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あいたい  作者: 久乃☆
1/2

前編

いつものことですが^^;

何も考えずに書いてみました。読み返して涙してる自分www

バカだ~ww

新しいママが来た。


新しいママは、大きなクマのぬいぐるみを持ってきた。



1.ともだち



 ママは病院へ行ったまま帰ってこなかった。いつも優しくて、私にいろんな物語を聞かせてくれたママ。大好きだったママ。


 どんなに泣いても、二度と帰ってこなかった。



 お正月が三回、暑い夏が三回まわってきたとき、その人は大きなぬいぐるみを持ってやってきた。


 パパは、新しいママだと言った。寂しかった私は、新しいママにだっこされたくて胸に飛び込んだ。


 新しいママは、あっという間に私の優しいママになった。

 

 そして、その日から大きなクマのぬいぐるみは、大事なともだちになった。

 


 嬉しい時も、哀しい時も、寂しい時も、いつでも一緒だった。


 ママは、クマのぬいぐるみを前にしてままごとをしている私に、温かな笑顔を向けてくれた。



 大好きだったママが一人。


 大好きなママが一人。



 小学校に入ると、クマのぬいぐるみと話す時間が減った。


 それでも、毎晩ぬいぐるみと寝るのは変わらなかった。

 


 ぬいぐるみはいつの間にか、名前がついていた。今思えば、なぜそんな名前を付けたのか分からないが、とても気に入っていた。



 その名は、クママ。




 学校でイジメにあった。


 先生に怒られた。


 ママに叱られた。


 妹ができた。ママが遠くなった。



 いつでも私は一人になった。



 それでもクママがそばにいてくれた。そして優しくこう言った。




―――大丈夫。大丈夫。


     ママは君が大好きだよ―――

 



 小学校の高学年になると、クママの声が聞こえなくなってきた。


 いつでも話し相手になってくれたクママが、単なるぬいぐるみになった。


 でも、私は泣かなかった。


 だって、もともとクママはぬいぐるみだったのだから。




2.思春期



 私が中学年になったころ。




「妹に手がかかるから、せめてお姉ちゃんだけは、しっかりしてね」

 



 それがママの口癖になった。確かに妹は怪獣のようだった。


 小さな子供がこれほど、うるさくて面倒だとは思わなかった。


 私はママに嫌われたくなくて、一生懸命しっかり者の姉を演じた。



 演じ続けた。



 パパもママも、私を褒めた。




「本当に良い子。どこに出しても恥ずかしくない子だわ」


「さすが、パパの子だ」




 でも、二人とも知らないんだ。本当の私はこんなに良い子じゃない。


 もしも、本当のママが生きていたら。私はこれほど頑張ったのだろうか。これほど、よい子を演じる必要があったのだろうか。



 徐々に心が疲れだす。



 ベッド脇に置かれたクママ。


 今では、時々眺めるだけで、触ることもしない。



 だって、これは新しいママがくれたんだもの―――



 親の期待通りに県立高校に合格した。いつでも頑張って、努力して、先生から優等生だと言われた。


 でも、友達は?



 適当に話を合わせる友はいる。


 適当に笑いあえる相手はいる。


 生活するのに、何の支障もない。


 他人からよく思われること、それが大事なんだもの。もしも、悪く思われたら、一瞬にして私は孤独を味わうんだ。


 だから、家と同じ。学校でも、適当に笑顔で人が嫌がる仕事を変わってあげて、適当に毒舌で適当に冗談を言って、適当に笑顔を振りまいて……。


 適当に


 適当に


 適当に




 ある時、ハサミを持ち出した。


 心の中のもやもやをどうすることもできなくて。


 鋭利な鋏は私の心を切り刻めと命令してきた。




 気が付いたら、クママはボロボロになっていた。お腹は切り裂かれ、耳はもぎ取られ、腕は引きちぎられていた。あらゆる個所から綿が飛び出し、きっとどれだけの悲鳴を上げたことだろう。


 しかし、その悲鳴も涙も、私には聞こえない。見えない。感じない。


 心は冷たく、演じ続けることに疲れていた。生きるために演じ、生きていくために口を閉ざしてきた。私はこれほど努力して生きているのに、妹は自由奔放に好き勝手をしているのだ。


 同じ姉妹なのに、どうして私ばかりが我慢しなくてはならないんだ。



 私が、ママの子ではないから……?



 私は、大きくてボロボロになったクマのぬいぐるみを、押し入れの奥へと突っ込むと勢いよく襖を閉めた。


 それを境に、私の中で全てが変わった。


 もう、良い子でいるのはやめよう。私は私なのだから。



 私は


 私でいよう


読んでくださいましてありがとうございました。

続きをすぐにアップするので、後編も宜しくお願いします(^‐^)

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