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文化祭当日3…後夜祭のハーレム。

 まさか、土佐犬になってこんないいことが待っているとは思わなかった。まぁレイさんなら俺が頼めばいつでもしてくれるような気もするが…


「あ…………」


 お?突然、レイ王子のセリフが止まった。セリフを忘れたのか?

 着ぐるみの中から、俺はレイさんの顔を見た。すると、案の定セリフを忘れているようだった。

 でも問題ない。レイさんは頑張り屋だけど、ドジなんだ。こんなことも起こりうるのではないかと思い、俺は先ほどレイさんのセリフをある程度覚えてきた。

 確かこの場面で言うセリフは…「洗濯物くらい、少し手伝うか…」だ。

 俺はずっと撫でられ続けている頭を急に起こし、レイさんの耳元で


「洗濯物くらい…!」


 と呟いた。すると彼女は


「…あ! 洗濯物くらい、少し手伝うか…」


 と、なんとかセリフを言うことが出来た。よし。セーフだ。多分…

 そして劇は、その後もなんとかスムーズに進み無事終了した。


 俺は先程の小さなスペースで、土佐犬を脱いだ。


「ありがとう。またいつか会おうな。」


 俺が一人で土佐犬との別れを惜しんでいると、レイさんがやってきた。まだ王様の格好のままだった。


「霜太君、今日はホントにありがとね!」

「ああ、うん。」

「いや〜それにしても霜太君、なんでウチのセリフ覚えてたの?」

「レイさん、ドジだから忘れるかなと思って。」

「ドジって言うなよ〜! 本当助かったけども!」


 こんなふうに元気そうに話すレイさん。だが、どこか悔しそうにも感じた。

 やはり自分から主役をやると言っておいて、少しだけだがセリフを忘れてしまったことを気にしているのだろうか。

 でも、そんなこと気にする必要ないんじゃないか? クラスのために自分から立候補しただけで、俺は立派だと思う。尊敬する。

 それに、この劇はあれじゃないか。リアル志向じゃないか。


「まぁいんじゃないか? 役者がセリフをつい忘れるって言うのも、ある意味()()()だから。」

「ちょっと霜太君! それ慰めてるの〜!?」


 彼女はそう言いながら無邪気にポカポカと俺を叩いてきた。

 レイ王様に叩かれるのも、なかなか悪いものではなかった。 

 

 こうして、俺にとって色々あった本日の文化祭は後味良く幕を閉じた。




***




 文化祭二日目、午前中は昨日と同じくお化け屋敷の当番を務めた。

 最後の方は、いくら客に微妙な反応をされてもなんのダメージも受けなくなっていた。

 そして現在俺は、ミナとレイさんと今日も出し物を見ながら周っている。

 

「ねぇ二人とも!今日はあそこで昼食べない!?」


 ミナがある場所を指を指した。それは、メイド喫茶だった。正直俺は嫌だった。 

 しかしレイさんは、


「あー行く行く!」

 

 と乗り気だ。

 何故俺が嫌か。それは簡単だ。メイド喫茶なんてものはたいてい男が客だ。

 そこに女子二人を連れた俺が入ったらどうなるか? もはや説明するまでもない。


「もうちょっと、他も見てみないか…?」


 するとまずミナ。


「え〜、昨日も今日ももう何回も周ったじゃ〜ん!」


 そしてレイさん。


「なんか文化祭らしくていいじゃんよ!!」

「……はい。」


 俺は二人の強力タッグに圧され、しぶしぶメイド喫茶に向かった。

 俺、意外と弱いな…。

  

「お帰りなさいませ、ご主人様〜!」

 

 メイドさんがやって来た。にこにこしていた彼女は俺たちを見た瞬間、表情が変わった。

 どう変わったかと言えば、笑顔だったのがさらに笑顔になった。

 明らかに作り笑いだ。全てを察している顔だ。怖い。

 その後席へ誘導してもらったり、水が出されて来たりしたけれども、ほんとマジで早く出たい。

 この空間から出たい。365度全方向から視線を感じる…

 しかし、ミナとレイさんは全く気にしていないようで…

 レイさんが近くにいたメイドさんに声をかけた。


「オムライス三つお願いしまーす。」

「はーい。」

 

