表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/30

19



「え?ス、キ?……俺、悪魔、なんだけど…。」


“あり得ない”。

悪魔の顔には、そう書かれていた。


わかっていたけど、やはりズキリと痛む。

もちろん、そんな痛みは無視する。



「…だから?」


悪魔を好きになっちゃいけないわけ?



「……ぇ、えーっと。」


しどろもどろしながら、何処かおかしな様子の悪魔。

どうやら、俺の告白がまともに頭に入って来てないようだ。


向き合う気が無いなら、さっさとフってくんないかな。

…真面目に考えて、なんてわがまま言わないからさ。



しばらく、と言っても3分ほど、待ってみたが、一向に変化が見られない。

悪魔は、壁から壁へと視線を移しては、ごにょごにょと考えている。…俺の方は見ない。




「…わかったから、もういいや。」


俺は、悪魔にそう言った。


「…え?」


驚いたような顔して、俺の方をやっと見た悪魔。


「…何、が?」


なんて聞いてくる。



わかったのは、お前が俺を好きは疎か、そういう対象で見てくれる気もないって事と。

思っていた以上に俺は脆いみたいだから、ハッキリと“嫌い”なんて言われたら、きっともっとオカシクなるって事。




「ぁ、あのさ。……俺は自分の気持ちを中々知る事が出来なかったんだけどさ。いや、気づけなかったって言うのかな。……今、やっとわかったんだ。しっかりと“君”を見て。」


そう言う悪魔の顔は、凄く真面目で、真剣。

その美しい瞳は、再び冷静さを取り戻していた。


反比例するように、今度は俺の瞳が揺れる。



「…俺は、君の事が…」


一語一語噛みしめるように、刻み込むように、逃げられないように、ゆっくり、しっかりと言う悪魔。


悪魔が何を言おうとしているか、なんてわざわざ口に出してもらわなくてもわかる。



聞きたくない!


“自分”を守るその言葉は、声にならず、悪魔の声を遮る事は出来なかった。

耳を塞ぐ事も、その場から逃げる事も出来ず、俺の体は静かに悪魔の言葉を聞くしかなかった。




「…好きっ……だ、よ。」




悪魔が告げた、その言葉は、耳に飛び込んで来たものの、すんなりと頭にに入る事はなかった。


「…ぁ、え?」



す…………き…?


スキって、好き?魚とかじゃなくて?




嘘だ!

あり得ないっ。


だって、悪魔は…。

でも、悪魔は…。

だから、悪魔は…。


俺は、軽いパニックになっていた。まぁ、アタリマエの事。




「気づくの遅くてごめんね。」


と、悪魔は言ったけど、やっぱり俺は悪魔が口にした“好き”を信じられない。


すっかり、捻くれてしまった俺は、疑い深くなっていて。

信じられない。信じたくない。



捻くれた頭で少し考えて、導き出した結論は……。


「…“好き”の意味知らないでしょ。」



俺は、それだけ言うと、また泣き出してしまった。

今度は、ポロポロと小さく。


苦しくて、苦しくて。

本気の“嫌い”と、嘘の“好き”って、どっちが辛いんだろう、なんて思った。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