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吸血鬼は遅れてやってくる

~メールド領北の森~



 吸血鬼の一団が見守るなか、サヤカとエルガルの戦闘は続いていた。


「……クソが!」


「どうしました、エルガルさん?

さっきから防いでばかりいるじゃないですか」


 先程とは打って変わり、エルガルの方が追い込まれていた。


「主君のご友人だと言うから期待していたのですが、がっかりですよ。本当に吸血鬼のまとめ役なんですか?」


 自らの主を馬鹿にされたことがよほど腹に据えかねていたのか、サヤカが意趣返しのような言葉をエルガルに叩きつける。


「何だと……!稀少な種族だからと、この我をコケにしおって!

貴様はどうあってもここで惨たらしく殺してやる!

おい、同胞たちよ!

観戦は終わりだ。一斉に奴を仕留めにかかるぞ!」


 その言葉に吸血鬼たちが武器を持ち上げながら動きだす。


「はぁ……吸血鬼の誇りはどうしたんですか。

そこまでして得たい物って、一体何なんです?」


「…………。

貴様ごときに言う必要はない、行け!」


 吸血鬼が四方からサヤカへ襲い掛かる。


 ある者は斧で上段から、ある者は剣で横薙ぎに、さまざまな武器が彩華へと殺到する。


 しかし彩華は、その(ことごと)くを超常の腕力と速度で回避し、反撃を繰り出していく。


「え、エルガル様……!この女、強すぎます!」


「吸血鬼が束になってるっつーのに、どういう事だよ……」


 歴戦の吸血鬼たちが、なす術もなく次々と倒され数が減っていく様は、彼らからしてみれば悪夢のようなものだろう。


 そんな中、女吸血鬼が死角から放った刀の一太刀が、ようやく彩華を捉える。


「もらったぁぁぁぁ!!


 もはや回避が不可能なまでに迫ったその刀を、しかし彩華は掌底で迎え撃つ。


「甘いですよ」


 龍人が放った凄絶な掌底は、刀を容易くへし折り、そのままの勢いで女吸血鬼を視界の外へ吹き飛ばした。


「馬鹿な! 精強な吸血鬼たちが赤子の手を捻るように……。一体どうなっている!

そこまでの差があるというのか!!」


「そうですね、私達の種族が正面から負けたという話は、あまり聞いたことがありません。

私が知っているのは、とある吸血鬼の青年に敗北した女龍人くらいでしょうか?」


 彩華が自嘲混じりに笑う。


「ラクールめ、こんな隠し球を用意していたとは……本当に抜け目の無い奴だ!」


 彩華の次元の違う強さを目の当たりにし、エルガルが唸る。


 しかしその顔は、未だ敗北を認めた者の表情ではなかった。


「認めよう、我らが接近戦で貴様に勝つことは

不可能だとな。……だが、これならどうだ?」


 言い終わると同時に、茂みの奥から杖を持った吸血鬼の別動隊が現れる。


「知っているぞ?

龍人は確かにその肉体能力で数々の伝説を残しているが、つい最近発見した文献の中に記述があった! 

貴様らが生まれつき魔法の才に乏しいという記述がな!!」


「!?

そんな文献があるとは聞いたこともありませんが……その通りですよ」


 彩華が苦虫を噛み潰したような表情で答える。


「やはりそうか!

このタイミングで龍人に出くわすとは、運に見方されたのは我だったようだな!」


「……」


「ククッ悔しかろう? 時代遅れの龍人よ。

今の時代は魔法が全てだ。

いかに頑丈な身体を持てど、我らの魔法を一斉に受けて無事ではいられまい。

今の内に言い残した事があれば聞いてやろう」


「そうですね」


 言いながら、彩華は頭の後ろへ手を伸ばす。


「主君は私を信じてくれています。だから私も、主君を信じます!」


 後ろ髪からスルリと紙留めを引き抜く。

 そしてそれを顔の前に持ってくると、思いきり引っ張った。


"ガァァァァ!"


 紙留めが発した大音量に、辺りの吸血鬼たちが一瞬怯む。


「……なんだそれは?」


「大切なお守りですよ」


「この期に及んでまだふざけておるのか?

まあよい、少々時間を掛けすぎた。これで終わりにするとしよう…………やれ!!」


 その言葉を合図に、吸血鬼たちが魔法を発動させる。


 四方八方から放たれた魔法はそのまま彩華の方へ飛んでいき、最初に放たれた火球が大爆発を起こした。


 それに続いて、次々と魔法が煙の中に吸い込まれていく。


「クハハッ悔い改めるのは貴様だったようだな! サヤカリュウザキ! 我に楯突いた罰だ。

あの世で後悔しろ!! ハハハハ」


 魔法の威力に、エルガルが勝利を確信する。


 しかし次の瞬間、すべての魔法が突然途切れた。


「おいお前たち、どうしたのだ?最後まで油断するでない!」


「い、いえエルガル様、魔法が発動出来ないのです」


「何!?」


 試しにエルガルが炎を出そうとするが、槍先からは何も出なかった。


(馬鹿な!? このような現象起こり得るはずがない…! しかし、何処かで見覚えがあるぞ……。

まさか!?)


 その直後、一陣の風が戦場を吹き抜けた。


 全ての煙を吹き飛ばしたその風は、広間の中心をあらわにする。


 そしてそこに居たのは……。


「ふむ少々やり過ぎたようだな、エルガル。

ここから先は、俺が相手になろう」


「ラクール……!!」


 彩華を抱きかかえた、ラクールだった。

お読みいただき、ありがとうございます。

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