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王宮はホワイト企業

その人は、またしても突然やってきた。


さて、いろいろあったけど、いつまでもクヨクヨジメジメしているわけにもいかないし、今日は王宮での1日の仕事について紹介しようかな。


まず、王宮の仕事は基本的に“めちゃくちゃホワイト企業”。


私の朝は、遅い。

ポーション倉庫の整理も終えてしまったため、午前中9時過ぎにゆっくりと重役出勤し、前日の在庫との相違が無いかを確認する。本来なら、こんな風に毎日在庫を1本1本数える必要はなくて、月初や四半期に1回確認をすればいいのだが、いかんせん暇すぎて、結局暇つぶしに毎日数えることにした。


なお、夜間や私が休日の日ついて、倉庫の鍵はかけているがマスターキーを使えばいつでも入れる。さらにマスターキーは誰でも自由に持ち出しが可能だ。


なので私がいないタイミングでポーションを使った場合は、壁に掛けたホワイトボードに何本使ったかを記載するようにみんなにお願いした。こうすることで、翌日私が出勤した際に前日のポーションの残数―ホワイトボードに書かれた不在時使用数=当日朝のポーションの残数とすることができて、不明本数の把握がスムーズになるからだ。


・・・ちなみにこのホワイトボードの今のところ運用は・・・


「おっ、今日は初級ポーションが2本と、上級ポーションが5本合わない、と。ったくホワイトボードに書いてくれる人とくれない人がいるな。まったく。みんな書いてくれってば。ほんとこの世界の人たちって適当なんだから。」


・・・あまりうまく行っていない気がする。


あとは一応倉庫の掃除も軽く行い、午前中はこれで終了。


お昼は大きな食堂があるのでそこでいただく。なんと、王宮に勤めている人は食堂での昼食が無料なのだ!これはほんと神な福利厚生!


食堂は学食のようになっていて、食べたいものを自分でセルフでトレーに載せていき、お会計の際に入城する際に門番に見せる例の石板を機械にかざすだけでOK。支払いもらくちんだから毎日通っている。


食べられるものはやっぱり素材を生かした系が多くてシンプルなものが多いのだが、こちらでの生活が長くなるにつれてだんだんと味付けにも慣れてきたのか、今では物足りなさは全然ない。むしろ無駄な塩分をとりすぎることなく、むくみが取れていい感じだったり。


食堂では知り合いがいれば積極的に同じテーブルに着いて雑談という名の情報収集をしたりするが、軍に所属されている方たちは基本的に食事の時間がバラバラなようで、一人で食事をすることも多い。


そして午後。

やっぱりやることが無いので、天気がよければ椅子を外に出して食休みという名の日向ぼっこをしたりする。


するとジェノスが今日のポーションをもらいに来るので少しおしゃべりをして時間をつぶす。


週に2回はリリーとポポロが配達に来てくれるので、それの対応とおしゃべり。あ、あと最近は、リリーに各級レベルのポーション1本あたりの値段を教えてもらったので、ジェノスが身をもって証明したケガのレベルとそれに対応するポーションのレベルとを比較して、どのようにポーションを使えば一番費用対効果があるのかを計算したりもしている。


ただし、やっぱりパソコンなんて便利なものはないので、すべてノートに手書きで計算している。ノートと鉛筆を使った筆算なんて久しぶりにしているので、これが良い時間つぶしになるのだ。


あとは大事な・大事な給料ね。まだ王宮に勤めて1か月しか経っていないので、それこそ給与体系などよくわかっていないのだが(というか私の雇い主って誰なのだろうか。)、先日一応ルークから手渡しで10,000Bellほど貰えた。

日本円にして時給900円くらい?時給に換算するととても少なく感じるのだが、ただ、さっきも言ったように、昼食代はかかっていないし、今根城にしているホテルはルークが支払いを行ってくれているし、(というか、おそらくだけどルークは経費でどうにかしているみたい。それって許されるの?!と思ったけど、怖くて聞けていない。)そもそも社内ニートみたいなもんだから、給料がもらえるだけびっくりした。


そんな感じで、今日もお昼をたらふくいただいて、日光浴をしていたころ・・・・。


―――・・・誰かがこちらにむかってくる。


遠くにいてもわかってしまうほどの圧倒的な威圧感に嫌な雰囲気を察して、急いで日光浴用の椅子を片付けた。この嫌な予感というのは、仕事をさぼってネットサーフィンをしているときに、背後を上司が通りそうだと察したときの感じに似ている。つまり、後ろめたいことをしているときに感じるアレだ。


この予感は的中し、やはりその圧の持ち主はわき目も振らずにこちらに向かってきた。


「報告が遅くなりすまなかった。以前預かった濁ったポーションについてわが軍の魔法分析班に調査させたところ、やはり色の濁ったものとそうでないものとで効果に10%ほど違いがあることが認められた。ところで、このポーションが濁る原因について、貴殿はどう考えている?」


威圧感の持ち主は、やはり以前・・・というか王宮に勤めだしてからだから結構前に1度だけお会いした、あのイケメン(名前は相変わらず知らない)だった。


って、かなり前の話なのにまるで今朝の話かのように話し出すの、すごいな!?とある意味感心した。冒頭の会話からいきなり意見を求められたし・・・。


普通、「以前こういった話をしたのですが覚えていますか?」から入るのが社会の礼儀ってもんじゃないの?そうしたら私も覚えていなくても「あ~、はい、ええ、覚えています」なんて大人の対応するのに。今回は、あなたが印象的な容姿だったから私がたまたま覚えていたけれど、あんな一瞬のこと、忘れる人だっていると思うぞ!


なんて、心の中で本人には絶対に言えないちいさな悪態をついた。どんなイケメン相手でも、心の中では強気に出られるのだ。そう、心の中限定でね。


「そうですか。ポーションが濁る原因ははっきりとはわかりませんが、ポーションを精製してから時間が経ってしまったものや、以前も少し申し上げましたが、日光に当てすぎてしまったことが考えられるかと思います。・・・あとは、その。保管環境が悪いもの要因だったのかもしれません・・・。」


だんだん、語尾が小さく弱々しくなってしまう。保管環境が悪かったのは私のせいでは絶対にないのだが、ポーション1つあたりに幾ら支払っているかを知った今、うしろめたさを感じてしまうのだ。


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