15
とたんに、沈黙が訪れた。
8割型、俺のせいだろう。俺が何とも言えないような、ドス黒い雰囲気を出しているからだ。
…でも、俺をそうしたのは悪魔だ。
突然態度が豹変した俺を、悪魔は怯えたように見る。
へぇ。怖いんだ…?
苛立ちで、どうにかなりそうだった。
思わせぶりな態度とか、行動をしといて、“好き”じゃないとか……マジあり得ないっ。
悪魔が俺を“好き”じゃなかった事に怒るなんて、傲慢だし滑稽だ。
嗤ったら良いんじゃないかな?きっと、楽しいよ?
音にしなければ、聞こえないとわかっていながら、俺は心の中で悪魔に言った。
俺は、静かに拳銃を構えた。
銃口は、もちろん悪魔に向けた。
悪魔の目は、死を前に怯え、震える。
綺麗な目から出た、涙と言う名の体液が頬を伝う。
「…悪魔って」
俺は、光の無い目で悪魔を真っ直ぐ見ながら、沈黙を破る。
銃口は悪魔に向けたまま。
「こんな銃で死ぬの?」
悪魔は、更に涙を溢れさせながらも、無理にニコリと笑い、
「うん。それ、対悪魔用だから。」
と、答えた。
何を笑っているのだろう。怯えてたんじゃない訳?
俺は、興味無さげに
「ふーん。」
と、言った。
正直、もうどうでも良かった。
全て、壊してしまいたかった。
あの男に追いかけられて、俺は自分を見失った。
悪魔と賭けをして、俺は自分を捨てた。
あの男を殺して、俺は精神を壊した。
悪魔との契約で、俺は…。
誰が悪いとか言う話じゃない。
俺が素直にあの男に殺されていれば、ハッピーエンドだったんだ。
…俺が道を間違えた。
俺が死んでいれば、死ぬのは俺1人だったんだ。
「…ごめんね。」
悪魔は、俺に言った。
「は?」
その意味のわからない謝罪は、俺の神経を逆なでした。
「…俺の存在がキミの手を汚させた。」
…意味がわからない。俺の頭がおかしかった。それだけでしょ?
死ぬ運命から逆らったから、たくさん代償として失った。そうでしょ?
「俺を殺せば契約は破棄って言うのも、キミが手を汚すのを促したみたいになっているし…。本当に、俺は…っ。」
「もう、いい。」
俺は悪魔の言葉は遮る。
そう言うのいらない。思わせぶりな事して期待させるのは、やめてほしい。
「最後くらい喋らせて?お願いだからっ。」
悪魔は、切羽詰まった顔でそう言ってきた。
俺は、
「黙れ。聞きたくない。」
と、突き放すように、酷く冷たく言った。
そして、俺は悪魔の言葉なんか待たずに引き金を引いた。
…銃口を自分の頭に押し当てて。
パァンッと、乾いた音が凄く遠くで聞こえた気がした。