Scene 5 事件明朝
『…というわけで昨晩起きたこの殺人事件なんですが、何らかの事情を知っていると思われますこのアパートの住人が昨夜から行方不明となっています。近所の人の話では、このアパートには人が住んでいるような感じはなかったということで、被害者は身元がまだ不明の男性とこのアパートの管理人という今回のこの事件、不思議なことにどの部屋にも表札がなく、住人の情報書類なども管理人室からは見つかりませんでした。警察は依然捜査中とのことです。とりあえず現場からは以上…』
「嘘…?アッちゃんのアパートじゃない!大変、コーヒー入れてる場合じゃないよ!ちょっと、所長ぉ!起きてくださいよー。」
私は慌てて二階の所長室まで駆け込む。
所長はソファーで熟睡していた。
「所長!おきて!テレビ!ニュース、ニュース見て!」
「ちょっと…。なにかね、里見くん。朝からうるさくしないでよぉ。昨日徹夜だったんだからさ…」
「いいから一階にきてテレビ見てください!早く!」
私は寝ぼけてる社長の手をひき、一階キッチンルームへ下りる。
「ほら、見て!アッちゃんのアパートで殺人事件なの!」
所長が目を丸くした。
「なんだって!?」
所長はテレビを食い入るように見ている。
事務所の電話が鳴った。
「もしもし、松葉興信所ですが、あ!」
所長はまだテレビにくぎづけだ。
『…というわけで、まあ世の中じゃ殺人事件も毎日起きていますね。気をつけたいものです。続きまして、スクープ!ついにあの大物スターが破局です。』
「篤くん、大丈夫か…?」
所長がテレビに夢中になっていた。
私がとった電話の相手はアッちゃんだった。
「…アッちゃん!大丈夫?今どこにいるの!」
「みさと、松葉さんに代わってもらえるか?」
「うん、所長!アッちゃんから電話ですぅ!所長に代わってって!」
私は所長に受話器を渡した。
「もしもし?篤くんですか?」
みさとから所長に電話が代わった。繋がった。
よかった。
とっさだったが、名刺を携帯の側に置いていたので忘れずにすんだ。
「はい。松葉さん、…なにがなんだかまだ解らないですよ。なんでこんな目にあわなきゃいけないのか…」
「とりあえず無事だったようだね、よかった。テレビじゃニュースで結構大騒ぎしてるよ。とりあえず今、何処にいるんだい?」
そういえば無我夢中で走ってそのまま眠るように寝たんだっけ。
ここは確か…、内斉川だ。
なんどか遠出の散歩で来たことがある。
「内斉川です。橋の下にいます。」
「内斉川か、わかった。里見くんに迎えに行かせよう。」
携帯のアラーム音がなる。まずい、バッテリーがない。
「あ、松葉さん。携帯もうバッテリーやばいんで。あと、できれば着替え欲しいんですけど。慌てて出て来たので。」
「わかった。篤くんはなるべく人目に付かないように気をつけてね。」
「はい。あの。」
疑問があった。
「なんだね?」
「テレビで騒いでたってことは、事件なんですか?」
「篤くん、キミ、現場にいたのに何もしらないのかい?連続殺…」
「え?もしもし!」
携帯の充電がなくなってしまった。
所長の最後の言葉、連続殺人のことか?
殺人?あの男のひと死んだのか?
事故じゃないのはなんとなくわかった。
気になるのは連続ということ。
誰が殺された?
何が起きた?
なんで、こんなことになった?
落ち着け。
とりあえず、みさとが来てくれるまで少しやすもう。