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「ランスさん。今、ちょっといいですか?整理していた領収書のことでお話が・・・」


夜。ロレッタさんの料理を食べ、各々が自由にしている時間にランスさんに話しかけた。


「おまえ・・・それは仕事の話じゃねーのか?今は仕事の時間じゃねえぞ」


「うっ・・・」


いけない。ついついブラック企業時代の癖が出てしまった。日本ではこれくらいの時間だったら全然働いていたもんね。

そう。こちらの世界は、とにかく仕事の時間に対しては日本と比べるとゆるゆるなのだ。朝は大体9時くらいにみんなで集まって午前中の作業をし、お昼を挟んで午後もうひと仕事をしたら、大体16時くらいには解散している。夕飯は17時くらいに食べだすので、今はまだ18時。日本ではようやく今定時をすぎたくらいだ。


「すみません今までの癖で・・・ほとんど雑談みたいなものなんですけれど。」

「まあ、雑談ってことなら、今話したいみたいだし聞いてやるよ。」


「ありがとうございます!・・・これを見てもらえますか?」


そういうと私は、あらかじめ用意してあった領収書の束を机の上に広げた。


「おお。なんだよ。全部ルドルフのところの紙じゃねーか」


「はい、それが・・・」


私が集めたのは、【ルドルフ商会】と記載された領収書だ。明細を見ると、農薬から農具、さらには植物の種まで、どうやら農業に関する品の取り扱いが豊富な商店のようだった。

ランスさんはここでの購入が多く、また領収書の紙質から、こちらの世界の“大手”商会であることが伺えた。


「ランスさんはルドルフ商会でのお買い物が多いようですが、こちらは結構大きなお店なのですか?」


「おお、そうだなあ。このあたりだとそれなりに大きいと思うぜ。だが俺がここで買い物をよくする理由は、この店の先代社長と友達だったからだぜ。」


「え、そうなんですか?」


「おう。といっても、あいつは早くに亡くなっちまってなあ・・・。5年ほど前から一人息子が跡を継いでいるんだ。それで、ルドルフ商会の領収書が何か変なのか?」


「あ・・・。えっと・・・。・・・、このレシートを、年代順に見てください。」


ルドルフ商会がランスさんのご友人のお店だということを知り、若干躊躇いが生まれたものの、私の恩人はランスさんとロレッタさんだと思い直し、ある事実を伝えることにした。その事実は、5年ほど前に代替わりをしたという事実も少し関わってきそうだ。


「ランスさん、定期的にルドルフ商会でいろいろ買いますよね。例えばこの肥料ーEタイプーを見てください。」


「ううん・・・?」


「10年前から6年前くらいまでは、ずっと1キロ1,000ベルなんです。でも、5年前に、突然1,500ベルになりました。最初は値上げかな、なんて思っていたんですけれど・・・」


そういって領収書の次の年を指さした。そこには『肥料ーEタイプー 2,000ベル』と書かれていた。


「どうやらこのルドルフ商会は、毎年値上げをしているみたいで、今ではこの肥料に4,000ベル支払っているみたいなんです。」


「5年前・・・うちの経営が少し苦しくなって、貯金を崩し始めた頃と一致するな・・・」


「あと、ランスさんのご友人から息子さんに代替わりした時期とも一致しますね。」


ランスさんの眉間にしわが寄った。


「10年前、ルドルフ商会には年間で120万ベルほどの支払いがあったようなのですが、今では480万ベルも支払っているみたいです。はじめは、このルドルフ商会はすごく値上げをしているので、別のお店に変えたらいかがでしょうかというお話をしようと思ったのですがーーー・・・。おそらくランスさんがあまり事務仕事を得意でないということを知っているであろう・・・」


「ああ!これはあいつの息子、ニコルがわざとやりやがったな。あいつは親の跡を継いで、苦労せずでかい会社を手に入れたから、商売っていうものを舐めてんだ!!許せねえな!あいつが血を吐く思いで作り上げた会社を使って、こんなセコイことしやがって!」


苛立ちが隠せないようで、ランスさんの声はどんどん大きくなっていった。


「で、どうするんですか?」


「んなもん決まってんだろ!明日とっちめに行ってやる!」


そういうと腕まくりをし、机を大きく叩いた。


(も、もしかして、大変なことになっちゃうかも・・!?)



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