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前世英雄は今世でも無双する  作者: あまみ すすき
学園編〜
10/11

10.セイアッド

 「―――――キャッ!?」「うあぁぁぁぁぁぁ!?」


 狐がまた吼えた。

 だが、さっきまでとは決定的に違う点があった。

 つっきーが反応したのだ。


 「どうしたんだ?つっきー。」


 つっきーに問いかける。

 この狐の吼えに、つっきーを反応される程の力があったのだろうか。


 それに、クークラ(とその従者)の反応もおかしい。流石に過大だと思った。


 いやいや、だって5メートルは飛ばないだろ。

 結構遠いぞ?


 つまり、狐が何か力を込めたということなのだろう。

 このセイアッド・ソードを動かすほどの。


 因みに、俺は何も感じなかった。


 〘王家の新星へ、セイアッド・ソードより人化の申請が――――――〙


 急に響いた、聞き覚えのかるコンピューターのような声の驚く俺。

 この声は、セイアッド・ソードとの契約のときにも響いた声だ。


 だが、それよりも――――――


 「美しい―――――――」


 無意識に言葉が漏れる。

 

 


❲―――――――グラディウス様?❳


 絶句した。

 コイツは、俺をグラディウスと言ったのだ。

 いくらセイアッド・ソードとはいえ――――――――いや、コイツは俺の前世で追い求めていた存在。他にも同じような者はいたが、俺にだけ突飛した点がある。

 俺は、『英雄』だ。

 もし、セイアッド・ソードにも意思があり、知恵があったのなら、俺のことを知っていてもおかしくはない。


 「ちょ、ちょっとアンタ、王女のこと、グラディウス様って呼んだでしょ!

こーんなのより、グラディウス様はすっごいの。

コイツと一緒にしないでくれる?」


 ❲邪魔❳


 最後まで言わせてもらえただけでも幸運だろう。

 有無を言わさず、セイアッドはクークラを拒絕した。

 従者は、クークラが勇敢に立っているのを、ただただ見つめていた。

 

 セイアッド・ソードは、この世界において、たった3つの神器の一つであり、『夜』の剣とも呼ばれている。

 俺は、その響きに憧れてセイアッド・ソードを求めたのだ。

 黄金に縁取られたその刀身は、夜の明星を映している。

 では、彼女はどうだろう?

 夜の月を連想されるワンピースに、星のようなラメが散りばめられている漆黒の長髪。その中から生える角は、セイアッド・ソードの刀身をイメージさせる。

 長く不揃いな前髪から覗かせる純粋な白の瞳は、万物を見通すかのような透明感を放っている。

 たしかに、イメージ的には似ていなくもない。

 だが、こんな話は聞いたことがない。

 擬人化?いや、幻術か?

 俺は思考を加速させる。

 

 その時―――――


 『久しぶりだな。セイアッド。』


 と、狐がセイアッドに話しかけたのだ。


 (え!?)


 コイツら、知り合いなのか!?

 驚いた。

 いや、普通に接点なんかあんのか?

 気になる点しかないが、セイアッドが反応を見せたので、事の成り行きを見守ることにした。

 

 ❲ああ、クロノア。久しぶり。お前、狐に転生したのか?哀れなことよ。❳


 (あれ、思ってたより親しげ!?)


 つーか、クロノア?

 そういえば、コイツクロノアにそっくりだったっけ。

 んで、仮にコイツがクロノアとして、久しぶりってことは、もしかして前世からの知り合いか!?

 あれ、初耳だぞ!?


 戸惑う俺に気がついたのか、セイアッドが声をかけてきた。


 ❲あ、あれ?グラディウス様、どうにかなさいましたか?❳


 首を傾げ、上目遣いで俺を見るセイアッド。

 少し戸惑っているのがまた可愛らしい。

 少し見惚れそうになるが、そっぽを向いて隠す。

 それをまた不思議がったのか、セイアッドは此方に接近する。

 その差約10cm。

 男心の残る俺の心をくすぐるには十分―――――。

 

 「い、いやなんでもない……ないから!?」


 クロノア(?)が微笑ましそうに様子をうかがっている。


 (恨むぞ〜クロノアっぽいやつ)

 

 俺は予想外の招かれざる危機に狼狽するのであった。

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