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第17話 室内庭園計画


「室内……庭園ですか?」

「えぇ。昔学園の中にあったの。植物の中には日陰でも綺麗な花を咲かせるものもあってね。お世話もお部屋の中の方が楽だし管理もね? だからダメかな〜と思って」「いえ、問題ありませんが……庭師を新しく雇いましょうか。フィルミーヌ様は暇ではありませんよ?」

「そうなの?」

「えぇ。明日からは普段の学園生活と同様に日中は家庭教師による講義を受けていただきますし、それにお妃教育を含めたマナーのお勉強もしていただきます。おそらく、かなり厳しいスケジュールになるかと」


 忘れていたけれど、そういえば私のために王子が家庭教師を用意してくださると馬車の中で聞いたのを思い出した。学園を途中でやめてここへきたのだから当然かもしれないが、怖い人だったら嫌だな。家庭教師さんなんて初めてだし、どんな人なんだろう?


「うーん、それなんだけど……ジョンさんにご協力お願いできないかしら? やっぱりあの質の土を作れるのは本当に稀有な存在なのよ。あの、私からミレーユさんにお願いするから。ねっ? だめかしら」


 ちょっとだけ、ミレーユさんに恩返ししたい気持ちがあった私はジョンさんが屋敷に入る口実さえあれば、二人がまた昔のように仲良くできるのではないかと思っている。

 だって、ミレーユさんはジョンさんのことをすごく気にかけていたし、ジョンさんだってそのように見えたから。


「また、ミレーユ様のお部屋に?」


 エースは困ったように眉を下げて私を見つめた。エースはもしかしたらミレーユさんが苦手、多分苦手なんだろう。新人時代にミレーユさん相手にたくさん失敗をしたとか?


「侍女の方にでも大丈夫だから伝えていただける? 嫌なら自分で行くわ」

「いえいえ、フィルミーヌ様にご足労いただくわけにはまいりません。さ、少しお待ちくださいね」

「ありがとう、エース。よろしくね」


 私は部屋に一人取り残されると、エースが出ていくのを見守ってからソファーに腰を下ろした。だいぶ、彼と話すことに慣れてきたけれど、やっぱり実家でのびのびと過ごせていた頃とは違う。

 それが、大人になるということなのかもしれないけれど……。

 父と母は元気にしているかしら、たくさん贅沢をしてたくさん美味しいものを楽しめているかしら。そのくらいの約束は守ってくれるわよね、王子様なんですもの。


「何を育てようかなっ、リリーに紫陽花、クリスマスローズ……お手入れもたくさんしたいし楽しみたいな。そうだ、ドライフラワーにして長く楽しむのも素敵」


 思わず大きな独り言が出て自分でもびっくりする。それだけ、暮らしにもなれてきたってことかしら。


「失礼するわね」


 エースかと思って振り返ると、部屋の中に入ってきたのはミレーユさんだった。さっき具合が悪そうだった……いや今も悪そうなのに彼女は笑顔だ。両脇を侍女に支えられながら私の部屋に入ってくるとソファーに座った。私は慌ててブランケットを引っ張り出して彼女に渡す。


「ありがとう、フィルちゃん。急にごめんね」

「いえ、ご体調は大丈夫ですか?」

「うん、大丈夫。でも、エースからお話聞いたらいてもたってもいられなくなったの。あのね、ジョンのことお願いね? ぜひ使ってあげて。4階の空き部屋よね。うん、わかったわ。私も完成したら見にいってもいい?」

「あの、ありがとうございます。ぜひ、綺麗な室内庭園を作りたくて……あれ、エースはどこへ?」

「人の執事を勝手に使ってごめんなさいね。すぐにジョンに伝えてとお願いしちゃった」


 お茶目で可愛らしい笑顔のミレーユさんを見ていると、困惑しながらも命令に従ったであろうエースが思い浮かんだ。ふと、私気になって口にする。


「ミレーユさんとエースってどんな御関係で?」

「そうねぇ。彼が執事を始める前からの知り合いで、一応協力関係にあるってことかしら?」

「協力関係ですか?」

「ま、ままぁその辺はほら。ここは公妾という割と自由な立場の私たちが住んでいるでしょう? エースには色々と間を取り持ってもらってるのよ」

「そうだったんですか、ミレーユさんはお妃にならないのですか?」

「えぇ、なるつもりはないし、王子にもそう伝えているわ。私とルディールは互いに結婚するつもりはない。だから公妾という関係になったの。両親を納得させるためにね。私は、ずっとずっと想ってる人がいるの」


 あぁ、それはジョンさんなんだとすぐにわかった。もしかしたら、それを知って彼女を公妾にしつつジョンさんの帯同を許している王子は人の幸せを考えられる優しい人なのかも、と思ったりもした。

 でも、肝心のジョンさんは身分の差からミレーユさんと距離をとっているし実際は二人が結婚することは難しいのかもしれない。


「だからね、エースと私は王子のお妃様を見つけるために協力していた……じゃなくているのよ。フィルちゃんはその筆頭候補! だからね。王子がお妃様を見つけたら……公妾たちは愛人を取ることが許されるから」


 ミレーユさんはジョンさんと一緒になるため、王子のお妃になる女性を探していたんだ。まさか私が筆頭候補なんて言われるとは思わなかったけれど、優しい彼女にも彼女なりのメリットがあった。私はまだ王子のお妃様になれるかはわからないけれど、ミレーユさんにはどうか幸せになってほしいと思う。


「もしかして、ミレーユさんの想い人って……」

「きゃっ、フィルちゃん。ダメよ、それ以上口にしたら。だってだって、私止まらなくなっちゃうわよ。話し出したらね? ダメダメ、もう!」


 侍女のリザリアがすっと私の横にやってきて耳打ちする。


「お勧めしません。我々は1日中彼の話を聞かされておりますゆえ」


 と囁いた。



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