしかなかった。


 それに遭遇するにあたって、なんらかの前兆があったということは特にない。


 時刻は黄昏の中にあった。一日の授業が終わり、どこか弛緩した空気が流れているような放課後。間の抜けた金管楽器の音を聞きながら、練習後の自主練としてのジョギングをしていた。


 志帆が所属する、私立四つ谷高校硬式女子テニス部は、全学年含めて十人ちょっと。しかもその大半が幽霊部員ときている。今日出ていたのも六人という体たらくで、そのあまりやる気のない同好会めいた部は、校舎の隅に申し訳程度に設置されたコートで、申し訳程度に練習している。


 志帆自身、そんなに練習熱心というわけではないが、いちおう個人の大会も近いことだし、ということで、曲りなりにでも部活に出てきている人間としてそれなりの練習をこなすと、それが終わった後に、ひとり自主練めいたことをしている。と、云っても学校の中や周りを走ったり、素振りをする程度のことだが。


「あー、こんなんで大丈夫なのかな」


 ついつい出てくる独り言だが、本当に不安に思っているのか、自分でもよく分からない。志帆としては、悲惨なことにならなければそれでいい。強くなりたいというよりは、ただラケットを振るのが好きなのだ。下手の横好き、というほど熱心ではないにせよ。


 いっかな上達する気配のないブラバン部の演奏に親近感を感じながら、走るいつものコースはやがて、古いプレハブ小屋めいた建物――旧部活棟に向かい、その裏手に志帆は足を進める。


 そして、建物の角を曲がった途端、ヒャっ、というどこか引き攣った悲鳴にぶつかった。

 志帆自身もいきなりのことに一瞬固まるが、目の前の少女は志帆以上にびっくりしたらしく、形のいい小さな口をパクパクさせて体を硬直させている。


 相手の少し過剰な反応に、少々戸惑うようにして志帆は少女を見つめた。髪は肩に届くぐらいの志帆よりもう少し長いサイズ。どこか幼い顔立ちに思わず下級生かと思ったが、来ている制服のタイがブルーなことから同じ二年生であることが分かる。色素の薄い感じの肌は、怯えのせいなのか少し青白いような気がする。


「どうしたの?」


 自分がよっぽど不機嫌な顔でもしていたんだろうか、そんな風にいぶかしむ志帆に、少女はただ黙って訴える様に腕をゆるゆると挙げる。それにつられるようにして、志帆の視線は彼女の伸びてゆく細い指先のさす方へと向かっていく。小さな窓の向こう、狭くてなんだか雑多とした部屋の暗がりを纏うようにして、そいつは立っていた。


 そして志帆は目撃するのだ。怪人、としか言いようのない、不審極まりない人影を。


「え……え、なに……」


 何それ――。志帆はただボンヤリとそう思った。黒い帽子にマントを羽織り、キューっと三日月に似た口元が笑いの形を作る、白いセルロイド製らしき仮面。由緒正しき怪人スタイルとでもいえばいいのか、そんな人物がまさか目の前に現れるとは。しかし、その時は探偵小説云々と思考を巡らせるような余裕はなかった。


 怪人の足元には人が転がっていた。男子生徒が、足を窓側の志帆たちの方へ向けてぐんなりとした塊になっていたのだ。背中には何か棒状のものが突き出ていて、その突起物からひどく禍々しい赤が――赤い色をした非日常性が広がっているようだった。


「人殺し……」


 聞こえるはずのない志帆のつぶやきに反応するようにして、怪人は窓のほうに近づく。思わず志帆は身構え、息をのみながらも、隣で同じように佇む少女の前に出る。


 しかし、窓の向こうで怪人がしたことは、志帆の鼻先でカーテンを閉めただけだった。色あせた芥子色のカーテンが窓を覆い、突然出現した奇妙な死の劇場は、同じようにして文字通り唐突に幕を閉じた。


 逃げる気か――。怪人が視界から消え、金縛りから解けたようになった志帆は、まずそう思った。そして、それに呼応するように体が動く。とっさに窓に手をかけてみたが、クレッセント錠が下りていて動かなかった。


「ドアの方から逃げるみたいだけど、一応、ここで見張っててくれる? 遠くから様子を見てるだけでいいし、いざとなったら逃げていいから」


 志帆の剣幕にただ機械的に頷いているのが明らかだったが、そう少女に言い残すと、志帆は旧部活棟への最寄りの入口――裏に回る前に通り過ぎた、南北にのびる建物の北面側へ移動する。


