一件落着?
「私、今日初めてポーションを飲んだんだけど、あれってとってもマズイじゃない?」
「・・・まぁ、お世辞にも美味しいとは言えないよね」
バツの悪い顔をしながらルークが答える。普段からポーションにお世話になっている身としては、マズイという言葉を使うのは流石に憚れたようだ。
「ってことは、みんなあんまりポーションをたくさん飲みたくないってことよね。
次に、ポーションって〝どのくらい傷にはどの級のポーションを飲む〟みたいな指針が出ていないんでしょう?」
「それはそうだね。みんなこのくらいの傷にはこのレベルってなんとなくで飲んでると思うよ」
「さらに、ポーションは一日に効果が出る量に上限がある。そして倉庫には管理者がいつもいなくて、ポーションはご自由にお取りください状態にあった。ってことは、みんなどうすると思う?」
ルークが熟考している様子を見せたが、答えは出ないようだ。どうやら同世代上位1%の優等生といえど、社会人経歴は私の方が長いため、組織に所属している人間がどんな行動をするのかを想像するのは、私の方が上手だったようだ。
「おそらく、軽傷でも下級ポーション2本を飲むよりも、中級ポーション1本を飲んだ方がいいって考えるようになるんじゃないかしら?」
「あ。」
そう。私の考えた仮説はこうだ。
ある若者が魔法で傷を負い、倉庫にポーションを取りに行く。いつもなら下級1本で足りるのだが、今日は少し派手な怪我をしてしまったため、もしかしたら下級が2本必要かもしれない。
もしここで下級を2本飲むことになって、また同じ日のうちに怪我をした場合、もうポーションは追加で1本しか飲めないから、万が一傷が治りきらなかった場合は、明日まで怪我を負ったままの状態で探さないといけなくなるということが頭をよぎる。
また、ポーションは激マズのため、出来るのならあまり飲みたくない。
そんな中、倉庫にたどり着いてみると、中は雑然としていて管理をされている様子がない。また、管理人もおらず、自分で好きなポーションを自由に取っていいようだ。
となると、いつもは経費削減の為なるべく下級ポーションを使うように指示を受けているが、今日だけちょっと高価な中級ポーションを飲んだとしても、もしかしたら誰にも咎められることはないのだろうか?という考えに辿り着き、それを実行したのではないだろうか。
そして、そんな風に考え実行した人が増えた結果、上位のポーションばかり減り、下級ポーションだけ残るといった現象になってしまったのではないか。
「なるほどね。僕はどのポーションがどの位の傷まで対応しているかをある程度把握できているから、自分の傷に対して過剰な級のポーションを飲むなんて発想にならなかったよ」
深く納得した様子でルークが呟いた。
「でも、そういう風にポーションを選んでいたら兵士を洗いざらい処罰するとか、あんまり大事にしないであげてね。さっきの兵士さんも一回は下級ポーションを手に取ったってことは罪悪感はあるってことなのよ。これから当分は私が管理人として付きっきりで倉庫にいるから、多分私の目を気にしてみんな適切な級のポーションを選ぶようになると思うし。」
そもそもこの事態は、〝ポーションもタダじゃない〟という基本的なことを周知できていなかった企業(軍隊か?)にも責任の一端があると思う。
費用に対する認知は人によって乖離があるため、一つの組織として同じ価値観を共有しておくべきであったのだ。
「そうだね・・・。でも、今はエリカが倉庫に居てくれるからいいけど、仮にエリカが自分の世界に帰ることができて、ここが前の管理状況に戻っちゃったら、みんなまたそうやってポーションを選ぶようになっちゃうんじゃないかな。」
「ああ、それは大丈夫かな?ジェノスがどの程度の傷にはどの級のポーションを飲むと良いかを研究しているらしいから、それを倉庫に貼るとかしてみんなに周知するだけでも効果はあると思うわよ。」
「えっ、ジェノスって、僕の先輩の?・・・ふーん、エリカってば、早速ジェノスとも知り合いになったんだ」
ルークが少し何か言いたそうにしていたが、何を思っているのか分からなかったので、追求はしなかった。
「まあ、誰が上位ポーションを飲んでいたかなんては調査しなくていいけれど、こういう事案が発生したからみんな改めて適切なポーションを利用するようにっていうのを通達する分にはいいと思うわよ。ちゃんと上が把握しているって知らせるのも大切だからね」
「そうだね、隊長に相談してみるよ。・・・エリカってば、なんだかんだ言って解決してくれるんだから、ほんと流石だよね!ありがとう!」
「まあたまたまだけどね。ついでに転移魔法が使える上級魔導士に会わせてくれるよう言ってくれると嬉しいわぁ〜、なんてね」
何はともあれ、一件落着・・・かな?
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