アウリン
靴下に穴が開いている。恥ずかしいという羞恥心よりも先に、手が動いた。穴に人差し指を突っ込む。足の親指と触れ合うはずが、何かぬるぬるとしたモノに人差し指をチョコポッキーのチョコの部分だけを舐め取るといったねちっこい動きで絡め取られた。
驚いて人差し指を穴から抜こうとしたのだが、すさまじい力で逆に靴下の中へと引きずり込まれていく。次第に穴が広がり、人差し指どころから腕を丸々一本吸い込まれる。
体がクの字に折れたわたしは、必死になって助けを呼んだ。都会の喧騒から離れ、田舎の、それも人里離れた森の中にログハウスを建ててほとんど隠居生活である身であることをすっかり失念していた。
助けは来ず、わたしはそのまま靴下の穴の中に消えた。
気が付くと真っ暗闇の中にいた。
いや、一か所だけ、光の漏れている場所がある。距離はありそうだが、あそこから出られるのかもしれない。
わたしは光の射す方へと近づいていった。するとその光の中からナニかが伸びてきた。もしかするとロープの類かもしれない。わたしはここから出たい一心でソレを掴んだ。ソレは激しく抵抗した。わたしは絶対に離すまいと渾身の力でソレを自分の方へと引き寄せた。
やがてふっ、とソレから力が抜けると、支えを失ったわたしはソレと一緒に真っ逆さまに暗闇の中へと落ちて行った。