 かなりの速さでオムライスがやって来た。お? ケチャップで好きな文字を書いてくれる? そこまでしっかりメイド喫茶やってるんだこのクラス…

 するとミナとレイさんは声をそろえて言った。


「「『霜太君大好き』でお願いします!」」


 やめてくれー! そんな二人そろえて大きな声で言わないで! 普通に言ったら伝わるよ。ほんとに。

 あー、なんかさっきよりも周囲の視線が痛い…

 それにメイドさんがめっちゃ俺を軽蔑するような目で見て来ている…

 そして二人のオムライスに「霜太君大好き」と語尾にハートマークを書いてから、メイドさんは俺のところにやってきて、気怠(けだる)そうに


「はい、あんたはこれでいいでしょっ」


 と言いながら、「ハーレム最高!!」と言う文字を書いてさっさと去って行った。

 は! もしかして俺はこのオムライスを食べると、「ハーレム最高!!」を自分で認めることになってしまうのではないか!? なんか進んで食べようとは思えんな…

 というか、どっちかって言うと女子2人のやつを俺が食うのが本当は正しいんじゃないか?

 しかし彼女らは何も気にせずバクバク食べている。 しょうがない。俺も気にせず食うか…

 俺が「ハーレム最高!!オムライス」を一口食べた瞬間、奥の方からメイドさんたちの笑い声が聞こえてきた。


「あの人マジで食べたよ!」

「え、ちょーウケるんだけどっ」


 俺は心の底から思った。

 うるせぇ! 黙れ!!

 

***


 本当にメイド喫茶では散々な目にあった。散々な目で見られた…

 でも、そんなことももうとっくに終わり、現在午後七時。今年の文化祭は二時間ほど前に終了した。今学校に残っているのは後夜祭に参加している者だけだ。

 後夜祭では花火をやるので一応残っているのだが、俺はガヤガヤした外で見るのが嫌なのでこうして静かに、お化け屋敷の残骸が残る暗い教室の窓から一人で見ている。

 ミナとレイさんは後夜祭が始まると同時に、何かの準備があるとか言ってどこかへ行ってしまった。

 それにしてもいいものだ。人混みの中で花火を見るより、ここから見ていた方が落ち着くし、なんか優越感のようなものを感じる。あ、昨日昼に四階に上がったときも同じ感じがした気がする…


「霜太!!」

「ミナ!? …ってその格好!」


 突然、後ろから急にミナが現れて俺は床に押し倒された。見上げるとミナは、あの吸血鬼のコスプレをしていた。


「霜太…私に、襲われたいんでしょ?」

「…え? …」

 

 吸血鬼ミナが、俺の体の上にまたがって座ってきた。彼女の体温がモロに伝わってくる。やばい。心臓がバクバク言ってる。

 ん? ミナが自分で制服の胸元を緩くしだした。


「ちょっ、ミナどうし…」

「不思議ね、霜太。暗い夜の教室って、何だかおかしくなってきちゃう。」


 そう言ってミナは俺に顔を近づけてきた。花火の光で、ミナの柔らかそうでデカいおっぱいがくっきりと見えた。

 

「ここなら、いくらでも霜太を襲ってあげられるよっ。」


 ミナが顔をさらに近づけてくる。え? これ、どうなっちゃうんだ…? キス、しちゃうのか…

 そして、お互いの唇が触れる直前…


「大丈夫かい!? 霜太君!」


 ガラララーと言う音がした。レイさんが教室に入ってきた。

 そうだ!! 俺は何を…! やっと我に帰った。でもレイさん、なんで王様の格好してるんだ…?

 

「レイさん! これはその…」

「霜太君、ウチが叩いてあげに来たよ…」

「…え?」


 叩く…? ああ、そう言えば昨日、劇を手伝った後に俺そんなことを…

 っていや、言ってない! それは心で思っただけだ!!

 まさかこの二人、最初から組んで、た? あ! 後夜祭が始まる時に言ってた「準備」って…

 

「好きなだけ襲ってあげるよ、霜太…」

「さぁ、どこを叩いて欲しい? 霜太君…」

「え、ちょ! 二人とも…」


 

 その後どうなったか、いつか話せる日が来るといいなぁ。 







 


 




 

 



 





 

 

 

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