わらび餅は踊り食いが一番旨いby餡蜜
香奈ちゃんの年齢、いろいろ考えて14歳にしました。
読んでたゾンビ小説が面白く感じない展開になってきたので投稿です。
私は加藤 香奈。一之瀬中学校に通う二年生だ。元だけど。
その日も友達と「中二で進路とか考える必要なくね~」などと笑いながら過ごしていた。明日も、明後日も、そのまた更に次の日もずっと、ずうっとそんな日々が続くと思っていた。
突然だった。夜中に人が騒ぐ声がした。起きてみれば火事が起きていた。喧騒に眉をひそめながら、自室であるマンションの4階から外を見てみた。みんな火事なんか気にせずに走っていた。その後ろを、よく分かんない巨大でムキムキな人間?ハ◯クみたいなのが追いかけていた。
その巨体に噛みつかれた人は、もがき苦しんだあと、体がベキベキと膨れ上がっていき、同じく巨体になって無事な人を襲い始めていた。
そういえば火事が起きたのに消防車も救急車も来ていない。なんで?あの巨体が原因なのかな?
私は急いでインターネットで状況を調べてみた。ズバリ、その通りだった。なんでも、日本全国どころか、世界中であの巨体が暴れ回っているらしい。
まるでゾンビ映画みたいだと思った。その時はまだそれが現実だという実感がなかった。あるわけない。昨日まで平穏な日々を過ごしていたのに、急にこんなことになって、理解できる人のほうが少数だ。
そして、私がこれを現実だと実感できたのは、家族がその巨体になっていたからだった。
私には、兄が独り暮らしの17歳の兄と、11歳の妹がいる。
妹が不安になってないか心配になった私は、妹の部屋へ様子を見に行った。
部屋の中からは「あ"ー、あ"ー」と低いうめき声が聞こえていた。
恐る恐るそっと扉を開けてみると、その中には二体の巨体がいた。ベッドの上にはビリビリに破れた小さな妹の服が床に散らばり、ほぼ裸であろう巨体がいた。そのとなりには、ピッチピチになった、母の寝巻きを着た巨体が居座っていた。
恐らく母が起きて妹の様子を見に来ていただとか、睡眠が深い父はまだ寝室に取り残されているだとか。そんなことは考えている暇はなかった。怖かった。単純に。だから、
私は逃げ出した。大きな物音をたてたからだろうか、それとも叫んでいたからだろうか、二体の巨体たちは私を追いかけて来た。
私は必死に走った。他の事なんてどうでも良かった。ただ、生き残りたかった。
しばらく走り、近くの工事現場の物陰にうずくまってから私は我に返った。
そうだ。私は、父をおいて逃げたのだと。自分の家族から逃げたのだと。そこで気付いたのだ。
泣いた。大声は上げなかった。巨体に襲われるから。ただ、ただ体を震わせてこの先の事や、もう戻らないであろう平穏な日々を思ってずっと泣いたていた。
気が付いたら朝になっていた。私は昨日のパジャマのまま、体操座りで工事現場の中にいた。
嗚呼、夢じゃなかったんだ。
私の心の中は悲しみで埋めつくされた。また泣いた。声を押し殺しながら。
これからどうしようか。そんなことを考えたのはくぅっとお腹がなったからだ。
私は人生で始めて盗みを働いた。近所のコンビニだった。中はまだ電気が残っているのだろう。明るかった。
そこにこそこそと忍び込んで、たくさんの食料を抱えて逃げた。罪悪感でいっぱいだった。
その日はそのままぼうっとして過ごした。うかつに外に出ると巨体に襲われるし、この時は何も考えたくなかったから。
寝るときにはコンビニから持ってきたタオルを使った。コンビニにタオルがあるなんて今まで知りもしなかった。気にも止めなかった。
できればこうなる前に知りたかった。友達に自慢して、それでバカみたいに笑いあって。そんな日常が恋しかった。
起きたときは朝になっていた。私はまたコンビニに盗みに行った。
途中、一番危険なのが商店会だった。たくさんの巨体がいるから。ばれないように迂回したりしながら進んでいく。
でも、途中のわらび餅専門店の前で立ち止まった。空から悲鳴を上げながら何かが降って来たから。
痛い、痛いと呟いていた何かは、黒いコートを着た男の人だった。なんでも、友人に呼ばれたから。来たそうだ。
男の人の名前はアルカ シトラシス。これが、私と彼の出会いだった。
一話の二倍ある二話目。どうしてこうなった。
これ、恋愛か?と自分で疑問に思ったのでジャンル変更です。