レアチーズケーキの話。
レアチーズケーキの話。
ある日母は、友人に教えてもらったというレアチーズケーキを作りました。
ホールではありません。母はそれを大きめの保存容器にいれ、冷蔵庫で冷やしました。そうすることで冷蔵庫の場所はとりませんし、暫くは保存出来ます。後で皿に盛り皆で食べました。結構作るのは大変だとは思いましたが、あっさりしたその美味しさに私たちは虜になりました。
暫くして又作ってとお願いしたら自分で作りなさい。レシピあるからと身も蓋もない答えが返ってきました。
作ってわかりました。材料費が割とかかるのです。なので嫁に来てからも滅多に作りません。
ある日、後に旦那様になる彼へプレゼントしようと思いつきました。
蓋つきのカップに入れれば渡しやすいと考えたのです。彼の家族皆で食べてくれたら嬉しいですし、間違いなくこれは美味しいから安心だというのもありました。
季節は春とはいえまだ寒いですし。多少暖かいくらいなら保冷剤があればなんとかなるだろうと、彼と会う前日の夜に作りました。
滅多に作らない以上、家族の分も用意するのは当たり前だと材料も倍用意しました。
次の日の朝、家族の幸せそうな顔を見て、これは彼も喜んでくれるかもと確信しました。私も最後の確認とばかりに食べました。うん、大丈夫だと思いました。
用意もすませ、ドライブに行くというので迎えに来てくれるのを待つ間に、一度外に出ました。
なんという陽気。暖かいのはいいけど、これは駄目だと私は呆然としました。昨日まであんなに肌寒かったというのに。
車に置いておくのは危険だと感じました。レアチーズなのです。柔らかいのです。プレゼントで食中毒とかになったら笑えません。
私は彼にレアチーズケーキを渡すのを諦めました。
まあ彼に「作ってくるよ」などと期待させることは言ってはいないし、私はそのケーキを無かったことにしました。
冷静に考えれば、彼が帰る時渡せばよかったのです。が、すぐ家に帰るとは限りませんし、弟たちに食べていいとがっかりしたまま言ってしまった以上、全ては闇に葬り去るしかありませんでした。
さて、リベンジです。
結婚後、旦那様に食べたいか聞きました。勿論と言うので作りました。
出来上がり、上に少しだけブルーベリージャムをのせます。
ふわふわなチーズケーキにブルーベリージャムはなんと合うのでしょうか。このジャムは本当に万能だなと思いつつ、旦那様を見ます。
あっと言う間に無くなっていました。
予想通り、気に入ってくれたのだと嬉しくなりました。