0.9面倒臭いことになりました
俺は今、別荘の下見に来ている。
いや〜、『お・た・の・し・み♪』と書いてあったときから、色々と建物はやばそうだな〜とは思ってた。思ってたぞ?
だが―――――
「いや、これは流石にやばいって!?」
ついさっき設計図を渡された時から、更に不安が増した。
そして、今。
おれは、不安を通り越して呆れている。
「どうでしょうか?この“城壁”は?」
いやいや、もう城っていっちゃってんじゃん。
そう、ご察しの方もいるだろう。
目の前には、進○に出てきそうな、50メートル程の壁があるのだ。
(圧迫感半端ねぇ)
いや、こんなのいらないんだが…
そう思っていると、案内役が手元のスイッチを押した。
すると、大門が開き、奥に屋敷と思われる物が見えてきた。
だが、遠い。
何メートルあるんだよ案件である。
あそこまでどうやって行くんだよ。
まさか徒歩か?
そう思っていると、またまた案内役が他のスイッチを押した。
するとすると、なんと隣に魔獣が現れたではありませんか〜。
って、デカ!?きつねか?
真っ白の毛に隠れる勿忘草色の瞳は、まるで何かを訴えているようだ。
(う〜ん、なーんか、こう、既視感があるんだよな)
まるで、前世の―――――――
『ヴァオォォォォォォォォン!!』
その時、突然きつねが吼えた。
俺が驚いていると、案内役が物知り顔で語りだした。
「この子は白銀神狐です。7年ほど前――――丁度ソメイユ様が生まれた頃ですかね、森で保護されたんですよ。
親とはぐれたみたいなんですが、いくら探してもこの子の親の痕跡されも見つからなくて、仕方がなくね。そして―――――――」
俺は、案内役の話は全く聞かずにきつねを観察していた。
(コイツ、クロノアに似てる。)
確信はないが、なんとなくそう思うのだ。
『坊ちゃま、お茶もまともに持てないんですか?』
アイツは俺の執事だった。
気持ち悪い奴だったけど、根は良い奴で――――――
(でも、あいつの正体が龍だったなんてな〜)
そう考えると、目の前にいる狐と同一と考えるのはおかしい。
アイツは龍なんだから。
だが、それでも、この狐からアイツの気配がする。
なぜかと悩んでいると、城壁の中(別荘の敷地内)から声がした。
「ねぇ、ここ!わたし、ここがいい!!」
と、なん〜か聞いたことのある声が聞こえた。
(うーわ、まさか。)
「クークラ様、流石はお目が高い。此方は確か、王女殿下の別荘地のはずですが、ただの少女にこれほどの敷地は不必要。
教会で引き取ってあげましょう。」
「そうなの?ま、あの地味女にこーんな美しい宮殿、必要ないわ!
しょうがないから、私が引き取ってあげるとしましょう」
(やっぱり……、面倒なことになりそうだ―――――)
そう思っていたとき、狐の遠吠えが響いた。
『アオォォォォォォォォォォォォンッ!!!』
狐は、クークラへ顔を向け、明らかに威嚇している。
「――――――ヒッ」「い、いやぁぁぁ!?」
クークラと男は、狐に怯えて、それぞれ悲鳴を上げていた。
見ているこっちが哀れになるほどに、クークラらは震えていたのだ。
だが、流石は聖女御一行と言うところだろう。すぐに立ち上がり、俺を指さして好き放題言い始めたのである。
「ちょっと!この狐、あんたのでしょ?この狐のせいで、ビックリしちゃったじゃない。
服も汚れちゃったし、どうしてくれんのよ!?
第一、こんな立派な宮殿…………国王にねだったんでしょ?ほんっと、こんなにも地味なのに、王女っていいわね〜。」
「皇子という立場を利用して、こんな領地を乱すような建物を………?ああ、王がお可哀想です。」
(……ウザ)
流石の俺もカチンと来たので、少し言い返してみることにした。
「さっきから黙って聞いてりゃ、好き放題言いやがって。そもそも、お前たち不法侵入だぞ?ここは父さんの私有地だ。国ではなく、王の、な。というか、俺のこと地味って―――――」
俺の瞳はヴィオレで、ロングの髪は白銀に輝いている。タレ目で、口角も上がっている。
(結構美人だと思うんだけどな?)
俺が黙ったことをいいことに、またクークラが口を出そうとする。
だが、その時―――――
『アオォォォォォォォォォォォォンッ!!!』
また、狐が吼えた――――――




