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異世界転生


「おお!目を覚ましたぞ!」

「大丈夫ですか?すぐにお水を持ってくるわね」


目を覚ますと、そこは小さなベッドの上で・・・。年配の男性と女性が、私を心配そうな目をしながら取り囲んでいた。


「え・・・痛っ」


状況を把握しようとすべく、なんとかベッドから体を起こすものの、すぐに激しい頭痛に襲われた。

そうか、私、電車に轢かれて・・・その割には、頭以外、痛く、ない・・・?


心臓の鼓動は鳴りやまないものの、何とか辺りを見回した。今いるのは自室ではなく、おそらく私を助けてくれたであろう2人の家だろうか、床から屋根まですべてが木でできているログハウス調な一室だった。部屋にはタンスとテーブルとイスがそれぞれ1つずつ。いまどきクローゼットじゃなくタンスなんていうのは珍しいな、なんて状況にそぐわない呑気なことを考えてしまった。


それに目をひくのが、二人の容姿と服装。


年齢は50代くらいの二人だが、女性のほうは、赤いエプロンワンピースにバンダナ。長い髪が少し巻いてあり、優しそうな印象を受けた。また男性も・・・カントリーな服?といえばいいのだろうか。茶色のチョッキを着用し、ジーンズにブーツ。なによりも、目の色が二人とも薄い水色、髪色も地毛から明るい茶色のようで、流ちょうな日本語に似つかわないほど、見た目だけでいえば外国の方のそれであった。


「大丈夫?ほら、お水は飲める?」


女性のほうが、顔を覗き込みながらコップを手渡してくれた。


「あ・・・、すみません、ありがとうございます。わたし・・・」


「びっくりしたわ。畑で作業していたら、大きな音がして。音のほうに行ってみたら、あなたが倒れているんだもん。主人と二人で大騒ぎよ」


「え・・・?」


畑・・・?駅の周辺に畑なんてあったっけ?

そういえば、と、ふと窓の外の様子に気が付く。私、残業終わりに電車に轢かれたはずなのに、なんで空が明るいんだろう。それに、1月にしては暖かい気がする。


「あの、すみません、頭が混乱しちゃっているみたいで・・・今って、何月何日ですか?」


「7月3日だよ」


「な、7月?!私そんなに意識がなかったんですか?!」


「?私たちが大きな音を聞いて、あなたが倒れているのを見つけて、いま目を覚ますまでは3時間位だったわよ?」

「えっ!?」


かみ合わない会話からいやな予感がして、ベッドから飛び降りカーテンを開け、窓の外を見た。そこは見知った静岡の田舎町よりもさらに田舎・・・というか、広大な畑に果実の実った木々、極めつけには牛と馬が自由に放牧された風景が広がっていた。


果実といっても、見たことのないような青い果実や、奇妙に渦巻いた形の実など、日本では見かけたことのないものだ。

牛や馬は日本のそれと同じようだが、とにかく目の前の風景が広大すぎる。信号も、車も、電柱もなにもない。


「なに・・・これ」


もしかしてわたし、電車に轢かれた衝撃で、異世界に転生しちゃったーーー?!?!?!






「すみません、取り乱してしまって・・・」

「いいのよ、つまりエリカは、どこか遠い世界からやってきたということなのね」

「はあ・・・私にもわからないのですが・・・」


何とか落ち着きを取り戻した私は、二人に事情を説明した。自分は日本人で、1月の寒い季節に、電車に轢かれてしまったと思っていること。もともといた静岡県と窓の外の風景が大きく違っていること。

すると二人は、『ニホンジン』や『デンシャ』という言葉にはなじみがないようであったが、おおむねすんなりと私の話を受け入れてくれた。


私を助けてくれた二人・・・ランスさんとロレッタさんは、この広大な畑を管理する農家さんということらしい。私はどうやら二人の畑の敷地内で、気を失った状態で発見されたようだ。ただ、目立った外傷もなく、本当に気絶しているだけだったため、とりあえず自分たちの家の使っていない部屋に私を運び込んでくれたということだった。


「うーん。最近、召喚の儀を行うなんて通達、王都からはなかったがなあ?」


「召喚の儀?!も、もしかして、この世界には魔法なんてものが存在するんですか・・・?」


「当たり前じゃない。といっても、上級魔法を使える奴らは皆王都に勤めているから、俺たちは生活の助けになる程度の下級魔法しか使えないがな」


ほら、と言って、ポンッ、という音とともに、ランスさんが自分の指先に火をともした。


(すごい、アニメの世界以外で初めて魔法が使われているのを見た・・・。

どおりで、服装も眼も見た目もまったく違う私が、遠い国から来たと主張して、すんなり受け入れてくれたわけだ・・・。)


「召喚の儀なんて、上級以上の古代魔術よ。今使える人間なんて王都にもいないんじゃないかしら。」


「とすると、誰かが見よう見まねで召喚魔法を試して、魔力が暴走したか大失敗したかして、エリカはそれに巻き込まれてこちらの世界に来ちまったという線が濃厚だなあ」


「そんな・・・私、どうすれば・・・」


どうやら私は、正規ルート?で召喚されたわけでもなく、なにかイレギュラーに巻き込まれて、こちらの世界に来てしまったようだ。絶望で頭が真っ暗になった。


「とりあえず、今日は寝て、明日また考えましょう。この部屋は独り立ちした子どもの部屋だから今は使っていないし、エリカの今後が決まるまで、ここにいていいのよ。」


「そんな・・・そんなご迷惑・・・」


「大丈夫!うちは農家だから、食べるものはたくさんあるのよ!あなたが誰かに召喚されたたかもしれないというのもまだ憶測の段階なんだし・・・。それに、うち以外にいくあてなんてあるのかしら?」

「うっ・・・」


そうなのだ。誰かに呼ばれたともわからない以上、いまの私にできることは何もなかった。


(だめだ。混乱している。今はお言葉に甘えさせてもらって、明日になったら今後どうするべきかを考えよう)


「すみません・・・。お言葉に甘えて、今日はこちらに泊めさせてもらおうと思います。初対面でこんなことをお願いするのも大変恐縮なのですが・・・」


「そうね、そうしなさい。お風呂は今日はやめておいたほうがいいと思うけれど、この部屋には一式洗面用品はそろっているから、自由に使ってかまわないわ。

じゃあ、私たちは自室に戻るわね。おやすみ」


「本当・・・何から何まで。ありがとうございます。おやすみなさい」


二人が部屋を出ていくと、部屋は静まり返り、急に不安が襲ってきた。

日本でも一人暮らしだったから、静かなことには慣れているが、一人と独りはちがう。ましてや、何もわからない世界に一人で飛ばされてきてしまったのだから。


そう、転生・魔法・召喚・・・

突然自分の身に降りかかったことを消化できず、目の前のことがすべて現実と受け入れられないまま、私は目を閉じ、ベッドに身を任せた・・・・。


物語は、「初めての王都」から動き出します。それまで丁寧な背景の説明だと割り切って読み進めていただけると幸いです。

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