第五章:虚無の痕跡、道士は山を下る
清水県で一夜にして七人が失踪したという知らせは、重々しい槌の音のように、束の間の静寂に包まれていた衆生を目覚めさせた。さらに衝撃的なのは、失踪現場に残された奇妙な痕跡が、劉県令と王隊長によって確認されたことだ。それは、左無文が青山鎮の張屠の銅鏡の裏で発見した痕跡と全く同じだった。
これは、「見えざる貪食者」が単なる偶発的な出来事ではなく、確固たる「痕跡」を持つ、拡大し続ける脅威であることを意味している。
清風寺。
王隊長の報告を聞いた後、左無文の顔に浮かんでいた怠惰な表情は消え去った。彼は恐怖ではなく、興奮した表情を見せた。獲物の匂いを嗅ぎつけた狩人のような興奮だった。もちろん、この興奮は眉をひそめた表情の下に巧みに隠されており、むしろ厳粛な表情を浮かべていた。
「清水県…一晩で七人…」彼は低い声でその数字を繰り返した。古書に記された虚空の略奪者の記述が彼の脳裏に浮かんだ。彼らは「思考」を糧とする。数が増えれば増えるほど、エネルギーが増し、活動が活発になり、より多くの痕跡を残す可能性が高くなる。
「あの痕跡は青山鎮のものと全く同じですか?」左無文は再び確認した。
「全くその通りです!劉公が自ら画家に描かせ、私も見ましたが、全く同じです!」額に冷や汗をかきながら、王隊長は肯定した。秘密の部屋で静かに、目に見えず、形のない方法で生きた人間を奪い去るこの方法は、どんな剣や影よりも恐ろしい。
左無文は頷いた。この「空」の印こそが、虚空の略奪者の名刺、いや、むしろエネルギー座標であり、彼らはこれを使って位置を特定し、繋ぎ合わせているのだ。
「王隊長、まずは戻って報告しろ。劉卿に伝えろ。清水県政府に直ちに連絡し、現場を封鎖するよう指示しろ。誰も近づいたり、破壊したりしてはならない。特に行方不明者が残した物品と印は厳重に管理しなければならない。また、清水県政府に、行方不明者7名の詳細な経歴、最近の出来事、そして失踪前に強い負の感情を抱いていたかどうかを直ちに徹底的に調査するよう指示しろ。詳細であればあるほど良い。特に失踪当時、彼らの家の中に影や反射物があった場所などだ。平日に大切にしていた物や嫌っていた物には特に注意しろ!」左無文は、普段の飄々とした様子とは打って変わって、非常に早口で論理的に、一連の要求を一気に口にした。
王隊長は自分の様子に愕然とした。強い負の感情とアイテムの関係など、理解できない部分もあったが、それでも彼は返事をし、指示を伝えるために山を急いだ。
王隊長を送り出した後、左無文は寺に戻った。以前のようにすぐに机に駆け寄り古書を調べることはせず、清峰寺の書庫へと足を踏み入れた。
書庫はそれほど大きくはないが、蔵書は非常に古く、黄ばんで脆くなっているページもあり、濃厚な歴史の雰囲気を漂わせていた。蔵書のほとんどは清峰寺の先祖の直筆で、中には出所不明の貴重な秘蔵書も混じっていた。左無文が以前調べた虚空略奪者に関する情報は、ここから得たものだった。
彼は書棚の奥へと歩みを進めると、そこにはより神秘的で、タブー視されるような古書が数冊あった。書庫の外側には傷跡はなく、かすかな、言い表せない圧迫感だけが漂っていた。これらは、歴代の祖先が弟子たちに、必要でない限り読むなと戒めてきた書物である。三界の奥義、さらには天地の理の極致までもが記されていると言われている。
左無文は深呼吸をし、手を伸ばして古書の一冊の埃を拭った。本の表紙は見慣れない黒い木で作られており、冷たく感じられた。彼は慎重にページを開いた。そこに記された文字は、彼がこれまで見たことのない書体で、奇妙なリズムを持つ古代の記号で書かれていた。
