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ある青年とある友人のお話

ショートです。よく聞くような話かもしれません。

ちょっとコーヒーブレイクに。

「ありがとうございます」


 今日もコンビニでペットボトル飲料をレジで会計をしてもらい店を出る。

 その際に、青年はついついその店の店員へ『ありがとう』と感謝の言葉が口をついて出る。


「そういえばさぁー……。コンビニ出る時に、必ず『ありがとう』っていうじゃん。あれってどして?」


 友人といつも通りにコンビニへ行って会計をし、店を出たところでそんな疑問を投げかけられた。

 男は意外なことを言われた様な表情で友人を見る。青年にとって、それは自然な事であり、至極当然なことでもあるからだ。

 青年のきょとんとした表情を見て、友人は続ける。


「だってさ……。お金を払ってるのはこっちだぜ。ありがとうを言われるのは当然じゃん。でも、なんでお金を払った方が言うわけ?」


 それを頷いて聞きながら、友人の意見は真っ当だと思う。一昔前までは「お客様は神様です」という風潮がずっと続いていたし、自分の給料を間接的に払ってもらっている立場と考えれば、その考えは間違いではない。

 しかし、もう時代は変わったのではないか。

 現在は、お客様は神様なのではなく、対等な関係とみるべきという風に変化してきている。いわゆる「Win-Win」の関係というものだ。

 青年にとって、自力で行わないものには、すべて作業工賃がかかると考えている所がある事も起因している。


「会計してくれてるし、場合によっては袋に詰めてもくれるだろ?」


 サラリと青年は言ってのける。


「自分でしてないことを、代わりにしてくれてるんだよ。しかもサービスで。これを感謝しないなんて、逆におかしくない?」


 続けた青年の言葉に、友人はなるほどと思った。


(確かに、海外だとチップがかかるよな……。日本だから当たり前になってるけど)


「だからこそ、ひと言『ありがとう』って感謝を伝えるんだよ。たまに変な顔もされるけど、たぶん言われて嫌な気持ちにはならないだろうし、そのひと言でお互い気持ちよく買い物が出来たら戦争にはならないんじゃない?」


 友人はくすりと笑ってしまった。

 最後の言葉は幾分かずれてると思う。さすがに戦争は飛躍しすぎだ。


「戦争はともかく、俺も今度言ってみようかな……」


 ニヤニヤしながら友人は言う。

 その表情に、青年はややムッとしている。


「絶対だからな! 今度、その時の店員さんの反応を教えてくれよ」


 語気をやや強くして青年は言った。



 数日後、友人はやや興奮気味に現れ、


「なんか……気持ちよかった」


 紅潮した顔で照れながら言った。


「は? ちょっとキモいんだけど」


 青年はドン引きした表情で後ずさりしている。


「いやいや、前にコンビニで『ありがとう』って言ってみるっていったじゃん。それの事だよ!!」


 心底慌てた様子の友人は全力で訂正した。


「あ、なんだ。で、どうだった?」


 ポンと手を打ち青年は思い出しながら問う。


「言おうって思った時は恥ずかしくて、どうしようか迷ってたんだけど、店員のお姉さんがレジで袋に詰めてくれてる姿を見て、『あぁ、代わりにしてくれてるんだよなぁ』って思ったら、笑顔で買ったものを渡してくれたときに自然と『ありがとう』って言えたわ」


 照れながら、でも嬉しそうに友人は経験を語る。


「それ、可愛いお姉さんだったからじゃないの?」

「ちげーよ! ……いや可愛かったけど。じゃなくて、どんな店員さんでもこれからは『ありがとう』って言えるわ」


 青年に軽くいじられながらも、まんざらでもない表情でいる友人。

 二人はこれからも、お店で買い物をした時に『ありがとう』が言える好青年になるに違いない。



『ありがとう』は魔法の言葉。

 人に敬意を表し、人に感謝を伝える。

 言った方も、言われた方も気持ちが軽くなる言葉なのかもしれない。

『ありがとう』好きな言葉です。

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