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005.創造主、再会する

 ぼふん、という間抜けな音が周囲を支配した。私の身体は、台座の上で静かに燃えていた青い火に包まれる。


 縁から炙られはじめた服の裾が生き物のように動き、そして止まった。熱さはすぐに、温かく馴染み深い感覚へと変化していく。


 目に見えない鎖が下から這い上がり巻きついてきたように、身動きが取れなくなった。だが、それすら懐かしいと感じてしまう。


 伝わってきたのは、戸惑いと混乱。


 私が口を開く寸前、火は大きく燃えあがり、巻き上がった。行き先は私の後ろ。

 天井から降り注ぐ鈍い光に吸い込まれるように、火は勢いを増して高く高く育つ。


 私は今起こっている全ての事を思考から押し出し、口を開けてそれを眺めた。とても綺麗だ。


 その火に見とれていると、後ろで何かが破裂するような音。気がつけば青い火は、私の身体に触れる位置から遠ざかっていた。


 振り向いて、そして現状を思い出した。


 私が振り向いた時にはもう、あの不愉快な不定形は何処にも居なかった。火があれを管理区へ帰したのか、或いは逃げてしまったのかは今の私には判断がつかない。


 私はようやく周りを確認する余裕ができた。

 ここは、階段の上にある台座以外には何もない、真白な大部屋のようだ。管理区とハコニワの中間に作った、物を食べるための部屋に似ている。だが、明るさは全く違う。


 この部屋は天井以外に明かりを取るための窓はないようで、部屋全体が薄暗い。


 辺りはしんと静まり返った。


 台座から続く階段の下、アーネスが床に転がっているのが見える。


「生きているかい」


 返事は無い……その声に答えられるほど余裕のあるものはいないようだ。

 ケムナは馬のそばで、そしておそらく他の女児達は馬車の中で沈黙している。あれだけ派手に倒れたのだから、怪我をしている者もいるだろう。


 私達が入って来た方に目を向けると、部屋の出入り口を塞ぐように火が揺らめいていた。そのさらに向こうから、人々の喧騒が聞こえてくる。


 火のそばにいないせいか、先ほど僅かに流れ込んできた感覚が途切れていた。


 私は立ち上がって、そして小さく声を上げてしまった。足を負傷したようだ。不便なことこの上無い。が、しかし、動けないこともない。


 私は台座を、階段を下りて、頼りなげに揺らめく火の前に立った。火の中で何かが一緒に燃えているのか、火の色が濁っており、向こう側は見えない。


 ありえないものを見ているような驚きようで、フレヤは何も言ってはくれない。


「フレヤ」


 可燃物を焚べた直後のように一旦小さくなった青い火は、少し間をおいて、ぼふん、と大きくなる。いや、本来の大きさに戻ったと言う方が正しいのかもしれない。

 私はフレヤとのリンクを繋げようと火に手をかざし……拒絶された。


 行き所を無くした自分の手が、僅かに揺れる。


「探していたんだ、目が覚めてから。フレヤ……こんなに早く君に会えるとは思わなかった」

『探してた、って』


 火が、大きく震える。


「そうだ。私は探したんだ。目が覚めて、誰もいなかったから驚いたよ」


 私は言葉を切って、反応を待った。すると……すん、という鼻をすするような音が聞こえてきた。


 フレヤに鼻は無い。

 私の真似だ。


 そして、差し出した私の手に巻きつく青い火。

 後悔と、嘆きと、喜びと、色々な感情が直接流れてくる。

 あぁ、リンクが回復したのだ。


『こっちだって待った……探した。ハコニワも、管理区も。でも、見つからなかった。だからもう無い(、、)のかと、何処にも、無いのかと……』


 それでもフレヤは、言葉で伝えてくる。


『親父様、なんだよな?』

「あぁ。こんなこと(リンク)できるものが、この世界にいるのかい。肉の身体に入っているようなのが疑問だけれども」

『親父様』

「うん?」

『おぅっ、うぉやじ、さまぁあぁッ!!!』

「うおおう!!」


 フレヤがこちらに突進し、私は完全に取り込まれたような形になった。熱くはないが、暑苦しい(、、、、)


 私が我が子を撫でようと手を回し……手が止まる。フレヤが私に引っ付いたことで出入り口の向こう側が視界に入ったからだ。

 その際に、青い髪を地面すれすれまで垂らした女児と目が合い、それに気がついた彼女がぼそりと言葉を漏らした。


「な、何がどうなっているのですか」


 良く見れば、向こう側には私よりも更に華美な服を来た男児達が、口を開けて立っていた。


 耳元でフレヤが苦鳴を上げる。


『あ、やばっ。面倒くさいことんなった……どうしよ親父様』


 何が面倒なのか分からない私は、ただただフレヤの言葉に首を傾げるしかなかった。


主人公の攻撃コマンド習得イベントはもう暫くお待ちください。今後、きっとある……はずです。

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