0.4ハラハラ入学式(2)
会場がパニックになる中、一人冷静に状況を分析する。
(アイツ―――キャトル・オウガが大体Bレベだから、ここの近衛騎士20人で勝てるくらいか?
ここには騎士が30人くらいいる。余裕で勝てるはずだ。だが―――――)
そこで、キャトル・オウガの後ろで隠れている、いかにも弱そうな鼠――――牛之背ニ控モノが控えていた。
(たしか、こいつはAレベだった気がするんだが…………)
駆けつけた騎士の一人が、ムース・ラットゥスに気づき、周りに知らせ始めた。
(観察力はすごいと思うが、迂闊な行為だな。)
騎士達は、先にムース・ラットゥスを倒そうと、キャトル・オウガの後ろに回る。
だが、甘い。キャトル・オウガの手足に気を取られ過ぎだ。十分に警戒しているつもりなのだろうが、魔物は魔法もしくは魔術から出来ているのだ。魔法が使えぬ訳がない。
『火炎凝縮玉』
キャトル・オウガの口が微かに開閉する。
すると、会場の天井に十数個の火炎凝縮玉が出現し、地に降り注ぐ。
パニックに陥った会場が、一瞬にして悲鳴に包まれた。
(しゃーねーなぁ)
仕方がないというのは嘘で、実は満更でもないのだが………。
俺はつっきーを鞘から抜き、構える。
舞台の高さから、ここから跳べばキャトル・オウガの心臓までは届くだろう。だが、ムース・ラットゥスは―――――
(分析は苦手なんだよぉ)
文系は苦手な俺であった。
「しゃ、行くぞ、つっきー!!」
途端、おれは演台を踏み抜き、その勢いで大きく跳躍した。
「月光!!」
空中でつっきーから月光を放つ。月光を放つために、微かに天井から漏れ出る日光を反射している。
これは、ただの目眩まし―――――
「竜水よ、我英雄神グラディウスの願い、聞き届けよ。雫之竜水!!」
キャトル・オウガの足元に、ポッカリと大穴が空く。その中は、渦巻く湖となっており、何人たりとも抜け出せない、蟻地獄となっている。|ムース・ラットゥスも、キャトル・オウガに巻き込まれ、一網打尽となっていた。
俺は華麗に大穴の前に着地すると、見せしめ及び止めのため、極大魔法を詠唱する―――――
「我、英雄神グラディウスが望む。我が神器夜之月ノ剣よ、我が前に立ちはだかるものを、亡きものとせよ!英雄神ノ天罰!!!」
途端、大地が揺れ動き、キャトル・オウガとムース・ラットゥスは大穴とともに消え去っていた。
周りへの被害は皆無。強いて言えば、俺が出る前に立ち向かった、勇気ある騎士達が、キャトル・オウガのピュール・バルによって、軽い火傷を負ったくらいだった。
「「「「「「おぉ、オォォォォォォ!!」」」」」」
途端、パニックに陥っていた皆から歓声が上がり、俺が注目されていたことに気づく。
(やっべ。英雄神グラディウスって詠唱しちまった)
もしかしたらバレたかもしれないが、そのときは白を切ればいいと、後回しにする。
周りへの被害は皆無。強いて言えば、俺が出る前に立ち向かった、勇気ある騎士達が、キャトル・オウガのピュール・バルによって、軽い火傷を負ったくらいだった。
因みに、後日俺のスピーチは再開され、慌てて考えた台本を読みあげたのだが、盛大に噛んでしまい、大恥を書くこととなったのだった。




