表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/24

エピローグ 過ぎ去った約束

「ラクールよ! 

今回の戦、成功したら宴を開こうぞ!!」


「勝つ度にやっているではないか、エルガル」


 とある館の一室で、今より少しだけ若い二人の吸血鬼が向かいあっていた。


「分かっておらんな! 次の戦いに勝利できればここら一帯は制圧したも同然。

吸血鬼の世に一歩近づけるではないか!!」


「ふん、吸血鬼の世など……。

まだバルファス大陸も統一出来ていないのに、気の遠くなる話だな?」


「ぐぬぅ、そ、それは我ら新進気鋭の二人組にかかれば容易なこと!!

このちっぽけな大陸など、我らの力ですぐに制圧してしまうのだ! はっはっはっ!」


 酒が回っているのか、二人の頬には赤みが差している。

 そして片方は既に出来上がっているようだ。


「また中身の無い事を……」


「おお、中身の無い話と言えば、セレンとはどうなっているのだ。

もう婚約は済ませているのだろう?」


 婚約の話をされてラクールが一瞬固まるが、エルガルは気がつかない。


「その話はしないといつも言っているはずだ」


「堅苦しいやつめ!

まあいい、ならば我の妻たちの話を聞け!

まず最初の出会いは、夏の涼しい夜のことだった、人虎の………………


ーー


ーー



……と、我が悪漢から救い出し、見事嫁にすることに成功したのだ!」


「長い」


 ラクールがぴしゃりと言いきる。

 長々と数十分も聞かされては、その反応も致し方無いだろう。


「むぅ、そうか?」


「ああ。その後に一人息子が出来て、大層可愛くて仕方が無いというところまで覚えてしまったぞ」


「そうかそうか、何度も話した甲斐があったな!」


「いや、迷惑だ」


「そう言うな! 吸血鬼は子が出来にくいのだ、自慢してしまうのも仕方が無いことであろう!!」


「……まあ、よく数年で子が出来たとは思うがな」


 吸血鬼は種族的に長命であり、その分子供が出来づらい。


 その基準で言えば、エルガルの第一子は中々の早さで生まれたと言えるだろう。


「うむ、我は出産祝いに『エストレーモ』を所望するぞ!」


「……そんな稀少な酒、手に入る訳が無いだろう」


 エストレーモはそれ一つで城を購入出来るような値段のする白ワインだ。

 あまりに稀少なので、金銭だけでは買うことすら出来ない。


「むぅ、それもそうか……。だがいつか飲んでみたいものだ」


「ああ、大陸を統一したら飲めるようになるさ。

それまで絶対に生き残るぞ」


「うむ! 任せておけ!」










 場所は変わり、戦の後処理に追われる兵士たちが(せわ)しなく動いている。


 その近くに腰を降ろした疲労困憊の二人は、昇り始めた朝日を眺めていた。


「俺達の勝ちか」


「うむ、これで一区切り着いたな! 帰って妻たちに報告したい!」


「ああ、俺もセレンと温泉に行きたいところだ」


 彼らは今回の戦も勝利を納め、これからの事について話し合っていた。


「お主は相変わらず温泉が好きだな!? それでも吸血鬼か?」


「ふん、お前は欲望に関しては忠実なまでに吸血鬼だな。少しは落ち着いたらどうだ」


「つ、妻たちと過ごしたいのはどの種族も持つ当然の欲求だろう! それよりもだ!

今回で一度争いも落ち着いたのだから、ここらで一つ、約束を交わそうではないか!」


「約束?」


「ああ! 我ら吸血鬼が世界の頂点を目指すのだから、そのための決意表明が必要だ! さあ、やるぞ!」


「そんなこと、いつもお前が言っているでは無いか……。

まあ良い、それなら平和も加えろ。

世界を統一した後に争いが起こっては敵わんからな」


「なるほど! ではいくぞ!」


「ああ」


「我ら吸血鬼が世界の頂点となり!」


「平和な世界を作ることを」


「「ここに誓おう!」」


 そうして硬く手を握り合う。


「それではこれからも頼むぞ! ラクール!」


「ああ」


「ふふっ、お二人とも仲がよろしいですね」


 二人が決意を新たにしていると、後ろから声がかかる。


「セレンか」


「ふむ、セレンも来たことであるし、我らも事後処理に行くとするか!」 


「そうだな」


「はい、お願いしますね」


 そうして三人は、忙しなく動く兵達の元へ向かっていった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

第一章の本編はこれにて終了です。


その後幕間を幾つか挟み、第二章に入りたいと思います。


もし、ここまでのお話で気に入って頂けましたら、評価とブックマークをして頂けると大変励みになります。


そして、ブックマークして下さった方、読み進めて下さった方、本当にありがとうございました。


これからも吸血鬼の皇帝をよろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 果たされなかった友との約束……なんて切ないんだ コメディ調で進むと勘違いしてたので思わずウルッと これは確かに別れだ……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