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暗くて静かで、安心する。

俺は、上手く死ねたのかな?



なんだか、酷く体が揺れている。頭がグラングランする。


誰かに揺さぶられてる?

誰だよ。


もう終わりにしたいのに。



俺は、激しく揺さぶられるのが鬱陶しかったから、薄っすらと目を開けた。


目の前に、どアップで映ったのはあの悪魔の顔で…。背景は、もはや見慣れた、あの廃屋。

どうやら、ここは死後の世界ではないようだ。



「…大丈夫?」


悪魔は、本当に心配そうにそう言った。


“心配そう”に言っているだけで、“心配してる”なんて知らない。どうでもいい。本当、どうでもいいから。



てか、大丈夫って、俺の頭が?

あんなに頭に押し付けて発砲したのに、何、死にそびれてるんだって事?



「…。」


俺は捻くれた解釈をし、黙る。



最後に悪魔に言った言葉。


“黙れ。聞きたくない”


あれは、半分…いやほぼ俺に向けて言った言葉だ。


…そんな自分の首を締めるような考え聞きたくないから。



悪魔は、いろいろと自己嫌悪に陥っている俺を見て、悪魔は何処か儚げで辛そうな微笑みを浮かべた。


「…その銃。対悪魔用とは言え、人間にも効くんじゃないかって、ひやっとした。…キミは、まだ人間なんだ。悪魔じゃない。」



…この銃じゃ、俺は死ねない。



悪魔は、俺に言う。


「あのさ。俺を殺して?…悪魔は、自殺出来ないんだ。……それに、キミはせっかく生き残ったんだから、死ぬなんてもったいないでしょ?」



「…嫌だ。」


俺の口は勝手に動いていた。

まるで子供のように、思ったままを口にする。…人間は追い詰められると幼児化するのだろうか。



「…なんで?」


今度は、悪魔が問う番だった。


俺は答えない。

考えが今一まとまらないのだ。


…なんて、嘘。

もうとっくに出てる。


“なんで?”と、問われてすぐに言ってしまいそうだった。



でも、悪魔はこんなだけど、見ず知らずの人間の俺を助けてくれたと言う事実がある。

悪魔が居たからこそ、俺は今生きている。


だから、こんな事を言うのは本当にあり得ないんだ。



俺が今願っている事は願っちゃいけない事なんだ。



それでも、何を差し置いてもソレが勝つから。


俺は悪魔が助けてくれた事への感謝とか諸諸(もろもろ)を端へと追いやる。



「…随分、契約書に利己的な事書いてくれたよね。それで、俺がどんな思いをするかも考えずにさ。」


悪魔は俯く。


「あの男から俺を助けたのも、一種のエゴだよね?」


「……。」



「…沈黙は肯定とみなすよけど、いいよね?」


「……。」


俺の言い方はどこまでも鋭く、悪魔の肩は心無しか震えているように見えた。


心の何処かが、ズキリとした気がするけど、こんなになってしまった俺に、心なんてもう有るはずが無い、あって良いはずが無いから、きっと錯覚なんだ。



「少しでも“悪い”と、思っているのなら…だけど、俺の“願い”聞いてくれるかな?」


「……。」


悪魔は、無言で俯いたままだったが、俺の話を聞いて、左右にだらんとぶら下がっていた両手の握り拳にギュッと力が入ったのが見えた。


俺は、何故か普通の人間と同じようにトクントクンと拍動を続ける心臓の音を聞きながら、気を鎮めると“願い”を口にした。


「…じゃあさ。……俺を殺してよ。」




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