彼は以前からこの種の記号について多少の知識を持っていた。それは「三界原記号」と呼ばれ、三界を構成する最も基本的な法則を体現したものだった。その意味を理解できるのは、特別な伝承や偶然を体現したごく少数の者だけだった。清峰寺の開祖もその一人だったようだ。
左無文はこれらの記号を直接読むことはなかった。危険すぎるし、予期せぬ反動を引き起こすかもしれないと覚悟していた。彼は白紙の護符と朱色のペンを取り出した。以前青山鎮で感じた「空」の印と冷たいエネルギーの記憶を頼りに、護符に印を描き始めた。
これは単なる写し書きではなく、精神的な繋がりと誘導だった。彼は印を描くことで、そこに宿る「空」の力を改めて感じ取り、その構成と原理を分析しようとした。
朱色のペンが動くと、歪んだ冷たい印が護符に徐々に浮かび上がってきた。最後の一筆が落ちた時、護符はわずかに震え、かすかな冷気を発した。左無文は目を閉じ、その中に意識を浸した。
彼は空虚と冷たさを感じた。それは物質的な存在のない空間で、純粋な「間」と「剥がれ」だけがそこにあった。印は、この「空」の空間を繋ぐ鍵、あるいは座標のように思えた。この刻印を通して、虚空挺は三界に一時的な「虚空通路」を作り出し、目に見えず触れることのできない侵入と貪食を成し遂げることができる。
彼はさらに深く掘り進み、刻印の奥深い情報を感じ取ろうとした。この刻印は自然に形成されたものではなく、強大な力によって意図的に刻まれたものだと感じた。まるで虚空挺の居場所を突き止め、支配するための「烙印」のようだ。そして、この烙印を刻んだ力は、虚空挺自身よりもはるかに強力だった。
彼はかすかに、より古く、より荘厳な息吹の痕跡さえも捉えた。まるで時空を超え、未知の存在や力と繋がっているかのようだった。
この発見は彼の興奮をさらに高めた。彼は虚空挺と対峙しているだけでなく、三界に隠された巨大な陰謀、あるいは古代の力に触れているのかもしれない。
刻印の解析は長引いた。左無文は精神力が尽きかけているのを感じ、ゆっくりと目を開けた。護符の紙に刻まれた印が、まるで生き返ったかのように、かすかな光を放っていた。
彼は長いため息をついた。精神的には疲弊していたが、目はいつになく輝いていた。「空」の印に対する理解が深まった。これは単なる紋章ではなく、力の顕現であり、繋がりの媒介であり、さらには追跡の指針でもあるのだ。
護符を片付け、立ち上がり、寺院の門へと歩みを進めた。山の下の世間はまだ騒がしかったが、左無文はこの騒ぎの裏に、目に見えない危険が潜んでいることを知っていた。
彼はただ傍観するしかないと決意した。清水県の事件は、虚空略奪者が活動範囲を拡大していることを示すシグナルに過ぎない。自ら率先して彼らを追跡し、痕跡を辿り、「空」の印の作成と虚空略奪者の支配の黒幕を突き止めなければならない。
彼は計画を誰にも告げず、ただ荷物をまとめただけだった。桃の木の剣というよりは犬叩きの棒のような剣、数枚の白紙の護符(とはいえ、彼は護符よりも頭を使うことが多かった)、そして普段読みたい本。乾物さえ持っていなかった。まるで山を下りて町へ朝食をとるかのように。
山門に着くと、彼は荒れ果てた青峰寺を振り返った。ここは質素ではあったが、彼の根源だった。しかし、真実を追い求めるためには、ここを離れ、もっと広く危険な世界へ行かなければならないことを彼は知っていた。
「散歩に行こう。何か良いものを持ち帰って、この壊れた寺に香を添えよう」と彼は独り言を言ったが、口調は相変わらず軽薄だった。