「――って、開かないじゃない」


 ドアを引いてみるものの、鍵がかかっているのか、びくともしない。思わず舌打ちをして、志帆は建物正面から反対側の南面へと走る。


 こちらの鍵は開いていた。中に入ると、細い廊下をはさんで、部屋が左右に五部屋と計十部屋ほど並んでいた。志帆たちが覗いていた窓のある部屋は、一番奥の左手側にある部屋だ。部屋の向かいはトイレになっている。


 廊下を駆け、問題の部屋の扉の前に来てふと、誰もいない廊下に一人、突っ立っていることに少しばかり背筋が寒くなったが、思い切って部屋のドアノブを握る。


「開かない……」


 ノブを回し、押すのだがドアはびくともしない。鍵がかかっているのか、志帆は思いっきり押してみる。抵抗はノブの方というより、なんだか床の方で引っかかっているような感覚がするように感じられた。ドアを叩き、とりあえずガンガン蹴りつける。


「ちょっと、何なんだ、何してる」


 ふと、横から声をかけられる。思わずびくっとして声の方を見ると、隣の部屋からメガネをかけた少年が、不審げな顔をのぞかせていた。


「あ、あの、その、中に怪人がというか、不審な人がその……」


 自分でも滑稽なほどしどろもどろになる志帆。見た光景があまりにもなものなので、口にするとなおさら滑稽な話にしかならない。


「だから、し、死体が……人が中で死んでるみたいなんです」


「マジ?」


 死体という言葉にメガネの少年はぎょっとしたように目を見開くと、部室から出てきて、志帆と代わってノブに手をかけ、部屋のドアを押したり引いたりする。


「何か引っかかってるのか……」


「宮本、どうしたんだよ」


 また一人廊下の向こうがわから、志帆たちを見咎めたのか、また一人少年がやってきた。彼について志帆は名前を知っていた。生徒会長の望月海斗だ。人懐っこい感じの三年生は、志帆から事情を聴くと、


「とりあえず、ここをぶち破ろう。そんなに頑丈な扉じゃないだろから」


 そうして、了解、と頷いたメガネの少年と一緒に、ドアに体当たりを食らわせはじめた。扉は安っぽいとはいえ、意外と強情な抵抗を続けた。やはり床下に何か挟まっているようで、それが少し厄介なストッパーになっているようだった。やがて蝶番部分をべりべり引きはがし、部屋側に扉をそのまま押し倒すようにして、扉は開かれた。


 それまでに、部室の各部屋から生徒が何事かと出てきていて、部屋の前には志帆を含めて六、七人ほどになっていた。


 押し開かれた部屋の中は薄暗かったものの、四畳ほどの室内の中央ほどに、倒れた男子生徒がはっきりと確認できた。


「ちょっと待って。みんなそこで待っててくれ」


 望月は、部屋を覗き込もうとする生徒たちを押し留めると、ひとり、部屋の中へと入っていき、慎重な手つきで倒れた生徒を検めていく。


「どうなんですか……。あの、やっぱり……」

志帆が恐る恐るといった風に望月の背中へ問いかける。


「死んでる……」


 望月の短い言葉に、居合わせた全員がざわつく。

ホントかよ、あれ、森田じゃね? という声が上がるが、望月はそれに応えず、窓の方へ向かうとカーテンを一気に引く。光がさっと室内に入り、入口に向けられた死体の顔がはっきりと見えた。目を見開いたままの少年の死に顔は、その死の姿をより鮮明にして、志帆はその青白い顔から――虚ろな視線から目をそらす。周りのざわめきもより大きくなる。


窓の前に立つ望月はハンカチを取り出すと、クレッセント錠を回転させ、窓を開けた。そして外へ顔をのぞかせると、少し驚いたような声を上げた。


「あれ、なんだ、さっきの騒いでた女子が言ってたのは的場のことか。そこでじっとしてたのかよ。とりあえず、こっちに来てくれ」


 そういって、望月は窓から体を離した。それから部屋の外から遠巻きにしていた志帆を含む生徒たちの前に出てくると、

「警察に連絡しなきゃいけないけど、とりあえず、先生を呼んできてくれないか」


 望月の言葉にこたえて、男子生徒が一人駆け出して行った。


「それから君、現場はとりあえず荒らさないように」


 望月に釘を刺されるように言われ、入口から部屋の中を首を突っ込むようにして眺めまわしていた志帆は、先生にとがめられた時のように微妙な苦笑いめいたものを浮かべつつも、どうしても気になる気持ちを抑えられず


