紅茶ゼリーの話。
紅茶ゼリーの話。
私が初めて作ったお菓子は『紅茶ゼリー』です。小学生の私は母が作ったのを見た時に、こんなに簡単にお菓子が作れるのかと衝撃をうけました。
材料は水、紅茶、砂糖、ゼラチンのみ。
作り方は簡単です。
鍋でお湯を沸かして濃いめの紅茶を作ります。かなり甘いなというくらい砂糖を入れます。水でふやかしたゼラチンも入れ、溶けたら型に流します。少しさめたら冷蔵庫で二・三時間冷やし固めます。
まさにシンプルなものです。甘くないと固まった時、ただ苦い紅茶の味しかしません。
お菓子は誰でも作れるのだとその時知りました。変なことを言うと思われても仕方がありません。ですが、市販されているものに近い菓子を作れるという事実は、私に感動と驚きをもたらしました。
宝石のような深紅の色合い。ぷるんぷるんな大人の味。全てがなんとも面白いのです。
ある日、友達がお菓子を持ち寄ってパーティーしようと言いました。私は初めて作った紅茶ゼリーを持参したのですが、悲しいことに友達には不評でした。
光にかざせば深紅でも、見た目は茶色っぽいゼリー。生クリームでホイップされていればともかく、そんな知識もない初心者が作った、ただのゼリーを喜んで食べてくれはしないのです。
おかしい。こんなに美味しいのに。私は余ったそれを少しがっかりしたまま持ち帰りました。まさか誰も喜んでくれないとは。
母は、なんとなく私の表情で何があったのか察したのでしょう。
考えてみれば私がこれを持っていくと言った時、母はやんわりと止めようとしたのです。普通のお菓子がいいんじゃないの、と。
しかし私は、初めて作ったゼリーを皆にも食べてもらいたいという気持ちを止めることは出来ませんでした。
母は私のゼリーを受け取り食べてくれました。
「もうちょっと砂糖を入れた方がよかったかな。でも美味しいよ」
私はその言葉に救われたような気がしたのです。
甘く、だけど少し苦いこのゼリーは私の大切な思い出なのです。
ちなみに旦那様には食べさせてはいません。一種のトラウマになってしまったようなのです。もう少し工夫すればきっと、美味しいよと言って貰えるかもしれません。
結局、お菓子は見た目と味わいが大事なのでしょう。味だけでは駄目なのかもしれませんね。
……結構美味しいのにな。