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審査

王宮の周りには美しい水が流れており、いわゆる日本の城の御堀おほりと同じ様相をしていた。(もちろん鯉なんかは泳いでいないけれどね。)やはり警備は厳重で、御堀の上の何か所かに橋が架けられており、そこにいる衛兵による身分や持ち物のチェックが行われるらしい。

馬車で入ることはできないので、私たちは徒歩で衛兵さんのもとへ向かった。


「第三部隊の、ルーク・ガルシアです。すでに申請済みですが、今日は助手のエリカ・オサナイも一緒です。照合をお願いします。」


そういうとルークは、ICカード位の大きさの石板を取り出して、初老の衛兵さんに手渡した。衛兵さんはゆっくりとした手つきでそれに手をかざすと、石板の上に小さなルークの映像と、横に個人情報のような文字の羅列が映し出された。


「はい、ルークさんですね。ありがとうございます。お連れの方の申請も伺っておりますよ。ではお連れの方については、これが初めての王宮内への入場のようですので、わたくしのほうで【審査】をさせていただきますね。」


「審査?」


どうやら事前にルークが私を連れていくことを申請していてくれていたようで、不審者にはならなくて安心した。だが、入場には審査なるものが必要ということらしい。審査っていうと、空港とかでやる持ち物検査的なものかしら?

私が小さく首をかしげたのも束の間、衛兵さんが顔の目の前に手をかざした。次の瞬間・・・


「わっ・・・!」


全身が淡く光り、どこからか一瞬にしてレースのヴェールのようなものが現れ、それは瞬く間に私を包み込むと、弾けて輝きながら散っていった。


「わあ!なにこれ!」


するとルークがクスリと笑い


「驚いた?今、エリカの心を審査してもらったんだ。」


と言った。


「心の審査・・・!?」


「ここは国王が住む居住地だから、やっぱり邪な考えを持つ不届きものが侵入を企てることもあってね。だから、エリカみたいに初めて王宮の敷地内に入る人間には、その者の心の内をこの衛兵さんが審査しているんだ」


「こころのうち・・・。それって、私が何を考えているかを読み取ったってこと?!」


この世界の魔法は、人の心を読むことができるのかと驚きを隠せないでいると、にこやかに微笑んでいた衛兵さんが声をかけてくれた。


「いえいえ。我々が審査できるのは、せいぜい国や王に対して善意があるか、悪意があるかくらいですよ。お嬢さんの心も審査させていただきましたが、問題はございませんでしたのでご安心ください。ただ、お嬢さんは、これまでの人生で私が【審査】してきた人の中で一番魔法に対して動揺していたみたいですね。悪意は微塵も感じられませんでしたが・・・。」


衛兵さんが微笑みながらも私のほうをちらりと見たのでドキッとした。もし怪しい人認定されちゃったら私の日本に戻るための計画をまた一から考えないといけなくなっちゃう。


「ああ。彼女は東の国の出身で、魔法に対しての知識がとても乏しいんだ。だから審査なんて特殊魔法は見たことがないんじゃないかな。彼女は僕の助手という形でこの国の魔法を勉強する代わりに、彼女の国の魔法を王宮で活用してもらうためにここに来てもらったんです。交換留学生みたいなものですかね。」


私の動揺を察したルークが助け舟を出してくれた。どうやらルークの中のストーリーでの私は、東の国出身で魔法の知識が少ないということになっているらしく、異世界出身ということは隠しておくらしい。


「そうですか。確かにこちらの国ではあまりお見掛けしない、綺麗な黒髪と意志のお強そうな黒い瞳ですね。それではあまりおしゃべりをしてお勉強のお邪魔をしてはいけませんね。どうぞお励みください。」


ルークの澱みない説明に納得してくれたようで、衛兵さんは入り口を開けてくれた。


「ありがとうございます。行こう、エリカ」


「はいっ。ありがとうございました。」


友好的な衛兵に別れを告げ、王宮内へと一歩を踏み出した。


「ルークってば嘘が上手なのね。」


小声でルークに話しかける。


「やだなあ~嘘は言っていないよ。僕の助手として来てもらっているというのは事実だし、東の国っていうのは、どこから見て東かっていうのは言ってないしね。エリカの国の魔法を使ってもらうとは言ったけど、エリカが魔法を使えるとは言っていないから大丈夫大丈夫」


あっけらかんとした様子で笑うルークを見て、こいつは敵に回さないようにしよう・・・と思った。

ブックマーク、評価、いいね とっても励みになります。

12月中に物語を推敲する予定です。

お時間がある方は1話から読みなおしていただけると

大変嬉しいです!よろしくお願いします!

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