「あの、誰もいませんでしたよね……」

「それは見ての通り、誰もいないだろう?」


逆に問い返され、しかし、それは確かにそうなので志帆は頷くしかない。


 部屋の中は、どうやら物置らしく、ものが雑然と置いてあったが、人が隠れるようなスペースが特にあるわけではなかった。


「なんだっけ、怪人がいたって話だったっけか?」


 横からどこかにやにやしたような顔で口を挟んできたのは、隣の部屋から顔を出したメガネの生徒、宮本隆だった。


「ほ、本当なんですから! 部屋の中に黒い帽子とマントで仮面をした人がいたんですよ……あ、確か的場さん……ですよね。――いましたよね、仮面付けた変な人」


 窓の外から志帆たちのところへやってきた少女の姿を認めると、志帆は味方が来たとばかりに同意を求める。そんな志帆の勢いに少々引き気味になりながらも、的場理沙は確かに部屋の中に仮面をつけた人物がいたことを認めた。


「しかし、窓には鍵がかかってたよ」


 望月の言葉に志帆は頷いて、

「はい。それは私も見ましたよ」


 志帆だってそれは確認済みではある。ただ、だからこそ気になってしょうがないわけなのだ。扉は閉まっていたし……中に誰かが隠れているような気配もない。


 消えたんだろうか――。ふとわいた考えにそんな馬鹿な、という思いがまず湧く。しかし、同時にそれとは違う変な高揚感もまたわきだしているのを志帆ははっきりと感じていた。

ようするに密室殺人、犯人消失、そんな言葉たちが志帆の頭の中でムクムクと膨らみ始めていたのだ。探偵小説好きな志帆としては、放っては置けない要素だ。それが現実に目の前で起こったとあってはなおさらだった。


「あ、見てください。この仮面なんですよ」


 押し倒されたドアの下敷きになっていたらしい。ひしゃげているみたいなセルロイドの仮面の端が、ドアの底辺部分から覗いているのを発見して思わず触りそうになる。そんな調子の志帆を、望月があわてて押し留めた。


 志帆は、すみません、と舌を出しつつ、しかしさらに観察する。どうやらマントも下敷きになっている。ということは、やはりいたのだ。犯人はカーテンを閉めた後、入口から脱いだマントや帽子、仮面やらを放り投げて扉を閉めた……。問題は、いかにしてドアに鍵をかけたのか――。


 シュミレートしていきながら、ドアのロックボルトの受け皿を見て行くが、そこには何の損傷もない。やはり、鍵がかけられていたという訳ではないようだ。そしてやはり、何か、ドア底部と床底部にかまされていたらしい痕跡と、かまぼこ板を削ったような木片を発見する。志帆は満足げに頷くと、だんだん視線が胡散臭そうな色を投げかけつつある望月と、どこか面白がるようにニヤニヤする宮本を、あまり気にかけないようにしつつ、


「あの、死んでいた人……名前読んでましたけど、知っている人なんですか?」

 志帆の質問に、望月は頷いて、

「同じクラスの森田耕一ってやつで、写真部の部員だよ」

「写真部の部室ってどこなんですか?」


 そういって、志帆は廊下に並ぶ部屋を見まわすが、望月は首を振って、

「新聞部の部室はここじゃないよ。ちゃんとした奇麗な新棟の方」

「はあ。じゃあ、なんでまたこんなところに……」

「そりゃまあ、なんでと言われても……」

 こっちが知りたいとばかりに、望月は言いよどむ。森田は背中にナイフを突き立てられていて、詳しいことは分からないにせよ、それが死因であろうことが推察された。しかし、またなんでこんなところで殺されていたのか、ということはよく分からないようだ。


「ここによく出入りしてたりとかしてなかったんですか? 友達がいるとかで」


「まあ、アルバム作成やら、クラブの紹介のためだとかで、写真撮るために出入りはしてたけどね」


 とりあえず、この旧部活棟に入ることはあったようだ。


「そういえば、的場さんは、どうしてあそこにいたの?」


 俯いていた彼女は志帆に尋ねられると、ハッと顔を上げ、上目づかいにぽつぽつと小さな声で説明しだす。


 それによると、彼女は準備のため道具類や使い古しの布切れなどを取りに物置へ行った。しかし、扉があかない。中では人が動く気配がしたので、室内の人のあずかり知らぬ形で扉に何か引っかかっているのかもしれないと中の人に向けて扉を叩くが特に反応がなく、何か変な感じがしたので、とりあえず窓から中をうかがうことにしたら……あとは志帆が知る通りである。


その部屋は旧部活棟にある全部室にとっての物置となっており、結構物が雑然としておかれている。おまけに新棟の演劇部が置き場に困った衣装や小道具を放り込んだりしていたため、いっそう中は雑然としている。今回志帆が目撃した怪人の衣装はそうして演劇部が放り込んでいたものの一つらしい。


「このすぐそばのドアから窓を見に行ったんだよね?」

「あ、はい……」


 建物北面の入口――志帆が入ろうとしたときは鍵が閉まっていたはず。どうやら、カーテンを閉めた後、部屋を出た犯人が閉めたということなんだろう。そう思考を巡らしたところで、志帆はそういえば、と改めて部屋のすぐ隣である北面入口を確認する。


