Scene 2 再会?
どうもみたことがある。
その女はこっちが気付いたのを確認すると、微笑みながら俺のテーブルの真向かいに座った。
誰だっけ?なんとなく覚えている気がする。たしか…。
「キミ、稲本クン…でしょ?」
「えーっと…。」
「アッちゃんでしょ?ボクの事、忘れた?覚えてない?」
喉まで出かかってる。
綺麗な金色の長い髪に、吸い込まれそうな綺麗な目。
だけど、なんか俺の覚えてる子とはちょっと違う。
「そっかぁ…。もう20年たつもんね。忘れちゃうか。しょうがない、一応連絡しないとね。」
彼女は携帯を取り出し電話をかけた。
…20年?俺がまだ小学生の頃か?
「もしもーし。所長ですかぁ?今駅裏のエデンです。ええ、アッちゃん見つけたんで…、え?だからぁ…」
所長?
なんとなくだが思い出してきた。
「…ってことだから、早く来てね。ボクお金持って来るの忘れて、はいはいわかりました。だからお願い。うん、じゃあね。」
「あのさ?」
「ん?」
「キミ、もしかして…」
「お待たせいたしました。アイスティーとサンドイッチです。」
ウエイトレスがいつの間にかそばに来ていた。
おいおい、タイミングワリイよ。
何食わぬ顔でウエイトレスは続ける。
「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
彼女がこっちみて笑う。
「あ、すみませーん。あたしにも同じのお願いします。伝票はこのひとので。」
は?
「かしこまりました。」
おいおい。
彼女はこっちに手を合わせて笑う。
「…ごち!」
はあ?
俺はとっさに返した。
「あのさ、ごち!じゃねーっつうの!」
「電話聞いてなかった?ボク今、持ち合わせないんだ。だからアッちゃんのおごりってことで、ね?」
なんじゃそりゃ?
「あのさ、なんで俺がおごんなきゃいけないのさ?」
「わかったよ、じゃあ…後でカラダで払うから…。おごって…。」
やばい、馴れ馴れしいが可愛い子にウルウルされると弱い。
いかん!ペースに騙されるな、俺。
「俺だってそんな持ち合わせねーぞ?だから駄目だ。」
「しっかし今日は暑いねぇ。いい天気だな〜。」
そうきたか。とぼけるか。
「そのサンドイッチ、美味しい?どれどれ。」
彼女は俺のサンドイッチに手をつけた。
「ん〜、んぐんぐ。あー、なんか普通の味。頼まなきゃよかったかな?」
「そうだな、みさと。」
「へ?」
彼女はキョトンとしてる。
「おまえ、みさとだろ?松葉みさと。小学生んとき同じクラスだった。」
彼女はニコッと笑った。
「ちがうよ。」
「へ?」
今度は俺がキョトンとしてしまった。
「じゃあ、誰だよ?」
「誰でしょう?」
「はあ?」
「ボク、誰なんだろね?」
「…おい。」
「何?」
「何?じゃね…」
「お待たせいたしました。アイスティーとサンドイッチです。」
またタイミングが悪い。
なんだこのウエイトレス。
まあ、いいや。帰ろう。
「すんません、勘定ここ置いていきます。釣りいらないんで。」
「え?アッちゃん帰るの?なんで?もう少しいようよ。」
「ごちそうさま、ここ置いとくから。」
俺はウエイトレスに話すと財布から千円をテーブルに置き、そのまま店を出た。