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イケメンの効能

「あの・・・。では、私が何かしてしまったでしょうか・・・。」


威圧感のある成人男性が微動だにせずにいるこの状況に耐えきれなくなり思わず口を開いてしまった。

それにしても・・・。ルークもそうだが、この世界の人は男女問わず美形が多い。まだ知人といえる人はルークやロレッタさん、ランスさんの他にはいないものの、街ですれ違う人たちの美しさといったら。もともと美に頓着がない私ではあったものの、あまりにも周りのレベルが高すぎて、少し生きづらさを感じるほどであった。

そんなこの世界においても、目の前の男性は群を抜いて洗練されていた。

もともと私は日本で異性と交流がある方ではなく、というか、年齢=彼氏いない歴なので、テレビの中でも滅多にお目にかかることができない程の美形が目の前で沈黙しているという状況に、嬉しいどころか居た堪れなさを覚えていた。


「いや。特に貴殿が何かしたということを指摘しているのではない。こんなにポーションが外に出ていたのが珍しくてな。貴殿の言う、ポーションの鮮度というのは一体何を指す?」


「あ・・・。それは、ポーションがいつ作られたかを基準に並べたいなと思いまして・・・。えっと、このポーションを見ていただけますか」


どうやらこの男性は、私の正体を怪しんでいるのではなく、私がなぜポーションを仕分けているのかが知りたいようだった。よくよく見ると、着用している軍服がルークのそれと比較してより重厚であることから、もしかしたらルークの上官かもしれないと思った。

ならば、と思い、私は濃さは同じ紫色だが、透明度が異なる2種類のポーションを手に取り、その人に見せることにした。


「このポーションですが、同じ紫色をしているので、おそらく効能としては同一の効果を発揮することが期待されていると思います。ですが、この2つは、明らかに透明度が違います。おそらく、透明度が高い方が最近作られたもので、濁っているものが以前に作られたものではないかなと考えます。」


「ほう。それで?」


「この2つの効能に効果の差異があるかは試していないのでわからないのですが、なるべく古いものから消費していくのが在庫管理の基本かと思います。そこでポーションを使用する際には、できるだけ古いものから順番に出して、ポーションの質が劣化しないようにするべく、倉庫の中を整理しようと考えています」


無意識に口調がブラック企業時代の上司に話すようになってしまった。

そういえば浜電にも、めちゃめちゃ言い方のきつい人いたな、なんて思い出す。

この人からは、そんなブラック企業の上司のような高圧的な感じはないが、とても厳格な人なのだろうということが話し方からも身だしなみからも伝わってきたので、思わず背筋が伸びて、このような話し方になってしまった。


「なるほど・・・」


「あとは、あまりにも使用に耐えないポーションについては、ルークに相談して廃棄も検討しようかと・・・」


その人の視線の先には、倉庫の奥にあった埃まみれのポーションがあり、いたたまれなくなったため、捨てるかもしれないと早々に白状した。

正直、ポーション1つを作るのにどれくらいのコストがかかっているかを把握していない現状で廃棄を決定するのは尚早な気持ちもあったが、口から摂取するものだろうし、この判断はやむを得ないだろう。


「そうか。使用ができないものについては廃棄することも必要だろうな」


そういうとその人は足元にしゃがみ込み、ポーションを手に取ってまた考え込んでしまった。だから、コミュ障の私にはこの沈黙が耐えられないんだってば!


「魔法で作られた製品であるからして、劣化という発想はなかったが、確かに言われてみると貴殿のいう通り、同じ色のポーションにしても透度の違いがはっきりしているな。これによる効果の違いがあるかは私の軍で試してみよう。参考にこの濁ったポーションを預からせてもらおう。結果が判明次第共有するので、それまでに倉庫の整理に励んでいるように。では。」


「は・・・、はい。」


そういうと足元から濁ったポーションを数本手に取ると、足早に王宮の中へと去っていった。初対面にも関わらず、初めから最後まで威圧的な物言いのようにも感じたが、苛立ちや怒りを感じなかったのは、その人の身から出る高貴さが故だろうか。


それにしても、ポーションの色の違いによる効能の違いを自分の軍を使って試すって言っていたな(人体実験か?)。自分の軍があるということは、やっぱり相当に偉い方なのかな。


「あと・・・結果がわかったら共有するって言っていた、よね。ということはまた会えるかもしれないんだ。それまでに、倉庫の整理に励まなきゃね。よ~し、がんばるか!」


これがいわゆるイケメン効果というものだろうか。

はじめは完全におびえていたのだが、現金なことに、イケメンに全く免疫のなかった私は、めったにお目にかかれないレベルのイケメンと話したことにより、やる気がMAXまで上昇してしまったのであった。


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