 鍵は開いていた。ということは、志帆が反対側の南口へ向かう間に、まんまと逃げられたというわけか。そして、密室とそこに死体が残されていた……。


「あなた、さっきからなんなの。勝手にケーサツの真似事なんかして、なんのつもり?」


女子生徒の険のある声が志帆に向けられた。長い黒髪で、目鼻立ちのくっきりしたいかにもお姉さんといった少女が、的場をかばうようにすると、志帆を胡乱げなまなざしで睨む。赤いタイをつけた上級生のいやに険のある視線に、志帆はしどろもどろになって、


「あ……すみません……私、ただ探偵小説が好きで、変な格好した人間が閉ざされた部屋の中で消えたみたいなものに現実に遭遇して……それでその、なんというか、ちょっと気になっちゃいまして……」思わず、ずらずらと言い訳じみて並べると、


「ようするに他人事ってわけね」


 そうバッサリと言いきられては言葉を継げず、志帆はアワアワと口を動かしてなんとか、すみません……と言うしかない。


「まあまあ、菱田さん。彼女もそう悪気があっていってるわけじゃないだろう。それに彼女は犯人を目撃したわけだし、事件の当事者ではあるしね」


 ささくれ始めた空気を中和するように、メガネの宮本が、どこかおどけた様な言い方で、その上級生の女生徒――菱田をなだめた。菱田は鼻白んだように宮本を一瞥すると、後は特に何も言うことはなかったが、やはり空気は重くなった。


 まずいな、ちょっと調子に乗りすぎた……。志帆はひやりとしたものを背中に感じつつ、そう思う。本で読むような怪人や密室状況に遭遇して、なんだかはしゃいだような気分でいたのは確かだし、人が死んだのを前にそんな態度を見せていれば、不快感を与えて当然だ。我に返って周りを見てみれば、自分はただの野次馬でしかない。しかし、志帆としては、現実に現れた奇妙な事件性に引きつかれてしまっているのもまた、拭いがたい事実なのだった。


 そんなところへ、ようやく先ほど走っていった生徒の知らせを受けたのだろう、三年生の学年主任である篠原京子教諭――四十過ぎの、小柄で細身の彼女と、大柄な三十代男性教諭――小野寺真がやってきて、事件現場の周りで固まっていた志帆たちは、ようやく固着した時間から解放されることになった。


 それから警察の到着、そして学校はその放課後ののんびりとした空気を一変させた。志帆と的場を含め、旧校舎にいた人間たちは、本校舎の視聴覚室に集められ、順次呼び出される格好で事情聴取を受けた。志帆は、犯人の目撃者の一人として、犯人の背格好や特徴について詳しく事情を聴かれた。しかし、志帆にしても、目撃した時はいきなりのことで動転していたし、じっと観察したわけではないのであまり詳しいことは言えなかった。すでに身長とかもあやふやになっていて、のっぽではないくらいしか言えなくなっていた。結局のところ確実そうなのは、犯人が男子生徒の服を着ていたぐらいのことでしかなかった。


 しかし、あの犯人はどうやって消えたのか。とりあえず、的場と志帆に目撃された後の行動をシミュレートしてみる。犯人はカーテンを閉め、ドアから外に出ると、旧部活棟北面入口の鍵を閉める。そのあと志帆が南側へ回り込んでいる間に何らかのトリックを使い、ドアの向こう側からドア下に木片を噛ませて開かないようにすると、北面入口の鍵を開けてそこから出て行った……ということだろうか。


 そうだとして、では、犯人が密室を作る意味とはなんなのか。この場合、一番考えられることは時間稼ぎだろう。扉の前に足止めしておいて、悠々と旧部活棟から立ち去った――そういうことなのか。だとすると、犯人をそこから想像することはより広範囲の材料が必要になりそうだが……。


 そもそも犯人はなんであんな格好をしていたのか。演劇部がやる変なスリラーじゃあるまいし、あんな見るからに怪しい変装をして被害者の前に出る必要が犯人にあったのか、それもよく分からない。


 あの娘だったら、どう考えるだろうか……。ふと、ある少女の顔が浮かび、とりあえず後で話を聞いてみるか、という思いがわいた。


 あわよくば捜査官から情報を……という志帆の思惑は半ば予想してはいたものの甘く、なんというか、得たい情報は得られず、どっちかというと聞きたくなかった情報――密室についてのがっかりするような謎解きを聞かされて、しかもそのあんまりなチープさに、志帆は脱力するあまりそれからのことはあまりよく覚えていないのだった。


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