1,592本のポーション
そんなこんなでイケメンに元気をもらった私は、今までで一番のやる気をみせ、どんどんと片付けを進めていった。倉庫内にあったポーションを外に出す作業が終わり、午後も少し過ぎ、掃き掃除を始めた頃にルークが顔を見せに来てくれた。
「お疲れ様!今日は一人で作業させちゃってごめんね?朝も問題なく出勤できたみたいで安心したよ」
「わ!ルーク。わざわざ来てくれたの?ありがとう」
「そりゃあエリカのことが心配だからね。どう?困ったこととかはない?」
そう言いながら、差し入れの瓶入り牛乳を手渡してくれた。体を動かして暑くなった体にキンキンに冷えた牛乳が沁みた。この世界はモノを冷やす技術も確立されているようだ。
「うーん、特段困ったことはないかなあ。とにかく埃がすごいから一回ざっと掃いてからまた明日に水ぶきをしようかなって思っていたところ。あ。午前中に一人だけ人が訪ねてきたよ。すごい位の高そうな方が・・・」
「えっ!どんな人?!何か怒られたりしなかった?!」
途端に過剰な反応をするルークが気になったが、ま、いいか。
「別に怒られたりはしなかったわよ。年齢は私とおんなじくらいか少し上くらいかなあ。でもルークと似た軍服を着ていたから、王族とか偉い人っていうより、多分どっかの軍の人なんじゃないかな。私に興味があるっていうよりも、私が何をしているのかに興味があったみたい。ほら、私倉庫のポーションを全部外に出しちゃったからさ。」
本当は、すごく美形だったことを一番伝えたかったのだが、人の容姿に触れるのは躊躇われたため、一応言及を避けた。ミーハーとも思われそうだったし・・・。
「確かにすごい光景だもんね。全部で何本くらいなんだろう」
そう、私がポーションを全部外に出してしまったため、倉庫周辺が色とりどりのポーションで敷き詰められてしまっているのである。確かに壮観な景色である。
「あ。数えたわよ。全部で1,592本」
「1,592本?!?!それ全部ひとりで数えたの?!?!」
「ええ。あたりまえじゃない。だってそもそもポーションが足りない理由を調査してくれっていう理由でここに来たんだから、まずは今何本あるのか数えるのは基本中の基本よ。もう棚のたっっかいところにおいてあるやつとか、取るの大変だったんだから。」
肩こりを解消させるように腕を回す動きをしてみせる。そう。倉庫の惨状をみて忘れがちになってしまっていたが、本来私がここに来た目的は、大掃除ではなくポーションの在庫不足の原因究明と解消にあるのだ。
「今日中に埃を全部掃くのは難しそうだから、水ぶきに入れるのは明後日かしら。悪いんだけどこの外に出しちゃったポーションって、1週間くらい会議室みたいなところで預かっててもらえないかしら。あと運ぶ用の台車も貸してほしい」
掃除のためにポーションを全部外に出したのはよかったのだが、思った以上に埃が積もっていたため、今日明日位の掃除ではポーションを倉庫の中に戻せそうになかったのだ。かといって、あんな埃まみれの惨状を目にした後では、一応薬品?のポーションを元の場所に戻したいとは思えなかった。
「ああ、それなら僕の部隊に割り当てられていて使っていない部屋があるからそこにおいてこうか。上官には僕が伝えておくよ。・・・。それで、エリカ。さっきの話の人はほかに何か言っていた?」
「さっきの人?ああ。んーっと。私が色は一緒なのに濁っているポーションがあるから、それを先に使っちゃいたいって言って、あと効能に差が出てるかもしれないですねみたいなことを言ったら、調べてくれるって言ってたよ。まずかったかしら。」
「調べる、か・・・。うん。いやそれくらいなら大丈夫だと思う。別に悪さをしているわけじゃないしね。」
「よかった。」
ルークの返答に若干の歯切れの悪さを感じつつも、問題がなかったことを聞いて安心する。もしかしたらルークの部隊とは違う軍の方だったのかしら。なんて思っていると・・・
「こんにちは~!今日の分のポーションを届けに来ました!」