そして、彼は一歩を踏み出し、険しい山道をゆっくりと、しかし着実に山を下りていった。それは、この世の果て、未知にして神秘的な三界へと向かっていった。
彼の探偵としての旅は、人里離れた山村で起きた奇妙な失踪事件から始まった。今、彼は三界の奥深くに隠された古代の秘密を解き明かすため、現世の境界を越えようとしていた。
左無文が清水県に到着した時、そこは青山鎮よりも厳重な警備体制が敷かれていた。県庁の巡査や兵士が街を巡回し、息苦しい空気が漂っていた。失踪事件は大きなパニックを引き起こし、噂が広まった。山の精霊の仕業だと言う者もいれば、悪霊の仕業だと言う者もいた。さらには、宮廷内の党内抗争のせいだと言う者もいた。
左無文は県庁に直接向かわず、街をぶらぶらと歩き回り、風水の流れ、人の流れ、そして空気中の残留エネルギーの揺らぎを観察した。清水県は青山鎮よりもはるかに広大で、人口も複雑で、様々な息遣いが混在しているため、彼の知覚はより困難だった。
しかし、それでも彼は見覚えのある、不快な冷たい息の痕跡を捉えた。それは「空」の力が残っていた痕跡であり、青山鎮よりも強烈だった。これは、仮想の略奪者たちの活動が、ここよりも頻繁で、より深く行われていることを示唆していた。
彼は行方不明者たちが住んでいた街区へと歩いた。そこは封鎖されていたが、左無文は「空」の息遣いを頼りに、どの家が消えたのかを見分けることができた。
青山鎮とは異なり、清水県の行方不明者たちの身元はより多様だ。裕福な実業家、教師、娼婦、鍛冶屋、乞食、旅商人、県政府の下級役人などだ。年齢、職業、社会的地位、性格など、明らかな共通点はほとんどない。
左無文は封鎖の外に立ち、目を細めて家々を観察した。普通の探偵のように足跡や指紋、破壊の跡を探すのではなく、別の方法を用いた。精神力を解き放ち、そこに残された感情とエネルギーを感知したのだ。
裕福な実業家の家には、強烈な貪欲と不安が漂っていた。教師の部屋は、高尚な傲慢さと現実への憤りに満ちていた。娼婦の住まいは、偽りの笑いと内なる孤独と絶望に満ちていた。鍛冶屋には、激しい汗と苛立ちの痕跡が残っていた。乞食の荒れ果てた寺には、麻痺とかすかな希望だけが残っていた。旅商人の宿屋の部屋は、旅の疲れと富への渇望に満ちていた。郡役人の住まいは、警戒心と権力への恐怖に満ちていた。
様々な否定的な感情、そして時には強い執着さえも混じっていた。
左無文はさらに眉をひそめた。青山鎮の行方不明者は皆、最近形成されたばかりの明確な負の感情や執着を抱えていた。しかし、清水県の行方不明者の中には、長い時間をかけて蓄積された感情を持つ者もいれば、最近形成されたわけではない執着を持つ者もいた。
「虚空の略奪者を選ぶ基準は、負の感情の強さだけではないのかもしれない…」と、彼は独り言を呟いた。
彼は再び空気中に漂う「空虚」な雰囲気を感じ取り、痕跡の正確な場所を探ろうとした。清水県では、痕跡は一箇所に現れるのではなく、行方不明者の家のあちこちに散らばっており、しかも容易には発見できない場所に隠されていた。
彼がその感覚に浸りきった時、行方不明者のすぐ近くから、一団が歩いてくるのが見えた。この一団は皆、同じ軍服を着ていた。それは将兵の風格でも、一般的な宗派の風格でもなく、一種の超越的なオーラを漂わせていた。彼らは強大な霊力の揺らぎを放ち、明らかに凡人ではなかった。
「どうやら上位の勢力が警戒しているようだ」と左無文は思った。彼は、このような超越的な力に関わる事件は、遅かれ早かれ三界の秩序を管理し、あるいはそれに注意を払っている勢力の注目を集めるだろうと分かっていた。