またしても
それから翌日。さらに翌々日は確かにルークの言う通り上級ポーションの不足は出なかった。
だが3日後。
「今日も5本足りない・・・!」
またしても上級ポーションが5本足りなかった。
「おかしいわ。この3日間はジェノスにお願いして、上級ポーションを使うような大きな事故や大規模な演習があったら教えるようにお願いしていたから、そういったことは無かったはず・・・。やっぱり誰かがこっそり上級ポーションだけ持ち去っているってことかしら・・・。でも、誰が?」
ルークにはこれ以上調べなくて良いと言われたものの、流石に事件性があると思った私は、早々に午前中の掃除を終えると倉庫内のデスクに腰掛け、ノートに状況を整理するためペンを取った。
「まず、私が来るまでは、ポーション倉庫についてはそもそも在庫管理という概念が無かったのよね。」
つまり私が王宮に来る前は、ポーションはいわば〝盗み放題〟だったということだ。だが、私が来る前にも在庫が毎日のように不足していたかどうかは確かめようがないので割愛する。
もし私がくる前からも上級ポーションが何者かによって盗まれていた場合、被害額がいくらになるのか、考えるだけで恐ろしい。
「次に私が来た初日。全部のポーションを倉庫の外に出して在庫を数え始めたわけだから、ある意味この日の在庫数が始まりの個数というわけよね。」
私はノートの一番後ろのページに、〝DAY 1 1,592本〟と記入した。初日よりポーションの在庫はこのノートに記載するようにしていたから、この個数が間違っていることはまずないだろう。
「確かこの日に、テオドールさんとリリーに会ったのよね。テオドールさんとは、ポーションの濁りが気になるという話をして、リリーとは大体週に2回のペースでポーションを持ってきてくれるという話をしたんだっけか。一回につき24本持ってきてくれるのよね。」
この日も24本持ってきてくれたので、在庫数は単純計算で1,616本だ。
ちなみに内訳は上級が160本、中級が321本、下級が1,135だった。
しかし、翌朝の在庫数は、上級が160本、中級が300本、下級が1,109本だった。先ほどと同じように、DAY 2としノートに本数を記入する。
すると、あることに気がついた。
「あ、この日は上級ポーションは減っていないんだ。」
内訳をよく読むと、初日から翌日にかけて、下級と中級ポーションは大量に減っているが、上級ポーションは減っていないことがわかった。
これはやはり下位ポーションが減る理由と上級が減る理由とで、原因は異なるということを示しているのだろうか。
それから一週間、確かどこかで演習があったようで、日中の下級ポーションの出払いが多くなる。それについては私が直接必要としている方に渡しているので、正常な在庫減だ。
確かこの期間にジェノスとも知り合いになって、毎日15時頃にポーション片手に雑談するようになったんだっけ。
ただし、ジェノスに渡していたポーションは毎回下級ポーションである。
にもかかわらず、よくよく記録を読み返すとこの期間においてもキッカリ3日に1日のペースで上級ポーションが5本ずつ足りない。
「そうか、この頃はとにかく中級ポーションの減りが激しかったから、上級ポーションが5本減ってることが目立たなくて気がつかなかったんだわ」
そんな折に、ジェノスから〝ポーションはマズイ〟
ということと、〝ポーションの効果は1日3本までしか発揮されない〟ということを聞いた。
そこで私は、もしかしたら「マズイポーションをたくさん飲みたくない隊員たちが、自分の怪我よりも上のランクのポーションを飲んでいるのでは?」
という仮説を立て、検証したところ、見事的中。
すぐに対策としてポーションの使用方についての通達が出され、また私が監査から派遣された人間という誤った情報が出回ったおかげで、それ以降中級ポーションの原因不明な減少はかなり減った。
と、思っていたが。
「この時期って在庫がどんどん潤ってきて良かった〜なんて安堵していたけれど、見返すと上級ポーションは着実に減ってるじゃない。」
この時期でもやはり、上級ポーションは先ほどと同様のペースで減っていっている。この頃は、在庫不足の謎が解けたと思い込んでしまっており、気が付かなかったようだ。
そうこうしているうちに、あの真昼間の魔法事故があり、私は初めて上級ポーションが使われるところを目にしたのだった。
確か、部外者といえば部外者のリリーとポポロにも事故の現場を見せちゃったのよね。
あのグロさ、ポポロには見せるべきじゃ無かったなあ。
その時、上級ポーションといえど万能薬というわけではなく、どちらかというと〝命を繋ぐ〟ための薬だってことを知ったんだ。
で、グロ耐性のない私もめちゃめちゃ凹んで、でもいつまでも落ち込んでいても仕方ないからと次の日はちゃんと出勤したところ・・・
テオドールさんが再び倉庫にやってきた。
そこからの展開は怒涛で、私が異世界出身だと言うことがバレていたどころか、帰る方法はないと突きつけられてしまい、なんやかんやで王宮で正式に働くことが認められた。
また、当面の目標が“召喚魔法の方法が書かれている禁書を見る”ことになった。一般人が禁書を見るには、プリモなんちゃらとかに選ばれるしかないようだけれど、100%無理ではないらしいので、頑張るしかない。
「それにしても、テオドールさんって本当に顔面がレベチでいいんだよな〜。あれで国営軍の隊長って、ほんと天は二物を与えず、って嘘じゃんねぇ。」
「なんだ、私の話か?」




