第八話 魔王様のお願い
「・・・もう魔王様を降したらどうだ?」
スラリルさんが魔王様を抱えたままの私に言う
リオンもこちらを見ている
もう少しお姫様抱っこしていたかったんですけどね
若干残念に思いながら魔王様を降す
「・・助けてくれて礼を言う、アヤメ」
魔王様が私を見ながら礼を言ってきてくれました
少し顔が赤いようです・・・熱でもあるのでしょうか・・・
「いえ、当然のことですからお気になさらずに」
微笑みながら返すと何故か顔をそらされた
一目惚れしてそうそう嫌われてしまったのでしょうか・・・
そう思うと少し落ち込んでしまいます・・・
「アヤメ、私の依頼について話すぞ」
スラリルさんがそう言った
私はもっと魔王様を見ていたかったんですが仕方ないですね・・・
「依頼は魔王様の事についてだ、この姿になってしまわれたのは魔術の失敗からだ」
そうなんですか・・
「魔王様は元々は男性なのだが魔術の失敗で女になってしまわれて
アヤメなら何か知っているかもしれないと思ってな」
心は男性なんですか・・私と似てますね、性転換してしまったところが・・・
心が男性なら好きになっても何の問題もないですよね、お互い性別は反対ですし
でも私は何故こうなってしまったのか分からないんです
お役に立てなくて残念だけれど、私からしたら女性の姿でいて頂いたほうが好都合なんですよね・・
今の私は男ですから・・・
「すみません、私は何故こうなられたのか全然分かりません お役に立てなくて申し訳ありません」
「・・そうか、魔王様どう致しますか?」
「あ・・ああ、余は・・このままでもいいぞ」
「!あれほど嫌がっておられたではないですか・・・まあ理由は少し分かりますが・・・」
「う・・・うるさい!いいと言ったらいいのだ!」
魔王様が真っ赤になりながら言っている
そんな姿も可愛いですね~
「・・アヤメ、魔王様がこう言ってらっしゃるので今日は帰ってもらっていいか?」
「ええ、私は何も出来ませんし本人がよいと言ってらっしゃいますから」
魔王様に会うためにまた来ますけどね
「・・もう帰ってしまうのか?」
魔王様がそう言って寂しそうに呟く
ああ、本当に可愛らしいです
「ええ、今日の所は失礼します」
「~なら余も連れて行ってくれっ」
!魔王様は何を言っているんでしょう
でも、別に私はスズラン堂にはもう一人ぐらい住む余裕ありますし構いませんけど
リオンが反対するかもしれませんし・・・・
好きな人が傍に居てくれるとそりゃ嬉しいですけど・・・
「魔王様、本気ですか?」
スラリルさんが聞く
「本気だっ、どうせこの姿では部屋から出れないのだからいいだろうっ!」
「・・・そうですか、そうですね魔王様はこの城から出た事がありませんし
・・いい機会かもしれませんね」
「アヤメはどうだ?魔王様をスズラン堂に置いてくれるか?」
「アヤメ・・余は駄目か?」
うっ・・魔王様その眼は反則ですよ
うるうるした小動物みたいな眼に弱いんですよ~
「私はかまいませんが、リオンはどうですか?」
「・・僕もかまいませんよ師匠」
リオンが賛成してくれるとは思いませんでした・・・
でも なら大丈夫ですね
「リオンもこう言ってくれたので大丈夫ですよ」
「そうか!余を連れて行ってくれるか!」
魔王様はとっても嬉しそうに顔を輝かせる
「はい、お連れしますよ」
「悪いな、魔王様を頼んだ・・」
「はい、分かりました」
スラリルさんは苦笑しながら私に向かってそう言った
「では、魔王様行きましょうか」
「ああ、余を連れて行ってくれ」
魔王様の手を取りながら話しかける
「スラリルさん、では行きますね」
「ああ、よろしく頼む」
「ええ、わかってます」
私は魔王様とリオンを連れて魔王城を出てスズラン堂への帰り道を進んだ
魔王様との同棲がはじまりま~す