なんとなく見覚えがある。
見つけていただきありがとうございます。
よろしくお願いします。
昔から俺はおかしかった。
他の人が笑わないことに俺だけ笑ったり、言動が人より少しおかしかったり。
それだけならまだしもうってつけには、普通の話題には眉ひとつ動かさないのに、人が不幸になると最高に笑ってしまう所だ。
俺的にはそんな気はないんだが、気がつくと最高の笑顔をしているらしい。見たことがないくらいの。
そのせいか瞬く間に噂が広がり、関わったひと全員に冷たい目で見られるようになってしまった。
たちが悪いのが噂が最初からだいぶ変化していたところだ。気づいた時にはもう遅かった。
2ヶ月前くらいには養母の前でクラスメイトが血を大量にだして病院にいった話をとても嬉しそうに話してしまった。
これまた気付いたときには遅く、養母の目は子供をみる目じゃなかった。
次の日からはただでさえぎこちなかったのにもっと態度がぎこちなくなっていた。
学校では避けられてばかり、もちろん友達もできはしない。
義母からの視線も痛い。
どこにも俺の居場所はない。
直そうとはした。だが一向になおらず、むしろ意識するとニヤッとした笑いに変わってしまう。普段の話題も心の中では笑おうと思っているのに、緊張してるのか動かない。
まったく効果がない。
・・・これは家出するのに不十分な理由だろうか?
自殺する気は1ミリもない。
シンプルに怖いからだ。あと好きなアニメの二期がまだだ。死ぬわけにはいかない。
だから俺は俺の居場所を探しに行く。
俺を認めてくれる所を探しに。
夜の道をケータイを見ながら歩く。目当ての家らしいものが目にうつる。
「これで7軒目か。」
印象はとても家賃が高そうな家。ここに住んでいる人と俺は夜に家にいくアポをとっていた。
案外ネットを駆使すると拾ってくれるところは見つかったりする。
最初から男とは言っているので下心なしで善意で拾ってくれる。
だが俺の家出の理由を話さなかったのがダメだったのかもしれない。4人にキモがられた。楽しませようとする会話には一切笑わないのに、不幸が起きると最高な笑顔をする。運が悪いと2,3日で追い出されていた。
あと2人は・・・思い出したくもないし、二度と会いたくない。
俺は豪華な家の前に立つ。
慣れてきたと思っていたが、やはり初めの出会いは慣れず少しドキドキする。
名札をちらっと見てみる。
樋口 と書いてある。どこかで聞いたことがある苗字な気がする。
「まぁ、それぐらいあるか。」
少し緊張しながらチャイムを押す。
数分が立つ。
一向に出てこない。
家を間違えた?
ケータイで場所をもう一度確認する。
「・・・ここであってるな。」
寝ている?人が来る予定があるのに?まさかいたずらだろうか。実際にあるんだなこういうの。
6回連続でいたずらじゃなかったから視野に入れていなかった。盲点だったな。
そして俺はこの後のことを考えガッカリする。
「今日は公園で野宿コースだな。」
と言い後ろを振り返る。
「ほべっ!?」
びっくりして後ずさる。
「・・・やっと気づいたね。」
すぐ後ろにボーイッシュな服装をして、あきれた顔をしている女の子がいた。買い物をしたであろうビニール袋をもって。
「2分ぐらい後ろにいたよ。」
数秒女の子を見る。なぜか既視感がある。
「あれ?」
どこかで会ったことがある気がする。気になり凝視する。
サラサラした黒髪、髪型はよく知らないが多分みでぃあむぼぶ?とかいうやつ。
そして見惚れるほど顔立ちが良く、童顔。スタイルもよく見える。
いわゆる容姿端麗。そして樋口という苗字。
ハッとする。
「・・・間違ってたらすいません。もしかしてどこかでお会いしました?」
「えぇ・・・どこかって・・・。覚えてないの?君のクラスメイトだよ。2ヶ月会ってないだけで忘れちゃった?」
点と点が線になる・・・気がした。クラスメイトなんか一々覚えちゃいない。なんでって?喋らないからだ。
だがクラスで1人でいると周りの会話が聞こえるが、そこでよく樋口という名前が男子から出ていた気がする。
聞こえてきた「ここがいいよね!」といっていた特徴とも一致している気がする。
「多分覚えてると思います。」
「多分なんだね。悲しいなぁ。じゃあさ喋りかけたことあるよね?覚えてる?」
「・・・すいません、全く覚えてません。」
喋りかけてくれた人は全て覚えているはずだが心あたりがない。樋口さんだけ覚えてないなんてことはないと思うんだが。
「だよね。無視してきたもんね。」
答えがわかっていたように即答する。
聞く必要ありました?
というか俺は樋口さんを無視していたらしい。多分女の子が自分に喋りかけていると思わなかっただけだろう。
なぜか少し後悔する。
「まぁいいや。とりあえず入ろうよ。色々買ってきたんだよね。」
ビニール袋を強調するように持ち上げる。
そして家の敷地に入っていく樋口さんをみて
「え?」
素っ頓狂な声がでる。
「ん?なに?まだ質問があるの?なら家の中で聞いてよ。座れた方がいいでしょ。」
「いや・・・ここの所有者なんですか?」
「そうだけど。」
「・・・え?」
「・・・え?それがなにか?」
「面白がって話しかけたわけではなくて、家出した俺を家に入れるために話しかけたと?」
樋口さんは不思議そうな顔をして
「そうだけど。」
「あぁ・・・。あぁ?・・・あぁ。あぁ・・・?」
俺は混乱する。
嬉しいような、嫌なような。
微妙な心境だ。
「大丈夫?怖いよ?」
心配の理由が悲しい。
ていうかまさか同年代の家に転がり込むとは思っていなかった。しかもクラスメイトの家に。
ていうか親の許可は得ているのか?俺はこのまま入って大丈夫なのか?
樋口さんは閃いたように
「あぁ!親ならいないから安心して。学校にも言わないから。」
親がいない?仕事とかだろうか。てか俺が聞きたいのは許可の話だ。
「そういう問題ですが違うんですよ。」
「?」
樋口さんはきょとんとする。
・・・まぁいい。ここで立ち止まってても仕方ない。とりあえず入ろう。そうだ。それから考えよう。
「なんでもないです。入りましょう。」
「えぇ?まぁ、うん。」
樋口さんは不満そうに鍵をポケットから取り、ドアの鍵を開ける。
「君。覚悟してね?」
「は、はい。」
なんのことだろうか。
気になりながら俺は一歩を踏み出す。
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