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導入

清風寺は、人里離れた丘の頂上にあり、ほとんど知られていない。緑豊かな古木と、消えることのない霧に囲まれている。道教寺院と称されているが、実際は老朽化した日干しレンガ造りの家が数軒建っているだけで、隅々には苔が生え、屋根瓦は半分ほど剥がれ落ちている。雨の日には、まるでザルのように雨漏りがする。門の前にある額には「清風寺」と刻まれているが、その文字は風雨に晒されてかすれており、今度の突風で寺の名も吹き飛ばされてしまうかのようだ。かつてこの寺には二人の道士が住んでいた。老道士は諸国を旅し、仙人になったと言い伝えられている。十年以上も帰ってこず、消息も不明だ。今、寺には左無文という人物が一人だけ残っている。


清峰寺の37代目後裔である左無文は、25、6歳くらいだ。容貌は整っているものの、眉間には常に倦怠感と気だるさが漂っている。師の思し召しによれば、彼は精励して道教を修行し、符牒を学び、仙薬を造り、功徳を積むべきだ。仙境に昇るにせよ、世を救うにせよ、「道士」の名にふさわしい者となるべきだ。しかし、左無文は仙人の修行には全く興味がなく、むしろ嘲笑さえしている。


仙人の修行はあまりにも面倒だと彼は考えている。座禅を組むには、足を組んで力を集中し、何時間も座り続ける必要がある。油断すれば気が狂ってしまう。符牒を引くには集中力が必要で、呪文を唱えるには、はっきりと大きな声で唱えなければならない。一歩間違えれば、護符の紙が爆発して部屋中が黒焦げになるかもしれない。霊薬の精錬には、さらに時間と労力がかかる。材料を探すために山を登り、尾根を越え、炉の火を徹夜で消さなければならない。油断すれば霊薬が壊れ、炉が爆発して、せっかくの努力も水の泡になる。眠るのと同じくらい心地よく、美味しい料理を食べるのと同じくらい楽しくて仕方がない。しかも、彼には修行とは全く関係のない趣味がある。それは、奇怪な事件を探ることだ。


正午、清風寺の中庭にいた老牛は二度目のあくびを終え、のんびりと草を噛み、時折尻尾を振って蠅を追い払っていた。正殿はまだ静まり返っていた。はっきりとした詠唱も、香の残り香もなく、かすかないびきだけが聞こえていた。左無文は布団に足を広げて横たわり、頭を古い本に乗せてぐっすり眠っていた。『道徳経』か『山海経』かはわからない。ページは黄ばみ、角には油染みがついていた。昨夜こっそり食べた焼き鳥の脂が口角にまだ残っていた。窓の障子の隙間から差し込む日差しが、彼の顔に降り注いだ。彼はただ眉をひそめ、何かを呟き、寝返りを打ち、眠り続けた。


左無文は、市場で出回っている『中国工房奇談』や『紫不易』といった奇妙なメモ帳が特に好きだった。何百回と読み返しても飽きることはなかった。また、市場で奇妙な話を聞くのも好きだった。村の入り口にある古ニセアカシアの木の下で幽霊が泣いているとか、真夜中に家族が落ち着かないとか、根拠のない噂話は、いつも彼を大いに興味深く聞かせた。しかし、彼を最も魅了したのは、解決不可能で矛盾だらけの奇怪な事件だった。そんな事件を聞くたびに、彼の目は突然輝き、平日の半開きで疲れた表情は一掃され、恐ろしいほどの輝きに変わる。


正義のためでも、功徳を積むためでもない。ただ謎を解き明かし、霧を晴らし、ついに真実に触れる快感に溺れていたのだ。その快感は、どんな万能薬よりも彼を幸福にし、まるで全身が生きているかのようだった。


「チンチンチン――」


早朝の静けさを破る激しいノックの音が、庭にいた老牛を驚かせ、ぼんやりと扉を見上げた。左無文は目を覚まし、うとうとと起き上がり、乱れた髪を掻きながら、不満げに言った。「誰だ?こんなに朝早くて、よく眠れないのか?」苛立ちに満ちた声で呟いたが、心の中では一つの予感がした。こんな人里離れた山の頂上まで走ってきて、こんなに熱心に扉をノックする者は、施しを乞いに来た怠け者ではないに違いない。


彼はゆっくりと立ち上がり、すり減った布靴を蹴り飛ばした。靴底はほとんどすり減っていて、甲の部分には泥が少しついていた。彼は寺の門まで歩き、扉の隙間から外を覗いた。山門の外には二人の人が立っていた。一人は緑の官服に黒の紗帽をかぶっていた。青山県の県令、劉氏だ。もう一人は衙門の走者姿だった。彼の顔はどこか見覚えがあった。まるで、かつての県衙門隊長の王氏を彷彿とさせる。二人の顔には、明らかに焦燥と不安が浮かんでいた。劉県令の官帽は片方に傾き、額からは汗がにじみ出ていた。いつもの落ち着いた様子は消えていた。


左無文は目を細めて理解した。劉県令は慎重な人物で、普段は政務を滞りなくこなす。こんな風に平静を失っているのは、きっと大きな緊急事態に違いない。しかも、清峰寺を見つけられたのも、ただの緊急事態ではなく……常人の理解を超えた不思議な出来事なのだろう。


彼は相変わらずの無頓着な笑みを浮かべたまま、ドアを押し開けた。「ああ、劉公、王隊長、なんとも珍しい客人だ。一体何が起こっているのだ? 県庁が強盗に遭ったのか? それとも裕福な家が金を失ったのか? こんな些細なことなら、賢い巡査を探せばいいじゃないか? どうしても見つからないなら、占いのできる荒くれ者の道士でも探せばいい。そんなに遠くまで私を探しに行かなくてもいいだろう?」


劉県令は左無文を見て、まるで命拾いしたような気分だった。彼は急いで前に出て袖を掴み、震える声で言った。「左様! 左様! そんなことを言うな! 今回のことは窃盗でもなければ、ただの事件でもない! 本当に… あまりにも奇妙だ!」彼は支離滅裂で、額の汗が頬を伝い落ち、制服は汗でびっしょりだった。


王隊長も何度も頷き、顔面蒼白になった。「ああ、左道士!その件、我が県政府…人間は関係ない!事件解決どころか、近づくことすらできない!」


左無文は眉を上げ、興味深そうに口角を上げた。彼はドア枠に物憂げに寄りかかり、両手を胸の前で組んだ。口調は相変わらず軽薄だった。「あら?変?そんなに変?教えてくれ、震えているだけじゃない。寒気がするわ。」


劉県知事は唾を飲み込み、落ち着こうと努め、声を潜めた。「左道士、あなたは知らないでしょうが、最近、我が青山鎮には幽霊が出るらしいんです。何人か行方不明者が出ています。」


左無文はあくびをし、興味を示さなかった。「行方不明?そんな単純な話じゃない。もしかしたら、この人たちは娼婦と駆け落ちしたか、誘拐されたのかもしれない。巡査を数人探して、街中を捜索し、見つからなければ誰かに解決を依頼する。それで、その人の運命を推測するだけで十分ではないのか?」


「いや!そんな単純な話じゃない!」劉県令は不安そうに足を踏み鳴らし、突然声を荒げて言った。「左様!左様!そんなことはありえない!今回のことは、ただの失踪事件でも、ただの神霊事件でもない!本当に…あまりにも奇妙だ!」


王隊長も顔面蒼白で何度も頷いた。「はい、左様!その件、我が県政府…一切関係ありません!」


左無文は眉を上げ、興味深そうに口角を上げた。「あら?変?どう変?教えてくれ。」

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