ポーションは1日3本まで
「あとは、上級ポーションは作るのに複数の薬草が必要で、魔導士もレベルが高い人しか作れないから、その分値段が高いんだ。というかポーションを作れるのって1つの才能だから、その分も上乗せされてると思うよ。僕も王宮に卸すレベルのポーションは作れないしね。だからリリーはあの歳でとても優秀なんだ」
リリーは、年齢は17歳ということらしく、その年齢で王宮御用達のポーションを作れるのはやはりすごいことだという。
「へー、ルークでもポーションは作れないのね。上級ポーションはレベルが高い人しか作れないというのは想像通りだったけど。じゃあもう一つ質問。この倉庫にあるポーションは誰でも自由に持ち出せるのかしら?」
「僕が朝来て鍵を開けたら誰でも自由に持ち出せるよ。でも王宮に入ってくるものは全部検品済みのしるしがついているから、誰かが勝手に持ち出して転売するにはリスクが高いと思う。」
なるほど。私が倉庫番になる前はルークが担当だったけど、ルークは私と違って日中訓練があるから倉庫に付きっきりというわけにはいかない。いわゆる〝ご自由にお持ちください〟状態だったというわけか。
「どうかな?上級と中級のポーションがどんどん減っている理由、わかりそう?」
ルークが期待したような目でこちらを覗き込む。
「いやいや。さすがに今日来ていきなりじゃなにもわからないわよ。まだ掃除しかしてないし・・・。それに、在庫の管理がし易いような仕組み作りは手伝えると思うけど、今までなんで在庫不足が発生していたかは突き止められるかわからないからね。期待しないでよね。」
「だよねえ、ははは。もう今までの在庫不足については僕がしっかり怒られてきます・・・。じゃあ、僕もそろそろ部隊に帰るよ。外に出したポーションは後で仕事終わりに取りに来るから、端っこにまとめて寄せておいてくれると嬉しいかな。」
「うん、わかった。来てくれてありがとうね」
ルークの話をまとめると、在庫が不足しているのは中級から上級ポーションで、この倉庫自体は出入り自由のため誰でも持ち出せるチャンスはあるものの、転売などの恐れは限りなく低いということらしい。ただし、特に上級については非常に高価な品であるということは間違いないだろう。また、ポーションの飲用は1日に3本が目安、と。そこはエナジードリンクと同じだな。
別に在庫不足事件の調査をしているわけではないが、やはり気にはなったのでなんとなく頭のなかで情報を整理した。
よく経理時代にもあったことなのだが、現金の残高が合わない時などにこうして情報を集めて客観的に整理すると、意外と〝妙な点〟が見つかり、そこから残高があうきっかけを得ることができたりしたのだ。
そうこうしているうちにルークも訓練へと戻っていったので、その日は棚の上の掃き掃除だけして業務終了とした。
この国は、王宮といえど明示された定時というものはないらしいので、お言葉に甘えて日が暮れる前に帰路につかせてもらうことにした。
少し早く帰ったのには理由があって、それはこの世界のスーパーに寄りたかったからだ。ルークの借りてくれたホテルには、簡単なミニキッチンが付いていたので、これから当分は自炊をしようと思っている。王宮に来る前にランスさんがまとまったお金を渡してくれたが、今の私にはこれしか財産がないから、少しでも節約をするためだ。
ルークに聞いておいたスーパーは、王宮と私のホテルからは少し離れたところにあったが、事前情報通り庶民派価格帯と豊富な品揃えだった。
そのあと、ホテルの周辺を少し散策し、部屋に戻った。
あ、そうそう。部屋のコンロや給湯器は魔法が不要な仕組みになっていた。(使いたいときボタンを押すと、時差があってそれぞれ動き出すって感じかな)王宮に近いホテルのため、様々な国の人が使うことが想定された対応なのだろうかはわからないがそういう配慮をしてくれたルークに感謝しながら食事を作り、お風呂に浸かることができた。
「それにしても、今日あった二人も美男美女だったなあ・・・」
謎の男性と、リリー。こちらの世界にきて、ルーク以外の若者と初めて話したが、やはり顔面のレベルが高い。
「あーあ、せめて名前でも聞いておくんだったなぁーっと。」
なーんて、妄想の中では強気だけど、いざ目の前にすると何にもできなくなっちゃうんだけどね。謎の男性は、ポーションの効能について調べてくれるという話だったけれど、本当にまた会えるかな・・・。
「さーて、明日は天気もいいみたいだし、掃き掃除と水ぶきは終わらせたいな・・・。それに、そもそもの目的の転移魔法が使える人の情報も集めたいから、もっといろんな人に積極的に話しかけないと・・・。でも・・・いつまでもポーションを会議室に非難させてもらっておくわけにもいかないから、倉庫の掃除はなるべく早くに終わらせないと・・・・。うう・・・眠い・・・。」
慣れない土地での作業や新しい出会いにさすがに疲れたのか、強烈な睡魔が襲ってきた。湯船で寝ちゃったら洒落にならないと、疲れた体に鞭打って、何とかベッドまでたどり着くと、1分もせずに眠りについた。




