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パズルの神様

 そうして、どれくらい経っただろうか。

 シエルは、気づいた。

 おじいさんを埋めた木に花が咲いたのだ。

 大きな大きな木である。

 しかし、その花はシエルであっても数えられるくらいしかない。

 だが、咲いたのだ。

 真っ白な花が。


 シエルは変わらず毎日その木の前で祈った。

 なぜ花が咲いたのか知りたくて。


 だが、何日かして、その花が枯れてしまった。

 シエルは、がっかりした。

 がっかりしたが気が付いた。

 花が枯れたその後に、小さな実がなっていることに。


 シエルは、その実を毎日毎日、見続けた。

 その実は、少しずつ大きくなっていった。

 しかし、その形がシエルの知っている果物や木の実と全然違う。

 木の実は、大きくなっていくと同時に、その色を白く変えていった。


 また、形も平たく、そして、四角と言うには出っ張ったり引っ込んだり、いびつな形だ。

 シエルはその形に疑問を抱きながら、毎日、その実が大きくなっていくのを見続けた。


 おいしいのかな?


 そう思いながら。




 ある日、いつものように木の実を見に行くシエル。

 しかし、遠めに木を見ていつもと違うと感じる。

 木の実が一つも見えないのだ。

 シエルは慌てて走り出す。


 木の実、どこへ行った!

 



 だが、シエルの心配は杞憂に終わる。

 木の根元にいびつな形の実がいくつも落ちていた。

 シエルは、その実を一つ拾い上げる。


 平ぺったい、真っ白な実。

 しかも、形が相も変わらずいびつ。

 よく見ると、一つ一つ、形が違うようだ。

 まっすぐな辺をもつ実もある。


「ん?」


 シエルは木の実を両手に持って眺めていて、ピンときた。

 シエルは、両手に持った実をそっと、近づける。

 すると、


 ピタッ!


 と、二つの実の出っ張りと引っ込みがぴったりと合わさった。


「おお?」


 シエルは思わず、声を上げてしまう。

 シエルは合わさった二つの実を地面に置き、他の実を手に取る。


 つながりそうでつながらない。

 だが、時々、ぴったりと合う実がある。


 うーん。


 シエルは悩みながら実を合わせていく。

 時々ピタッと合う実。

 それを少しずつつなげていく。


 その実は全部で四十八個だった。

 シエルはそれをつなげていく。


 どのくらい時間が経ったのだろうか。

 シエルは、夢中になって実をつなげていく。

 そして、最後の一個。

 真ん中に開いたそこへ、最後の一個をはめ込む。


「できた!」


 シエルは達成感を感じ、満足する。


 すると、四十八個の実が連なってできたその真っ白な板が、パァッ! と、光った。


「きゃっ!」


 シエルが腕で目を押さえる。

 光が収まっても、シエルは目を押さえ続けた。


「おい、お前」


 ハッ!


 と、シエルは目を押さえていた腕を降ろし、前を見る。

 そこには、真っ白な髪、真っ白のワンピース、白い肌、赤い目の少女が立っていた。


「誰?」

「私はパズルの神様だ。よくぞこのパズルを完成させた」

「え? 神様? パズル? 何?」

「……」

「……」


 二人の間に沈黙が流れる。

 白い少女は、ぶるるるる、と顔を振ると、シエルにもう一度話しかける。


「この白い板のようなものがパズルの完成したもの。お前がつなげた一つ一つがパズルのピース。四十八個のピースをつなげて、よく一つにしたな」

「これがパズル? ピースをつなげてできたの?」

「お前がやったんだろう?」

「うん。面白かった。またばらばらにして遊ぶ」

「ちょ、ちょっと待て、ちょっと待ってって。ばらばらにする?」

「うん。どれとどれがくっつくか、考えながらやってて、夢中になっちゃった」

「……」

「だめ?」


 シエルは、少女に問いかける。


「……」


 少女は再び固まったままだ。

 シエルは、ぽんと左手のひらに右こぶしを打ちつける。おじいさんがよくやっていた動きだ。何かをひらめいた時におじいさんがやっていた。


「一緒に遊ぶ?」


 と、シエルは、パズルを壊そうとする。


「ちょ、ちょっと待って。そうじゃなくって」

「ん? おなかすいたの? 一緒にご飯食べる?」


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