転移魔法について教えてください!
4人で食卓を囲みながら、ルークの近況や王都での生活についての話を聞いた。
ルークは王宮の国防軍第3部隊という場所に勤めており、主に戦で傷ついた仲間の回復や魔法で薬の生成を行っているらしい。
また、王宮に勤めている人は男性ばかりだそうで、いまだ彼女のいない息子にロレッタさんはわかりやすいほどがっかりしていたが、本人は今は仕事が楽しいからとケラケラ笑っていた。
「戦って・・・。この世界でも戦争があるの?」
「いや、エリカの想像しているようなヒト同士が殺し合いをするような戦はこの国ではもう何十年もなくて、今は魔物討伐がほとんどだね。もともと僕らの国って、魔法で山間を切り開いて作られた場所にあるから、周りは魔物に囲まれてしまっているんだ。それで、魔物から国民を守るために活動しているのが、僕ら国防軍ってわけ。でも僕は第3部隊・・・後方支援が主だから、前線に出たりはしないから危険なことは一切ないんだ」
でもやっぱり国防軍だから、基礎体力作りの運動をやらなきゃならなくて、そっちの方が大変さと言いながら、ルークは今夜4つめのパンに手を伸ばした。確かに後方支援という割に彼の肉体は引き締まっていた。
「ねえ、ルーク。さっき『エリカは転生でこちらの世界に来たんじゃない?』って言っていたじゃない?王都には高度な転移魔法が使える上級魔導士がいるんじゃないの?エリカに会わせてあげられないかしら」
「おお、転移魔法なんてあるんですね」
「ええ、みんなが使える魔法ではないけれどね。遠方に配達したい荷物とかは、お金を払って転移魔法で届けてもらうことが多いわね。やっぱり馬車だと時間はかかるし、紛失も怖いしね。あと、手紙なんかは一度王都に集められて、王宮魔法使いが各所に飛ばしてくれているのよ」
「わあ・・・・!」
魔法で手紙を配達するというのは、とてもファンタジーな光景が広がっているように思えた。どうやら手紙に魔力を付与して、手紙自体が空を飛んでいくらしい。もし機会があったら日本に戻る前に見てみたいなあ・・・!
「うーん、会わせてあげたいのは山々なんだけど、僕自身もまだまだ新米だから上級魔法使いにツテはないんだよね。あと困ったことに、今僕の勤務してる所で問題があって、その対応にいっぱいいっぱいで・・・僕もこの長期休みを1日早く切り上げて、休日返上で調査しようと思っているところさ。休日出勤なんて信じられないんだけれど、そうでもしないと解決しなそうで・・・。」
ルークはとほほ、という顔をして見せた。本人も信じられないと言っているが、この世界には休日出勤なんて概念はないと思っていたので、(やっぱり王都というエリートが集まるところは日本並みにブラックなのかしら)と軽く思っていたら、ランスさんとロレッタさんは絶望した顔をしていた。




